過払い金の計算ってどうやるのか気になりますよね。「弁護士費用は高いからできれば自分でやりたい」という人もいるでしょう。
結論から言うと、自分で過払い金の計算するのはお勧めしません。この記事では、過払い金の計算方法を説明しながら、自分で過払い金の計算をする危険性について解説しています。
具体的な数字を出して計算方法を解説していますし、計算の具体的な手順、計算する上で気を付けること等をまとめています。過払い金で悩んでいる人は、ぜひ読んでみてくださいね。
(トップ画像出典:https://pixabay.com/ja/photos/%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%A3%AB-%E4%BC%9A%E8%A8%88-%E9%A1%A7%E5%95%8F-%E7%AE%97%E8%A1%93%E6%BC%94%E7%AE%97-1238598/#content)
自分は対象者かどうか確認しよう!過払い金が生まれる仕組み
過払い金は、利息制限法によって定められている利息率15~20%よりも、高い利息率(いわゆるグレーゾーン金利)で借り入れをしていると発生します。
以前は利息制限法と同じように出資法という法律で、より高い利息率が定められていました。出資法には罰則があったのですが、利息制限法には罰則がなかったため、高い利息率での貸し付けが横行していました。
2010年に2つの利息率が統一されたので、現在は借り入れを行っても過払い金は発生しません。利息率が統一された2010年6月18日以前に借り入れをした人は過払い金が発生している可能が高いです。
また、2010年6月18日以前に借り入れをしていて、完済している場合でも、完済から10年以内であれば過払い金の返還請求をすることができますよ。
借入時期が2010年以前でも過払い金がないケース
前章では、「2010年6月18日以前に借り入れをした人が過払い金の対象者」だと紹介しましたが、例外もあります。ここでは、その例外3つについて解説します。
銀行から借り入れしている
銀行から借り入れをしている場合は、過払い金がある可能性が低いです。と言うのも、銀行は昔から利息制限法によって定められている利息率を守っているからです。
そのため、たとえ2010年6月18日以前に借り入れをしていても、過払い金が発生しません。
適正業者から借り入れしている
消費者金融やクレジットカード会社によっては、昔から利息制限法によって定められている利息率を守ってきた適正業者もあります。
適正業者で借り入れをしている場合は、2010年6月18日以前に借り入れしていても、過払い金は発生していません。
クレカのショッピング枠のみの利用
クレジットカードのキャッシングサービスを利用していた場合は、過払い金がある可能性があります。
しかし、ショッピング枠しか使っていなかった場合は、過払い金は発生しませんので、注意してください。
貸金業者が倒産していると過払い金返還請求ができない
過払い金が発生していても、借金をした貸金業者がすでに倒産している場合は、過払い金返還請求をすることができません。
借り入れをしたのがかなり前である場合は、貸金業者が倒産している可能性も考えられるので、自分が借りた貸金業者が倒産していないかどうか確かめておくといいでしょう。
ちなみに、貸金業者が倒産していなければ、どの貸金業者から借り入れをしたのか覚えていない場合や、契約書をなくしてしまった場合でも過払い金返還請求をすることができますよ。
過払い金は「引き直し計算」で算出する
過払い金が発生するのは、すでに紹介したように、利息制限法によって定められている利息率よりも高い利息率(グレーゾーン金利)で返済していた場合です。
そして、過払い金を計算する時には、利息制限法によって定められている正しい利息率で計算し直します。この計算のことを「引き直し計算」と呼びます。
引き直し計算は簡単に表すと「実際に返済した利息額-正しい利息率で支払うべき利息額」となります。
一見簡単に思えますが、何度も完済と借り入れを繰り返していたり、支払い履歴が残っていなかったりすると、一般人が正確な過払い金額を計算することは困難です。
過払い金の引き直し計算をする手順
ここでは、過払い金の引き直し計算をする手順について紹介していきます。手順は以下にまとめた通りです。
- 取引履歴の開示請求
- 取引履歴をもとに引き直し計算をする
ざっくりとした手順は、まず引き直し計算をするための情報・証拠を集め、その情報をもとに計算するという形です。
次章以降で、それぞれの手順について解説していきますので、ここでは流れを頭に入れて置いていただければ大丈夫です。
過払い金の引き直し計算をする手順①取引履歴の開示請求
過払い金の引き直し計算をするためには、あなたがしていた借金の状況を詳しく知る必要があります。そのために必要なのが、「取引履歴」です。
取引履歴とは、あなたがどれだけの借金をして、毎月の支払いはいくらで、利息率はどれくらいだったのか、などの貸金業者との契約内容および取引の情報のことです。
取引履歴は貸金業者に保管されているので、まずは貸金業者に取引履歴の開示を請求します。取引履歴の開示は法律で義務化されており、借主もしくは借主の代理人に開示を求められたら拒否することはできません。
過払い金の引き直し計算をする手順②引き直し計算をする
貸金業者から取引履歴の開示をしてもらったら、それをもとにして引き直し計算を行います。引き直し計算は、すでに紹介したように、正しい利息率で借金の返済額を計算しなおすものです。
分かりやすくするために、例を出して解説しましょう。たとえば、あなたが100万円を29.2%の利息率で借り入れて、毎月5万円返済したとします。
この場合、1か月の返済額である5万円のうちの2万4千円が利息分です。利息分は下記の式で計算します。
- 1年間の利息額:100万円×29.2%=29万2千円
- 1日当たりの利息額:29万2千円÷365日=800円
- 1か月当たりの利息額:800円×30日=2万4千円
一方で、利息制限法によって定められている利息率15%で返済した場合、1か月の利息額は1万2千3百円です。計算式は以下の通りです。
- 1年間の利息額:100万円×15%=15万円
- 1日当たりの利息額:15万円÷365日=410円
- 1か月当たりの利息額:410円×30日=1万2千3百円
過払い金はすでに紹介したように「実際に支払った利息額-正しい利息率の場合に支払う利息額」で求められます。
今回の借り入れの1か月当たりの利息額で計算すると、2万4千円-1万2千3百円=1万1千7百円です。1年間あたりにすると、過払い金はおよそ14万円にもなります。
実際の計算では、返済にかかった期間、滞納があったかどうか、なども考慮して計算するので、上記の金額はあくまで一例です。
引き直し計算は複雑で難しいため、繰り返しになりますが一般人が行うのは困難です。自分で引き直し計算を行うのは、弁護士に相談する前にある程度の予想を立てるための使用に留めてください。
過払い金計算をするうえでの注意点
ここでは、過払い金の引き直し計算をする際の注意点について紹介していきます。注意点は、全部で4つあります。
同じ業者から借り入れを繰り返している場合
同じ業者から借り入れを繰り返している場合は、引き直し計算の方法が少し複雑になります。同じ業者から借り入れを複数回している場合、複数の借り入れを一連の取引として扱うこともあります。
利息率が統一された2010年以降の借り入れが合った場合でも、2010年以前の借り入れとして扱われれば、2010年以降の借金についても仮払金を取り戻せるのです。
複数回の取引が一連の取引として扱われるかについては、空白期間の長さや基本契約が同じであるかどうかなどを考慮して判断されます。一般人が判断するのは難しいので、弁護士に相談してみましょう。
取引履歴が欠けている・開示してくれない
貸金業者に取引履歴の開示を請求しても、「昔の取引履歴は処分してしまった」などと言われてしまうケースもあります。
取引履歴が完全でない場合は、一般の人が適切な形で引き直し計算を行うことは極めて困難です。後程触れますが、引き直し計算にミスがある場合は過払い金請求が無効になってしまうこともあります。
滞納があった場合
借金の返済に滞納があった場合、「滞納したのに過払い金請求するのは申し訳ない」と感じる人もいるでしょう。しかし、法律上は滞納したとしても過払い金請求をすることができるので気にする必要はありません。
むしろ、滞納したことによるペナルティを追加で支払っている場合は、通常よりも多く過払い金を取り戻せる可能性もあります。
滞納した場合は、引き直し計算の仕方が特殊なので弁護士に相談してきちんと計算してもらうようにしてくださいね。
また、滞納した際に督促がなかった場合は、過払い金が発生している可能性が高いので、期限が来てしまう前に返還請求することをお勧めします。
シミュレーションや自動計算ソフトに注意
過払い金の計算についてウェブ上で検索をすると、過払い金のシミュレーションができるサイトや過払い金の計算ができる自動計算ソフトなどを見かけることがあります。
しかし、こういったものを使った計算は、記事でも触れてきたような「滞納があったか」「複数回の取引が一連の取引として扱われるか」など、借金の細かな状況を入れ込むことができません。
シミュレーションで計算される過払い金は、実際の過払い金と大幅に異なる能性があるのです。次章で触れますが、過払い金の計算にミスがあると返還請求できなくなってしまうこともあります。
便利なのでつい使ってみたくなるのは分かりますが、使用はあくまで参考程度にとどめ、シミュレーションで算出した金額を使って、自分で返還請求することは絶対にしないでくださいね。
自分で過払い金を計算して返還請求するともらえる額が少ない
「弁護士に依頼すると料金がかかるから、自分で過払い金の計算をして請求したい」と考えている人もいるかもしれません。しかし、自分で過払い金の返還請求をすることはお勧めしません。
自分で過払い金の計算をして返還請求をすることをお勧めしない理由は以下の2つです。
引き直し計算をミスしてしまう
記事中でも再三お伝えしていますが、引き直し計算は考慮しなければいけない要素が多く、自分で正確に行うことは非常に困難です。
そして、引き直し計算をミスした状態で過払い金の返還請求をすると、請求自体が無効となり請求できなくなったり、請求できる金額が減らされてしまったりします。
節約のために弁護士費用を払わず自分でやったとしても、返還請求ができなくなってしまっては逆に高くついてしまいます。過払い金の計算は専門家である弁護士に依頼してくださいね。
貸金業者にうまく交渉できない
自分で過払い金返還請求をする場合は、自分自身で貸金業者と交渉をする必要があります。しかし、専門用語が理解できないと交渉は難しいですし、交渉自体もスキルが必要な行為です。
交渉が上手くできなかったことによって、受け取れる過払い金の額が減ってしまうこともあります。
弁護士に依頼すれば、交渉によって過払い金が減額する心配はありませんし、あなたはただ待っているだけで良いので時間や手間もかかりません。
弁護士費用は高い印象があるかもしれませんが、結果的に弁護士に依頼したほうが戻ってくる過払い金が多くなるので、弁護士に依頼することをお勧めします。
まとめ
過払い金の引き直し計算について紹介しました。記事の内容をまとめましたので、復習していきましょう。
- 過払い金の計算は「引き直し計算」
- 引き直し計算には取引履歴が必要
- 引き直し計算は複雑で自分でやるのは困難
- ネット上にある計算ソフトは当てにしないほうが良い
- 引き直し計算にミスがあると過払い金が受け取れないことも
過払い金の計算は複雑で難しいですし、ミスがあると過払い金返還請求ができなくなってしまうこともあります。
「弁護士費用を節約する」つもりで自分で計算したところで、弁護士と同じように交渉して過払い金を取り戻すことは到底不可能です。
手間暇かけて過払い金を受け取り損ねるより、弁護士にきちんと依頼して確実に過払い金を受け取ったほうが、結果的にお得です。
まずは弁護士事務所に相談して、過払い金があるかどうか、いくらあるのか、診断してもらいましょう。多くの弁護士事務所では過払い金の診断を無料でしてくれるので、気軽に相談してみてくださいね。