「過払い金返還請求に興味がある」「でも過払い金が生まれる仕組みがよく分からない」「弁護士に任せきりは不安だから自分でも理解したい」という人に向けて、過払い金の仕組みを解説します。
より良い過払い金返還請求をするためには、弁護士に任せきりにするのではなく、自分でも過払い金の仕組みを理解しておく必要があります。
この記事では、難しい法律用語も初心者の人が分かるように嚙み砕いて解説していくので、「法律事務所の公式サイトを読んでも理解できなかった」という人も安心してくださいね。
(トップ画像出典:https://www.pakutaso.com/20200437112post-27088.html)
過払い金が生まれる仕組みの全体像
ここでは、過払い金が生まれる仕組みの全体像を解説していきます。次章以降で細かい部分の解説していくので、ここでは大まかな流れが理解できればOKです。
借りたお金を返す時に上乗せされる利息は、法律によって「借りたお金の○○%まで」と定められています。しかし、昔は今では考えられないほど利息率が高く、破産する人が後を絶ちませんでした。
破産してしまう人を減らそうと、法律を改正して利息率を徐々に下げてきた歴史があります。その中で、法律が完全に改正する前に借金をした人は、今では不要になった利息をたくさん払っている状態になっています。
この「払い過ぎた利息」が過払い金です。次章では、具体的な法律名を挙げながら、さらに詳しく過払い金が生まれる仕組みについて解説していきます。
過払い金が生まれる仕組み①出資法
今の利息率になる前は、「出資法」という法律で利息率が定められていました。出資法は正式名称では「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」と言います。
出資法で定められた利息率はものすごく高く、1958年の利息率は109.5%でした。借金をした人の多くがこの利息率の高さに苦しみ、結局、借りたお金を返しきれずに破産してしまうケースが多発しました。
その後、お金を借りる人が破産しないよう、法律で保護しようという動きが世の中に広まっていきました。出資法は利息率を下げるために何度も改正を繰り返し、2001年には29.2%まで下がったのです。
ちなみに、29.2%の利息率を無視した場合は、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」が科せられていました。
- 出資法に定められていた利息率は元々ものすごく高かった
- 徐々に利息率が下がって2001年に29.2%になった
- 利息率29.2%を超えた場合は刑事罰があった
過払い金が生まれる仕組み②利息制限法
出資法の利息率は29.2%まで下がりましたが、それでも破産してしまう人が多くいました。さらに利息率を下げるために、「利息制限法」という法律で利息率を最大で20%までにすると定めました。
利息制限法による利息率は、借入額によって異なり、100万円以上の場合は15%、10万円~100万円未満の場合は18%、10万円以下の場合は20%と定められています。
しかし、利息制限法には刑事罰がありません。そのため、15~20%の利息率を超えたとしても出資法による29.2%を超えなければ、貸付業者は罰則を受けることはありませんでした。
貸付業者は利息制限法の罰則がないのを良いことに、高い利息率でお金を貸し続けていました。
- 利息率を最大20%に制限
- 罰則がないため従わない貸付業者が多数いた
過払い金が生まれる仕組み③グレーゾーン金利
出資法の利息率が29.2%、利息制限法の利息率が15~20%と定められていて、利息率に差がありました。
この利息率の差を、「グレーゾーン金利」と読んでいます。グレーゾーン金利を図解すると以下のようになります。
利息制限法の利息率は15~20%ですが、この利息率を超えても罰則がありません。一方で、出資法の29.2%を超えた場合は罰則が科せられます。
そこで、貸付業者は金利で多く儲けるために、罰則のない範囲(最大で29.2%)で貸し付けを行っていました。
もちろん、グレーゾーン金利での貸し付けは違法なのですが、実際は罰則がないためにグレーゾーン金利での貸し付けは当たり前に行われていました。
- 出資法と利息制限法の利息率の差がグレーゾーン金利
- グレーゾーン金利は違法だが実際はよく使われていた
過払い金が生まれる仕組み④みなし弁済制度
グレーゾーン金利での貸し付けは基本的に違法なのですが、「みなし弁済制度」によって事実上、認められている形になっていました。
みなし弁済制度は、一定の条件を満たせば、利息制限法で定められている利息率(15~20%)を超えても違法にならないという決まりです。みなし弁済制度の一定の条件は、以下の5つがあります。
- 貸主は貸金業者として登録している(闇金ではない)こと
- 貸付時に貸し付けの条件などを契約書で交付すること
- 借主が利息率に納得していること
- 借主の任意で利息が支払われていること
- 支払いの度に受取証書を交付すること
簡単に言うと、借金をする人(借主)が利息率に納得して契約している場合は、違法にならないということです。借主が拒否すれば済む話なのですが、どうしても借主は貸金業者よりも弱い立場にあります。
そのため、高金利を提示されても仕方なく同意してしまう借主がほとんどでした。しかし、次第に「法律で借主を保護すべきだ」という考えが広まっていき、次章で紹介する新たな法改正によって利息率が統一されます。
- グレーゾーン金利での貸し付けを事実上認める制度
- 借主は貸付業者よりも立場が弱いためにみなし弁済制度で苦しんだ
過払い金が生まれる仕組み⑤貸金業法の改正
グレーゾーン金利での貸し付けが減らないことを受けて、借主を保護するために利息率の統一化が行われました。「貸金業法」という法律が2010年に改正されて、グレーゾーン金利の廃止されたのです。
2010年以降の貸し付けに関しては、15~20%の利息率を超えると罰則が与えられるようになりました。みなし弁済制度も廃止され、借主が貸付業者から搾取されてしまうこともなくなりました。
- 2010年に貸金業法の改正が行われた
- 利息率を利息制限法に定められた15~20%に統一
- グレーゾーン金利・みなし弁済制度が廃止された
- 利息率を超えて貸し付けた場合は罰則が与えられるようになった
過払い金がある可能性が高い人はどんな人?
ここまで、過払い金が生まれる仕組みについて解説してきました。「結局、自分は過払い金があるのかイマイチよく分からない」という人もいるかもしれませんね。
結論から言うと、過払い金がある可能性が高い人は、2010年以前から借り入れをしている人です。2010年以降は利息率が統一化されているため、過払い金が発生しません。
2010年以前に借り入れをしている人は、過払い金がある可能性が高いので、過払い金返還請求をしてみるといいでしょう。すでに完済している人であっても返還請求をすることができますよ。
過払い金返還請求をして払い過ぎた利息を取り戻す
過払い金返還請求をすれば、グレーゾーン金利で払い過ぎた利息を取り戻すことができます。
グレーゾーン金利は「借主が任意で支払う」ものですので、「払いたくない」という意志表示をすれば後から取り戻すことができるんです。お金を取り戻したい人は、返還請求をしましょう。
今借金を返済している人だけでなく、既に完済している人も完済から10年以内であれば、過払い金返還請求することが可能ですよ。時効になってしまう前に返還請求するようにしてくださいね。
過払い金返還請求は弁護士へ相談
過払い金返還請求は、司法書士や弁護士でないと行うことができません。過払い金返還請求をしたい人は、法律のプロである司法書士や弁護士に相談してみてくださいね。
ただ、司法書士は扱える借金の金額や、行える手続きにも制限があります。司法書士でも過払い金返還請求をすることはできますが、弁護士のほうが有利に立ち回ることができます。
より確実に大きな金額を取り戻したいという人は、弁護士に依頼すると良いでしょう。過払い金があるかどうか診断もしてくれるので、「正直よく分からない」という人もまずは相談してみてくださいね。
過払い金が生まれる仕組み まとめ
過払い金が生まれる仕組みについて解説してきました。記事の内容を一覧にまとめてみたので、最後に確認しておきましょう。
- 昔は出資法と言う法律で高い利息率(高金利)が認められていた
- 利息制限法で利息率が下がったものの罰則がなく実際は高い利息率が続いた
- 出資法と利息制限法の利息率の差が過払い金(=グレーゾーン金利)
- 2010年の貸金業法の改正によって利息率が最大20%に統一された
- 2010年以前に借金をしていた人は過払い金がある可能性が高い
- 過払い金返還請求は弁護士に依頼するのがおすすめ
過払い金返還請求は弁護士が面倒な手続きも代わりにやってくれますが、自分もある程度の知識がないと話についていけなかったり、能力の低い弁護士に依頼してしまったりします。
例えば、弁護士から「○○円戻ってきますよ!」と言われても、過払い金が生まれる仕組みが分かっていないと「なぜ戻ってくるのか」「金額は妥当なのか」が分かりません。
この記事を参考にして、過払い金が生まれる仕組みを理解して、良い形で過払い金返還請求をしてみてくださいね。