考えたくはないですが、ある日突然障がいになって働けなくなることは、誰にでもあります。このようなときのために【障害年金】という国の仕組みがあります。
今回は、障害年金がどのような仕組みなのか、申請条件や受け取れる金額まで解説します。年金は老後に受け取れるものだと思っているなら、この記事を読んで、他の年金の仕組みも知っておくとよいですよ。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/4565864?title=%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%B9%B4%E9%87%91%E7%94%B3%E8%AB%8B%E6%9B%B8%E9%A1%9E&searchId=1132033611#)
障害年金ってどんな年金なの?
年金と聞くと一般的には老後にもらえる年金を想像しますよね。実は国の年金には、老後に受け取れる【老齢年金】の他に、障害年金、遺族年金があります。
- 老齢年金:65歳になったら受け取れる年金
- 遺族年金:年金を払っていた人が亡くなった場合、遺族が受け取れる年金
- 障害年金:病気やケガが原因で働くことに支障がでている人が受け取れる年金
突然病気になったり、事故で身体が不自由になると働けなくて困りますよね。障害年金はこんなときのためにあります。ここからは障害年金の申請条件や受け取るために必要な書類について解説します。
(遺族年金については、別の記事で詳しく紹介しているので、併せて読んでみてください。)
障害年金の種類と申請の流れ
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類あります。国民年金を支払っているか厚生年金を支払っているかで変わります。
障害年金は2種類ある
障害年金は次の2種類あります。どちらの年金を支払っているかで、受け取れる年金が変わります。
- 障害基礎年金:国民年金を一定期間以上支払っている人が受け取れる
- 障害厚生年金:厚生年金を一定期間以上支払っている人が受け取れる
国民年金は、20歳以上の人全員が加入義務のある年金です。厚生年金は、会社員や公務員が払っている年金になります。
障害年金の申請を検討する場合は、まず自分がどちらの年金を支払っているか確認しましょう。
障害年金の申請の流れ
障害年金の申請の流れは次のようになります。申請の手順を知っておけば、何度も役所に行ったり、病院に行ったりせずに済みますよ。
- 病院で医師から障がいの状態について診断書をもらう
- 申請に必要な書類をそろえる
- 年金事務所に申請する
- 年金事務所の審査を受け、障害認定を受ける
障害年金を申請には様々な書類が必要になるので、年金を受け取れるようになるまでに時間やお金がかかります。(申請に必要な書類は別で詳しく解説しますね。)
障害認定とは?
障害認定とは、申請者の障がいの状態を判断する基準です。障害認定は外見でわかるものから、精神的なものや肝臓や腎臓などの内部の障がいが対象です。
障害認定には等級があり、3級→2級→1級の順に重くなります。等級は受け取れる障害年金の金額にも関わってくるので、申請するときは等級の判断基準を確認しておきましょう。
例えば、下肢(下半身、足)の場合は、足が動かせないこと、足がケガ等により無いことが障害認定1級となる条件になっています。
どのようなものが障がいと認定されるかは、年金機構のホームページに詳しい基準が掲載されているので、確認しておきましょう。(参考:日本年金機構 障害認定基準)
障害基礎年金の申請条件
障害基礎年金の申請条件は次のとおりです。国民年金を滞納せずに支払っていれば、問題は無いでしょう。
申請条件 |
※20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日があるときも条件に該当する
(1)初診日を含む月の前々月まで公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること (2)初診日において65歳未満であり、初診日を含む月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと ※ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。 |
障害認定 |
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障害認定の対象となるもの | 障害認定の対象となるケガや病気は主に次の3種類に分けられます。
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(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html)
障害基礎年金は、国民年金の支払いに滞納がないことと、障害等級が2級または1級と判断される必要があります。
国民年金を毎月支払っていれば問題ありませんが、自分が国民年金をきちんと払っているか心配の場合は、年金機構のねんきんネットで調べることができます。
障害厚生年金の申請条件
障害厚生年金の申請条件は次のとおりです。障害基礎年金よりも障がいの状態が軽くても年金を受け取れるのが特徴です。
申請条件 |
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障害認定 |
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障害認定の対象となるもの | 障害認定の対象となるケガや病気は主に次の3種類に分けられます。
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(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html)
障害厚生年金は障害基礎年金と違い、障害等級3級から年金の受取ができます。1級と2級の認定基準は、障害基礎年金と同じです。3級は1級と2級よりも症状が軽いと判断されます。
障害年金の申請に必要な書類
障害年金の申請に必要な書類は次のとおりです。障害基礎年金、障害厚生年金ともに共通です。
全員必ず提出が必要な書類
障害年金の申請に必要な書類として、医師の診断書が必ず必要です。診断書の書式は決まっているので、忘れずに病院で依頼しましょう。
No | 書類 | どんな情報が必要か |
1 | 請求書 | 指定書式あり、申請者の情報(年金番号等) |
2 | 年金手帳 | 加入期間を確認 |
3 | 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のどれか | 本人の生年月日を確認する |
4 | 医師の診断書 | ★指定書式あり
障害認定日より3カ月以内の現症のもの。 ※障害認定日と年金請求日が1年以上あいている場合は、直近の診断書(年金請求日前3カ月以内の現症のもの)も必要。 |
5 | 受診状況等証明書 | 初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため |
6 | 病歴・就労状況等申立書 | 障害の状況を確認するための補足資料 |
7 | 受取先金融機関の通帳等 | 通帳またはキャッシュカード |
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/shougai/seikyu/20140519-01.html)
状況に応じて必要な書類
申請者に子どもがいたり、障害の原因が交通事故などの場合は、提出書類がさらに必要になります。多くの書類を準備しなければいけませんが、障害年金を受け取るためには必要なので、漏れないようにしましょう。
No | 書類名 | どんな情報が必要か |
1 | 戸籍謄本 | 申請者との関係を確認 |
2 | 世帯全員の住民票 | 申請者との生計関係を確認 |
3 | 子の収入が確認できる書類 | 義務教育中の場合は不要
高校在学中は学生証または在学証明書 |
4 | 医師または歯科医師の診断書
(20歳未満で障害がある子どものみ必要) |
1級または2級の障害の状態にあることを確認するため |
障害の原因が交通事故等による原因の場合は次の書類が必要になります。医師の診断書に加えて、示談書や保険会社への同意書も必要になります。
No | 書類名 | どんな情報や書類が必要か |
1 | 第三者行為事故状況届 | 所定の書式があるので、年金事務所に確認 |
2 | 交通事故証明または事故が確認できる書類 | 事故証明が取れない場合は、事故の新聞記事でも可能 |
3 | 確認書 | 所定の書式があるので、年金事務所に確認 |
4 | 被害者に被扶養者(子どもや配偶者)がいる場合、扶養していたことがわかる書類 | 源泉徴収票、健康保険証の写し、学生証の写しなど |
5 | 損害賠償金の算定書 | 示談書等でも可能 |
6 | 損害保険会社等への照会に係る「同意書」 | 所定の書式があるので、年金事務所に確認 |
障害年金はいくら受け取れるの?
障害が原因で働けない場合は、障害年金は生活費の大事な助けになります。申請前にいくら受け取れるか確認しておきたいですよね。障害基礎年金、障害厚生年金で受け取れる金額の計算方法が違います。
障害基礎年金の場合
障害基礎年金の場合、国民年金の支払っている金額に関係なく、年間で決まっています。また、18歳未満の子ども(20歳未満の障がいのある子ども)がいる場合は、子どもの人数に応じて加算があります。
- 【1級】780,900円×1.25+子どもの加算
- 【2級】780,900円+子どもの加算
第1子・第2子は1人224,700円、第3子からは1人74,900円
障害厚生年金の場合
障害厚生年金の場合は、計算が少し複雑なので、計算方法だけ知っておきましょう。また、厚生年金に限り、65歳未満の配偶者がいる場合は、【配偶者加給年金額】が加算されます。
ただし、配偶者加給年金額は、老齢厚生年金や障害年金を受け取れる場合は、加算されません。
- 【1級】(報酬比例の年金額) × 1.25 + 配偶者の加給年金額(224,700円)
- 【2級】(報酬比例の年金額) + 配偶者の加給年金額(224,700円)
- 【3級】(報酬比例の年金額) ※最低保障額 585,700円
報酬比例の年金額は次の計算式を使い、2の金額 > 1の金額の場合、2の金額が年金額となります。もし、障害等級が3級で、計算した金額 < 585,700円の場合は、585,700円が年金額となります。
- (平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月までの被保険者の期間+平均標準報酬額×5.481/1,000×2003年4月以降の被保険者の期間)×3/4
- (平均標準報酬月額×7.5/1,000×2003年3月までの被保険者の期間+平均標準報酬額×5.769/1,000×2003年4月以降の被保険者の期間)×0.999×3/4
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)
障害年金のメリット:国民年金が免除される
ここからは、障害年金を申請するメリットとデメリットを紹介します。
障害年金を申請するメリットは、【国民年金の支払いを免除されること】です。この制度を国民年金の法定免除制度といい、障害基礎年金、障害厚生年金のどちらを申請しても免除の申請は可能です。
必要な書類は、【国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届】です。提出先は、住所を管理する役所の年金窓口になります。
ただ、国民年金は20歳以上の国民全員が支払う義務があるので、法定免除制度を利用した場合は、老後に受け取れる年金が少なくなることを理解しておきましょう。
障害年金のデメリット:受取までに時間がかかる
障害年金のデメリットは、【年金の受取までに時間がかかること】です。遺族年金は書類等に不備がなければ、役所からすぐに認定が降り、年金を受け取れます。
一方で、障害年金は申請から認定まで審査が約3カ月かかります。審査が長引く原因としては、申請者の障がいがどの程度働くことに影響を与えているか、多くの書類から判断するためです。
申請している側としては、働くことが難しいため、早く生活費が欲しいと思いますが、役所の審査は基本的に時間がかかると考えた方がよいでしょう。
障害年金の認定が降りて、受け取れるようになるまでは、保険や貯金などで生活費をまかなう必要があります。
障害年金を受け取れなくなった…でも障害手当金があります
障害年金を受け取っていたけど、治療の結果、障がいが改善して、障害等級が軽くなる場合があります。障害年金は更新制のため、条件に合わなくなった場合は、年金を受け取ることができません。
病気やケガの症状が良くなっても、日常生活や働くには難しい障がいが残る可能性がありますよね。このような場合は、【障害手当金】を申請できます。
ただし、障害手当金は、厚生年金を支払っていた人に限り、申請できる制度なので、国民年金のみ支払っている人は利用できません。
障害年金を受け取れなくなったけど、生活費が必要な場合は、障害手当金の申請を検討してみましょう。
障害年金ってどんなときに申請できるの? まとめ
今回は、障害年金の申請条件やメリット・デメリットについて紹介しました。突然の事故や病気で働けなくなることは起きてほしくないですが、万が一のために仕組みだけでも知っておいた方が良いです。
「自分に限ってそんな障害が残るようなことは起きないよ。」と思っていると、ある日体調を崩したり、交通事故にあったりするものです。
年金は65歳以上にもらえる老齢年金以外にも、障害年金があることを知っておけば、年金を支払っても損はないとですよね。
個人的には、障害年金を申請せずに、老齢年金をもらえるように体調に注意して過ごしたいと思います。