家族の大黒柱がある日帰らぬ人になってしまった…。残された家族はどうすればいいか困りますよね。
こんなときのために【遺族年金】という国の仕組みがあります。今回は遺族年金の仕組み、受け取れる条件や対象者について詳しく解説します。
「自分の家族に限って亡くなるなんてことはないよ。」と思わず、この記事をいざというときのために、読んでみてください。(遺族年金を利用する機会が無い方が良いですが、知っておいて損はありません。)
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/4520983?title=%E5%B9%B4%E9%87%91%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8&searchId=153160#)
遺族年金って何?年金とはどう違うの?
年金と聞くと一般的には、65歳以上から受け取れるものを想像しますよね。国の年金には、65歳以上から受け取れる【老齢年金】以外に2つあります。
- 老齢年金:65歳以上の人で一定の期間保険に加入している人が受け取れる年金
- 遺族年金:保険の加入者や年金を受け取っている人が死亡した場合に遺族が受け取れる年金
- 障がい者年金:病気やケガが原因で障がいになった人が受け取れる年金
ここからは、家族の大黒柱が亡くなった場合に一定期間保険料を納付していれば受け取れる【遺族年金】の仕組みや申請方法を詳しく紹介します。
遺族年金は主に2種類
遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類です。それぞれの違いは次のようになります。
- 遺族基礎年金:国民年金を支払っていた人が死亡した場合、遺族が受け取れる年金
- 遺族厚生年金:厚生年金を支払っていた人が死亡した場合、遺族が受け取れる年金
国民年金は、20歳以上の国民全員が加入する義務がある年金です。厚生年金は、会社員が支払っている年金になります。
死亡者がどの年金を支払っていたかによって受け取れる遺族年金も変わってきます。
ここからは遺族年金を受け取れる条件と対象者を解説していきますね。
遺族基礎年金を受けられる条件や対象者は?
遺族基礎年金を受け取れる条件と対象者は次のとおりです。国民年金を毎月支払っていれば問題なく受け取れます。
受け取れる条件 | 国民年金の被保険者、または、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合
※ただし、死亡日前日までに保険料を加入期間の3分の2以上を納付していることが条件 ※令和8年4月1日より前の場合、死亡者が死亡日に65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の2ヶ月前までに、1年間の保険料を納付しなければならない期間中、滞納が無ければ受給できる |
対象者 | 死亡者によって生活していた子どもがいる配偶者、または子ども
※支給対象者は、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子か(18歳未満)、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子 |
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)
死亡者が国民年金を支払っていない期間がある場合は、年金の納付期間を計算しなければいけません。この場合は、ねんきんネットに登録すれば自分がいつ年金を払っているか確認できます。
遺族基礎年金は、子どもが18歳(または20歳未満)になると支給対象から外れてしまいます。また、子どもが18歳未満(または20歳未満)でも結婚している場合では支給対象外となるので注意しましょう。
受給資格期間とは、年金を受け取るために必要な加入期間のことを指します。令和3年4月現在では、老齢基礎年金(65歳以降受け取れる年金)を受け取るために必要な加入期間は、10年間です。
遺族厚生年金を受けられる条件や対象者は?
遺族厚生年金を受け取れる条件と対象者は次のとおりです。遺族厚生年金は受けられる条件と対象者が複雑になりますが、死亡者が会社に勤めていた場合は、問題なく受け取れるでしょう。
受け取れる条件 |
※1の場合、遺族基礎年金と同じように死亡日前日までに保険料を加入期間の3分の2以上を納付していることが条件 ※令和8年4月1日より前の場合、死亡者が死亡日に65歳未満であれば、死亡日が含まれる月の2ヶ月前までに、1年間の保険料を納付しなければならない期間中、滞納が無ければ受給できる |
対象者 | 死亡者が家計を維持していた場合に限り、
※55歳以上の夫は、遺族基礎年金を受給している場合は、遺族厚生年金も一緒に受給できます ※子どもがいる配偶者、または子どもは、遺族基礎年金も一緒に受給できます |
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)
遺族厚生年金は遺族基礎年金と違い、生涯受け取ることができます。ただし、遺族厚生年金を受け取っている人が30歳未満の妻で子どもがいない場合は、5年間しか受け取れません。
また、妻または55歳以上の夫が再婚した場合は、遺族厚生年金を受け取れる資格が無くなります。
子どもがいない配偶者の場合は死亡一時金が支給される
遺族厚生年金は、子どもがいない人でも受け取れるのに、遺族基礎年金は子どもがいない配偶者は受け取れないのは不公平…。
遺族年金の受け取れる条件を見ると、遺族基礎年金は子どもがいない配偶者には不公平な仕組みに見えますよね。
このような差をなくすために、【死亡一時金】という制度があります。死亡一時金を受けられる条件は次のようになります。
- 死亡者が第1号被保険者として国民年金を納付している期間が36ヶ月以上ある
- 死亡時に老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取っていない
- 死亡者によって家計を維持していた
死亡一時金を受けられる対象者の優先順位は、【配偶者→子ども→親→孫→祖父母→兄弟姉妹で優先順位が高い人】となります。ただし、遺族基礎年金を受けられる場合は、対象者から外れます。
死亡一時金は、受け取れる権利が死亡日から2年で失効してしまいます。そのため手続きはなるべく早めにしましょう。
第1号被保険者とは、20歳以上の自営業者、農業・漁業をしている人とその家族や学生、無職の人が該当します。
妻だけ受けられる寡婦年金
家族の大黒柱として働いていた夫が無くなってしまった場合、妻だけが受けられる【寡婦年金】というものがあります。寡婦年金を受けられる条件は次のようになります。
- 死亡日の前日に第1号被保険者として国民年金を10年以上納付している夫がいた
- 夫と10年以上婚姻関係にある、または事実婚の状態だった
- 夫が家計を維持していた
- 夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取っていない
- 妻が65歳より前に老齢基礎年金を受け取っていない
死亡一時金と寡婦年金をどちらとも受け取れる場合は、片方を選択することになります。また、妻が寡婦年金を受け取れる期間は、妻が60歳~65歳の間です。
条件があえば遺族年金は基礎年金と厚生年金の両方受け取れる?
遺族年金は、条件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる仕組みになっています。厚生年金に加入している場合は、国民年金も納付しているので、両方の遺族年金を受け取れます。
両方受け取れるのはどんなとき?
例えば、夫が厚生年金に加入していて、妻、18歳未満の子ども1人がいる場合で考えてみましょう。
夫が亡くなって家族が遺族年金を受け取れる条件を満たす場合、遺族厚生年金は妻、遺族基礎年金は妻と子どもが受け取れることになります。
ただし、子どもが18歳になったら遺族基礎年金は受け取れなくなるので、遺族厚生年金のみになります。
遺族基礎年金が受け取れなくなった場合の中高齢寡婦加算
遺族厚生年金を受給している妻は、子どもが18歳以上(障がい者の場合は20歳以上)になったときに、遺族基礎年金を受け取れる資格が無くなります。
このとき、妻が40歳以上65歳未満であれば【中高齢寡婦加算】を受け取れます。遺族基礎年金の受け取る条件に該当しなくなったときは、中高齢寡婦加算の申請を検討してみましょう。
遺族年金の申請に必要な書類
遺族年金を申請するときは必要な書類は次のとおりです。提出先は、住所を管轄している年金事務所か役所になります。遺族年金を受け取るまでに、多くの書類が必要になるので、漏れが無いようにしたいですね。
遺族年金申請に必ず必要な書類
下記の書類以外に、死亡者のマイナンバーまたは年金基礎番号が必要になります。
No | 書類の名称 | どんな書類か |
1 | 年金請求書 | 遺族年金を請求する申請書(遺族基礎年金と遺族厚生年金で書式が違います) |
2 | 戸籍謄本 | 死亡者と申請者の関係がわかるもの、発行日が申請日から6カ月以内のものが必要 |
3 | 世帯全員の住民票 | 死亡者が家計を維持していた人数を確認するために必要 |
4 | 死亡者の住民票の除票 | 世帯全員の住民票に死亡者の記載があれば不要 |
5 | 請求者の収入を証明できるもの | 所得証明書、課税証明書、源泉徴収票など |
6 | 子どもの収入を証明できるもの | 義務教育中の場合は不要、高校在学中の場合は学生証または在学証明書 |
7 | 死亡診断書または死亡届の記載事項証明書 | 死亡の原因と死亡の年月日を確認するために必要 |
8 | 年金を受け取る金融機関の通帳等 | 通帳またはキャッシュカードが可能 |
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/seikyu/20140617-02.html)
2の戸籍謄本は、本籍地がある役所、3、4の住民票と除票は、住所を置いている役所で取得できます。本籍地と住所が違う場合は、2つの役所に行くことになるので、事前に確認しておきましょう。
除票とは、引越に伴う転出届、または死亡に伴う死亡届などの届け出がされて、住民登録が削除されたときに作成されるものです。届け出があってから5年間発行できます。
状況に応じて必要な書類
遺族年金の申請に必要な書類以外にも状況に応じて必要な書類があります。死亡の原因が交通事故など第三者(死亡者と直接関係が無い人)が原因の場合です。
No | 書類の名称 | どんな書類か |
1 | 第三者行為事故状況届 | 書式が決まっているので、役所や年金事務所で確認しましょう |
2 | 交通事故証明または事故が確認できる書類 | 事故証明が取れない場合は、事故について書かれた新聞の記事でも可能 |
3 | 確認書 | 書式が決まっているので、役所や年金事務所で確認しましょう |
4 | 扶養していたことがわかる書類(被害者に被扶養者がいる場合) | 源泉徴収票、健康保険証、学生証など |
5 | 損害賠償金の算定書 | 損害賠償金の金額が決定している場合に必要、示談書などで可能 |
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/seikyu/20140617-02.html)
遺族年金の支給額の計算方法
遺族年金を申請するときに、どれくらい受け取れるか事前に確認しておきたいですよね。遺族基礎年金と遺族厚生年金で算出方法が異なります。
遺族基礎年金の場合
遺族基礎年金の場合は、支払っている国民年金の金額に関わらず、年間で一律780,900円と決まっています。(令和3年4月現在)
これに加えて18歳未満の子どもがいる場合は、第一子、第二子までは1人あたり年間224,700円支給されます。第三子以降は、1人あたり74,900円となります。
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)
遺族厚生年金の場合
遺族厚生年金の場合は、次の計算式で支給額を計算します。(※計算式は複雑なので覚えなくて問題ありません)
- (平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月までの被保険者の期間+平均標準報酬額×5.481/1,000×2003年4月以降の被保険者の期間)×3/4
- (平均標準報酬月額×7.5/1,000×2003年3月までの被保険者の期間+平均標準報酬額×5.769/1,000×2003年4月以降の被保険者の期間)×0.999×3/4
(参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)
基本は1の式で計算した金額を支給しますが、2で計算した金額>1で計算した金額の場合、支給額は2の金額となります。
遺族年金ってどうすればもらえるの? まとめ
今回は遺族年金の仕組みと申請方法について紹介しました。配偶者が亡くなった、親が亡くなったなど突然のことに備えて遺族年金の仕組みを知っておくと、いざというときに生活の助けになります。
将来私達が受け取れる年金が少なくなる可能性は高いですが、遺族年金の仕組みを知っておけば、毎月納めておいても損は無いと思えませんか。
年金は将来受け取れないだろうからと放置せずに、きちんと納付しましょうね。
個人的には家族の大黒柱が亡くなることは起きてほしくないですし、遺族年金を使う機会が無い方が良いですが。