「自己破産すると借金の支払いは全部なくなるんだよね。税金も払わなくていいんだよね。」
自己破産をすると借金が無くなるので、税金は支払わなくて良いと思っていませんか?残念ながら自己破産をしても、税金は支払わないといけません。
この記事では、なぜ税金は免除されないのか、税金が支払えない場合の解決方法も紹介するので、参考に読んでみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/3275984?title=%E7%A8%8E%E9%87%91%E3%80%80TAX)
自己破産はどんな手続きをするの?
自己破産は債務整理の1つで、裁判所に「借金の返済が難しいので、返済を免除してください」と申請する手続きです。
申請条件は「安定した収入が無いこと」と「毎月の返済金額が収入より上回っていること」です。財産状況などを見て、将来も返済が難しいと判断された場合に申請できます。
自己破産では借金の返済が免除される代わりに、必要最低限の財産以外は、原則没収されて売却されるなどして、債権者への返済にあてられます。
借金の理由がギャンブルや浪費の場合は、返済が免除されないので、この場合は他の債務整理を検討する必要があります。
自己破産をすると税金はどうなるの?
自己破産をすると借金の返済は免除されますが、税金は免除されません。税金は「非免責債権」(ひめんせきさいけん)という、借金でも支払いが免除されないものの1つになります。
税金は国民全員が平等に支払いをする前提があるため、自己破産してお金がなくても支払いをしなければいけないのです。
「お金が無い人から税金を取るの?」と思いますが、国民の三大義務で「納税の義務」があるため、仕方がありません。お金が無いから支払いを待ってほしい場合、方法はあるので、別の章で詳しく解説しますね。
自己破産で税金以外にも免除できないものはある
自己破産をしても税金は免除されませんが、税金以外にも支払いを免除されないものがあります。具体的には次のようなものです。
- 社会保険料、厚生年金、介護保険料
- (自治体が請求する)水道料金
- 子育て拠出金(保育料)
- 損害賠償金
- 養育費
- 給料の未払金
- 債権者一覧表に記載を忘れた債権
基本的に国や地方自治体に支払いをするものは、免除されないと考えてください。また、交通事故等の損害賠償金や養育費も免除の対象となりません。
また、個人事業主で事業をしていたけど自己破産した場合、従業員への給料の支払いは免除されません。
債権者一覧に記載を忘れると免除はできない?
自己破産で借金でも支払いを免除できないものに「債権者一覧表に記載を忘れた債権」があります。自己破産を申請するときに、申請時点での借金を一覧表にしますが、記載漏れがあると当然ですが免除されません。
通常は消費者金融の借り入れやカードのキャッシングを記載しますが、保証人になっている場合でも記載が必要です。保証人になっている借金を債権者一覧表に記載しないと借金と認めてもらえません。
もし、債務者が知人の保証人になっていることを忘れていると、知人の返済が遅れたり、自己破産したりした場合、債務者に返済の請求が届き、支払いをしなければなりません。
自己破産を申請するときは、債権者一覧表に漏れが無いようにすべての借金を記入しましょう。
自己破産の手続きをしたら自治体に相談する
自己破産の手続きをしたら、税金の支払いは厳しくなるので、まずは自治体の窓口で相談しましょう。自己破産の手続きをしても、自治体はあなたが手続きをしていることを知りません。
自己破産の手続きをしているので、今は税金を払うのが厳しいこと、支払う意思があることを伝えるのが重要になります。窓口には自己破産をしていることがわかる書類を持参しましょう。
自治体によっては、分納や支払う時期について柔軟に対応してもらえることがあります。税金の支払いを、督促状などが届いているにも関わらず放置するのが1番危険です。
税金を放置すると、財産の差し押さえがある
自己破産したにも関わらず、自治体の窓口で今後の支払いについて相談等何も手続きをしなかった場合、財産の差し押さえがあります。
催告書や自治体からの支払い督促の電話を無視していると、強制的に税金を徴収する手続きに進みます。
税金を滞納すると、裁判所が差し押さえする場合と比べて早い段階で、自治体は財産の差し押さえをするでしょう。給料等が入っている口座があれば、滞納している税金が無くなるまで差し押さえが続きます。
また、退職金や臨時収入が入った場合でも強制的に税金の支払いに回すので、自治体からの連絡は無視してはいけません。
税金に延滞税がかかったり担保が必要になったりすることも
自己破産後に自治体に税金の相談をして、分納が認められることがあります。分納が認められたとしても、税金を滞納していることに変わりはないので、延滞税がかかるでしょう。
延滞税が加わって税金は高くなりますが、分納で少額ずつでも支払った方が、自治体の担当者からの印象も良くなり、より柔軟な対応をしてもらえる可能性があります。
また、自治体によっては分割を認めず、滞納分を一括で支払いを求める所もあります。自己破産後で財産が無い状態でも、担保を求める場合があるようです。
もし、自治体と交渉しても税金の一括支払いを求められた場合、自己破産の申請をした弁護士と一緒に相談する方法もあります。申請者より第三者からの説明の方が理解してもらえる可能性が高いです。
どうしても税金の支払いが難しいときは?
税金の支払いが分納でも財産状況により難しい場合があります。特に自己破産後は、財産は最低限の生活ができる程度しか残らず、経済的に厳しい状態です。
このように経済的に厳しいときは、税金の支払いを1年間待ってもらえる制度があります。自治体により経済的に厳しい基準が統一されていないので、支払いを待ってもらえるかは担当者により異なります。
ただ、自己破産が原因であれば、明らかに財産が無い状態なので認められる可能性は高いです。
また、自己破産後に生活保護を受給している場合は、受給を開始した後の税金は一時的に支払いを待ってもらえます。ただし、生活保護の受給を止めたときは、当然ですが税金の支払いをしなければいけません。
自己破産後に納税義務が無くなる?
税金を滞納しても納税義務が止まることがあります。納税義務が止まる条件は3つあります。
- 税金を滞納していると証明できる財産が無い
- 税金を徴収すると、生活が困難になる
- 税金を滞納している人の住所や財産がどこかわからない
3つの条件がそろうと、まず税金を滞納しているという処分を止めます。そしてこの状態が3年間経過すると納税義務は消滅します。滞納している人の記録を取り続けると、自治体の本来の仕事ができなくなるからです。
「住所や財産をわからないように隠して3年経過すれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、自治体は勤務先に給料の支払いを確認したり、口座の取引記録を照会したりできる権利を持っています。
もし、自己破産後に財産を取得したり、給料をもらったりすると、自治体に通知されるので、税金を滞納しているという扱いに戻ります。納税義務は無くならないので、自己破産しても税金の支払いはしてください。
自己破産すると税金は払わないといけない? まとめ
今回は自己破産すると税金の支払いがどうなるかを取り上げました。借金の支払いが免除されても、税金の支払いは残ります。
生活保護を受給していれば税金の支払いは待ってもらえますが、元々自己破産は、「借金を無くして時間が経てば生活基盤が安定する」という前提の制度です。
税金の支払いを伸ばしても支払う金額が増えるだけで良いことはありません。自己破産後は、まずは安定した収入を得て、生活基盤を作ることを目標にしましょう。