全ての借金を免除できる方法が、自己破産手続きです。利用を検討する時には、一連の流れが分からず、不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
自己破産手続きを完了させるためには多くの書類を揃えたり、複数の手順を踏む必要があったりするので、なかなか大変です。
そこでこの記事では、自己破産手続きの流れを7つの手順に沿ってそれぞれ解説していきます。
この記事を読んで、自己破産手続きを利用する時の判断材料として役立ててください。
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自己破産のおおまかな流れ
まず最初に、自己破産のおおまかな流れを説明していきます。自己破産はおおよそ、次の1から7までの手順に沿って行われるのです。
- 弁護士への依頼・相談
- 取立の停止
- 各種書類の準備
- 破産手続きの申立
- 破産手続きの開始
- 免責審尋(めんせきしんじん)
- 免責許可の決定
自己破産が完了するまでの期間は、破産手続きの申立から免責許可の決定まで、最短で3ヶ月、長いと1年以上かかります。
各手順において、書類の不備があると手続きが上手くできず、自己破産完了までにさらに時間を要することがあります。
自己破産は2種類の手続きがあり、費用や期間が異なる
自己破産には、「同時廃止事件」と「管財事件」と呼ばれる2種類の手続きに分かれています。
それぞれの種類によって、かかる費用や自己破産が完了するまでの期間が異なるのです。それぞれの特徴を説明すると、次の通りです。
- 【内容】自己破産の申立をしたときに、本人に一定の財産(20万円以上の財産)がないと見なされるときに利用される手続き。
- 【費用】30万円
- 【完了までの期間】最短で3ヶ月、最長で半年
- 【内容】自己破産の申立をしたとき、本人に一定の財産(20万円以上の財産)があると見なされるときに利用される手続き。資産状況に応じて、「少額管財」と呼ばれる手続きに変わることもある
- 【費用】通常管財は70万円、少額管財は50万円
- 【完了までの期間】通常管財は最短で半年、最長で1年以上。少額管財は3ヶ月から6ヶ月の場合も
「同時廃止事件」は、本人に売却する財産がないため、比較的早く自己破産手続きが完了します。
一方で、「管財事件」は本人に売却する財産があることから、管財人と呼ばれる財産調査や換価を行う人物が選出され、財産価値の調査を行う必要があるのです。
そのため、自己破産手続きにかかる費用負担が大きく、完了までに時間がかかります。
自己破産手続きの完了までに必要な費用が払えないときには、事務所によっては分割払いに応じてくれることがあります。
もし分割払いも厳しいなら、各地にある「法テラス」という司法支援センターを利用すれば、弁護士費用を立て替えてくれるのです。立て替えてもらった費用は、後日支払う必要があります。
次の項目から、自己破産手続きの流れを7つ紹介していきます。
自己破産の流れ①弁護士へ依頼する
まず自己破産の流れは、弁護士などに自己破産手続きを依頼することから始まります。弁護士への依頼方法は、電話やメールでのやり取りを経て、依頼した弁護士に面談するかを決めます。
面談日には、自分の収入や借金額が確認できる資料を持っていく必要があるのです。そのため、借金額が分からないときには、お金を借りている相手が分かる契約書などを持っていきましょう。
弁護士との面談を通じて、自己破産による解決方法が良いと判断とされれば、着手金を支払います。そして、自己破産手続きの代理人としての契約を結びます。
弁護士との面談で、自己破産による解決方法が望ましくないと判断されたときには、任意整理や個人再生、特定調停による債務整理の解決方法が示されることがあります。
自己破産の流れ②取り立ての停止
自己破産手続きの依頼を受けた弁護士は、債務者にお金を貸している債権者に対して、「受任通知」を送る流れになります。
「受任通知」とは、弁護士が債務者の代理人として、債務整理の手続きを行う旨を債権者に伝える通知書のことです。
「受任通知」を送ることによって、債権者からの取り立てが停止します。
「受任通知」は、貸金業法にも定められている法的効力のあるものです。そのため、弁護士が「受任通知」を送ることで、債権者からの直接の取り立てが停止されるのです。
自己破産の流れ③書類の準備
弁護士が債権者に「受任通知」を送った後は、自己破産手続きに必要な書類を揃える流れになります。
自己破産手続きに必要な書類は最低でも9枚あり、手続きの種類や債務者の状況によっては、さらに必要枚数が増えるのです。必要な書類の例を挙げると、次の通りです。
- 【自己破産申立書】自分が申立する裁判所で受け取れる。
- 【陳述書】自分が申立する裁判所で受け取れる。自己破産をするに至った事情や反省文を書く。
- 【住民票・戸籍謄本】3ヶ月以内のもの。家族がいる場合は戸籍謄本も必要。本籍地が遠方の場合は郵送にて申請する必要がある
- 【収入が分かる資料】2、3ヶ月分の給料明細書のコピーが必要。ない場合は、再発行や通帳に振り込まれている金額から収入を把握する。
- 【預金通帳のコピー】すべての預金通帳の1、2年分のコピーが必要。
- 【源泉徴収票】ない場合は、市区町村役場で課税証明書をもらう。収入がないときには非課税証明書が必要。
- 【不動産登記簿謄本】法務局で受け取れる。実家や持ち家に住んでいる場合に必要。
- 【不動産鑑定書】実家や持ち家に住んでいる場合、家の資産価値が分かる不動産鑑定書も必要になる。
- 【賃貸借契約書のコピー】アパートやマンションに住んでいるときに必要。
- 【退職金が分かる証明書】退職していない場合は退職金見込み証明書、退職した場合は受け取ったことを証明する証明書が必要。
- 【車に関する書類】車検証のコピーや、持っている車の価値が分かる査定書が必要。
他にも、積立保険を契約しているなら解約した時にもらえる解約返戻金が分かる資料や、生活保護を受けている場合は生活保護受給証明書が必要です。
必要書類がたくさんあるため、まず何から用意すればいいのか混乱することでしょう。そのため、1人で書類を揃えるのではなく、必ず弁護士に相談しながら書類を準備するようにしましょう。
弁護士と相談しながら準備すれば、書類の書き方やポイントなども教えてくれるので、落ち着いて行動できます。
自己破産の流れ④自己破産の申立と破産審尋
必要な書類を揃えたら、自己破産の申立をする流れになります。申立は、自分が住んでいる地域を管轄している地方裁判所に、揃えた書類を提出することで申立ができます。
なお書類の提出は、弁護士に依頼して提出する方法や自分で提出する方法、どちらでも可能です。書類を提出する時には、1,500円分の収入印紙が必要なのでお金を用意しておきましょう。
申立をして1ヶ月後に、裁判所から呼び出しがあり、「破産審尋」と呼ばれる手続きが開始します。
「破産審尋」とは、担当する裁判官に破産の申立をするに至った事情などを、書面または口頭で答える手続きのことです。
提出した書類をもとに、裁判官から借金をした理由や返済できなくなった理由などの質問がされます。
おそらく、スムーズに答えることは難しいかと思います。そのため、事前に弁護士から「破産審尋」の受け答え方などを教えてもらったほうがいいでしょう。
自己破産の流れ⑤破産手続き開始の決定
「破産審尋」を受けてから約1週間後、裁判所から破産手続きの開始の決定が通知される流れになります。
この時点で破産手続き開始の決定がなされますが、まだ借金の返済は免除されていません。免除されるためには、次の手順である「免責審尋」を受ける必要があるのです。
ちなみに、破産手続きの開始の決定時に、本人に一定の財産がなければ「同時廃止事件」、一定の財産があれば「管財事件」かのどちらかが決定されます。
自己破産の流れ⑥免責審尋
破産手続き開始の決定が通知された後には、裁判所にて「免責審尋」を受ける流れになります。「免責審尋」とは、裁判官が破産によって債務者の借金を免除させるかどうかを判断する面談のことです。
「免責審尋」では、債務者の自己破産についての確認を行います。もし、自己破産に関する内容の誤りや不明点があるなら、裁判官から質問を受けることがあります。
あくまで形式的な形で面談は進められていきますが、質問の受け答え方などが心配なら、事前に弁護士に相談しておくと安心です。
自己破産の流れ⑦免責許可の決定
「免責審尋」を受けてから2週間後、裁判所から免責許可の決定がなされたら、債務者は全ての債務が免除される流れになります。これで、借金の負担から解放されることになるのです。
ただし、これまでの自己破産手続きの流れで、財産隠しや虚偽発言などの違反行為や、書類の誤りがあると免責許可の決定はされません。
ちなみに、免責許可の決定がなされた段階で官報に破産者の情報が掲載されます。官報は一般の人がほとんど読む機会はありませんので、それほど影響はありません。
官報とは、法律や政令の制定や改正、破産・相続などの内容が掲載されている、国が発行している情報誌です。紙媒体だけでなく、「インターネット版官報」もあります。
自己破産手続きをスムーズに終わらせたいなら、弁護士に相談を
ここまで、自己破産手続きの流れを説明していきました。必要な書類や手続がたくさんあることから、自力で自己破産手続きをスムーズに終わらせることは難しいです。
そこで、自己破産手続きをスムーズに終わらせたいなら、必ず弁護士に相談しましょう。自己破産の相談をするなら、「東京ロータス事務所」や「東京ミネルヴァ法律事務所」などをおすすめします。
【オススメまとめ】借金・債務整理を相談できる弁護士事務所紹介
ちなみに、司法書士にも相談はできますが、債務者の代理人になることが認められていないことから、申立や裁判官とのやり取りを自分でやる必要があるのです。
一方で、弁護士は何も制限なく対応可能なので、申立や裁判官とのやり取りなどを行ってくれるので、複雑な手続きをサポートしてくれます。
◆2020年6月 追記
2020年6月24日、「東京ミネルヴァ法律事務所」は、裁判所より破産手続きの開始決定を受けました。
よって現在、「東京ミネルヴァ法律事務所」に相談を行うことはできません。
まとめ
ここまで、自己破産手続きの流れに関して解説していきました。紹介した手順をおさらいすると、次の通りです。
- 弁護士へ依頼する
- 「受任通知」によって債権者からの取り立てが停止する
- 最低でも9枚の必要書類を準備する
- 自己破産の申立をし、「破産審尋」で裁判官からの質問に答える
- 「破産審尋」から1週間後、破産手続きの開始の決定が通知される
- 「免責審尋」にて、破産によって借金を免除させるか最終確認を行う
- 「免責審尋」から2週間後、免責許可の決定がなされ借金は免除
自己破産手続きは最短で3ヶ月、最長で1年以上かかります。またそろえる書類が多く、手続きも複雑なため、苦労することもあるでしょう。
そのため自己破産手続きをする時には、必ず弁護士に相談して、書類の不備がないよう確実に行うようにしましょう。
この記事を参考にして、自己破産手続きをスムーズに行えるよう願っています。