多くの主婦やサラリーマンに副業として人気のFXですが、負債が重なり自己破産に追い込まれるケースも数多く存在します。
ここで問題になるのが「FXで作ってしまった借金は自己破産申請できるのか」、「そもそも自己破産とはなんなのか」、ですよね。
この記事ではFXで借金を作ってしまい自己破産を考えている人のために、自己破産について詳しくまとめているので、じっくり読み進めてください。
自己破産とは何か
自己破産は借金整理の方法の1つです。裁判所に「破産申請」をして、裁判所から許可をもらうことで、非免責債権を除く全ての借金をゼロにすることができます。
非免責債権:租税などの公的な税金や罰金、養育費などの扶養義務者として負担すべき費用などのこと
返済しきれないほどの借金を抱えてしまった際、自己破産の申請をすることには以下のようなメリットとデメリットが存在します。
- 全ての債務の支払い義務が免除(非免責債権以外)
- 手続き開始後は債権者が強制執行(給料差し押さえなど)ができなくなる
- 20万円以下の価値のものは手元に残せる
- 「ブラックリスト」に登録され、5~10年借り入れができなくなったり、住宅ローンが組めなくなる
- 「官報」という国発行の機関紙に住所と名前が公開される
- 免責決定を受けるまで士業や警備員など一部つけない職業がある
自己破産について、最低限上記のことはしっかりと理解した上で読み進めていってください。
自己破産と認められるのに必要な条件
自己破産と認められるための条件ですが、自己破産は借金を作った原因に関係なく借金が帳消しになるという便利なものではありません。
自己破産と認められるには具体的に以下の2つの条件を満たすことが必要です。
- 借金がこれ以上支払い困難だと裁判所に認められた場合
- 借金をした経緯が正当な場合
1. 借金がこれ以上支払い困難だと裁判所に認められた場合
裁判所によって、「安定した収入があるため債務者自身の力で完済が可能である」と判断された場合は、自己破産が認められません。
一般的に、裁判所によって支払い困難だと認められるのは、債務者自身の申請時点の収入を元に、申請以後3年以内に支払いが完了できない場合のことを指します。
2. 借金をした経緯が正当な場合
ここでいう「正当」の定義とは、自己破産に関連する法律「破産法」によって定められている、「免責不許可事由に当てはまらない」経緯ということです。
免責不許可事由とは・・・「破産法」によって定められている借金の支払い免除がされない場合の理由のこと。
「免責不許可事由」項目に該当するものが1つでもある場合、自己破産申請は認められません。
FXで自己破産は認められるのか
肝心のFXによる借金での自己破産が法律上認められるかどうかですが、結論から先に言えば、FXで作った借金は自己破産申請をすることで帳消しにできます。
原則的に、FXで作った借金は以下の破産法第252条第1項4号の免責不許可事由に当てはまるため、自己破産申請の対象にならないです。
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」
ただし、自己破産の申請時には「裁量免責」といって、裁判所が自己破産申請者の誠意を考慮して申請を認めても良いという法律があります。
ほとんどの場合はこの「裁量免責」によって自己破産の申請が認められるので、FXで作った借金は帳消しにすることが可能というわけです。
自己破産申請は「裁量免責」が重要
上述したように、FXによる自己破産申請の際に重要になってくるのが、「裁量免責」を受けられるかどうかです。
「裁量免責」を受けられるかどうかは、すべて裁判所の判断に委ねられており、具体的には以下の4つの考慮材料を元に判断をしています。
- 免責不許可事由の内容や程度
- しっかり反省しているか
- 経済的な更生が望めるか
- 手続きに積極的に協力しているか
自己破産を申請する人の中には少なからず前述した「免責不許可事由」に当てはまる人がいますが、最終的に「裁量免責」を受けている人がほとんどです。
だだし、この後に述べる例に該当している場合は、裁量免責を受けられない可能性が高いです。
FXで自己破産できない場合① 過去に自己破産をしている
過去に自己破産をしたことがある場合、重要になるのが7年という数字です。
申立て前7年以内に自己破産をしている場合は、基本的に裁量免責は認められません。
また、7年以上前の自己破産に関しても、厳密には免責不許可事由にはなりませんが、2度目の自己破産について、裁判官の目は厳しくなります。
裁判所が自己破産で債務者の借金を帳消しにするのは、債務者の生活立て直しを手助けをするためだからです。
FXで自己破産できない場合② 手続き中に投資を行う
自己破産申請を開始後に手に入れた給料などは、「新得財産」と呼ばれ、自由に利用できます。
ただし、その新得財産をまたFXにつぎ込むようなことをすれば、自己破産後もFXでまた借金をしてしまうのではないかと疑われてしまいます。
FXによる借金で自己破産申請をする場合、裁判所は、免責不許可事由や債務者財産の調査を行う「破産管財人」を選任します。
そのため基本的には一切の投資行為は行えないのですが、万が一、隠れて投資行為をした場合は重大なペナルティーとなり「裁量免責」は受けられません。
FXで自己破産できない場合③ 複数の免責不許可事由がある
内容の重さにかかわらず、免責不許可事由が複数あれば、裁量免責を受けられる可能性が低くなります。
免責不許可事由の中には無自覚のうちにやってしまいがちな行為があるので、頭に入れておいてください。
FXよる借金を自己破産で帳消しにしようと考えている人が無自覚でやってしまいがちな免責不許可事由は以下の3つです。
- 偏頗弁済(へんぱべんさい)
- 詐害行為(さがいこうい)
- 財産隠し
1. 偏頗弁済(へんぱべんさい)
全ての借金を返済できない状態なのに、特定の借金だけ返済することを指します。
例えば、友人から借りたお金だけでも先に返そうとして、実際に自己破産申請の最中に行ってしまうとこの「偏頗弁済」にあたります。
2. 詐害行為(さがいこうい)
FXなどの投資行為による借金を穴埋めするため、財産を安く売る、または譲ることを指します。
3. 財産隠し
預金残高を他人の口座に送金したり、不動産の名義を他人に変える・解約払戻金のある保険の名義人を他人に変えたりすることを指します。
これらの行為は無自覚で行ってしまいがちな上に、行ってしまった場合、裁量免責を受けることができなくなるため特に注意が必要です。
FXで自己破産ができなかった場合の対処法 「個人再生」
万が一、FXで作ってしまった借金に対して自己破産の申請が認められなかった場合は、「個人再生」を利用するという方法があります。
「個人再生」とは、借金を作った理由に関係なく、最大で借金を元の額の5分の1にまで減らすことができる方法です。
また、自己破産の場合、一定の価値のある財産は処分の対象になりますが、個人再生の場合は生命保険や車などの資産を持ったまま手続きができます。
ただし、個人再生は返済を継続できると判断されるような安定した収入源がなければ手続きができません。
FXで自己破産する際は弁護士に相談
上述してきた自己破産に関する申請は、一つ一つの手続きが複雑である上に、自己破産に対する知識がなければ、免責不許可事由に触れてしまう可能性もあります。
自己破産に関する多くのリスクやデメリットは、弁護士によるサポートで避けることが可能になります。
自己破産を考える場合、まずは落ち着いて、専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士法人・泉総合法律事務所は、FXや株式投資などの投資が原因による自己破産申請の手助けを数多くこなしてきた弁護士事務所ですので、是非相談をしてみてください。
FXで作った借金を自己破産する まとめ
FXで借金を作ってしまった場合でも、自己破産をすることは可能です。まずは慌てずに弁護士事務所に相談をしましょう。
自己破産できるかは「裁量免責」を受けられるかどうか次第です。自己破産の申請をする際は、「嘘偽りなく」「誠心誠意」手続きに臨みましょう。
そしてもっとも重要なのは、借金は、しっかりと債務整理をして自己破産せずにコツコツ返すのが一番ということです。
自己破産とは債務者の生活立て直しのために行われる最後の手段です。「借金をしても最悪自己破産すればいいや」、という甘い考えは捨ててくださいね。