債務整理について調べていると、債務と負債という言葉がよくでてきますよね。似たような意味ですが、違うものを指す場合があるので、トラブルを防ぐためにもしっかりと意味を理解しておきたいものです。
この記事では、債務と負債について意味の違いや同じ意味になる場合はどんな時か、借金との関係などについて解説しているので、参考にしてみてください。
負債とは違うもの!債務とは
債務(さいむ)とは、「誰かに対して何らかの行動をしなければいけない義務を負うこと」です。たとえば、スーパーでアルバイトをするときには、雇用契約を結びますが、雇用契約も債務について定めているものです。
スーパーは労働者に対して、労働の対価となる給料を支払う義務があります。これはスーパー側の債務です。労働者はスーパーに対して、給料に見合った労働力を提供する義務があります。これは労働者側の債務です。
この例で、給料(=物)と労働力(=行為)が債務になっているように、債務の内容は「物の受け渡し」を義務付ける場合、もしくは、「なんらかの行為」を義務付ける場合の2種類があります。
「物の受け渡し」を義務付けるものを「与える債務」、「なんらかの行為」を義務付けるものを「為(な)す債務」と呼ぶので、覚えておきましょう。
債務と混同しやすい負債とは
負債とは、「企業が抱えている返済しなければいけないお金」のことを意味します。将来返済しなければいけなくなる可能性があるお金に関しては、全額ではなく、合理的に数値化できるものだけを負債として扱います。
会社の資産は、純資産と負債の2つに分かれます。純資産は株主の出資や補助金などで、返済する必要のないお金のことです。対して、負債は会社が何らかの形で借金をして得たお金のことです。
借金と負債の違いについては、記事の後半で詳しく解説しています。
債務と負債の違い①使われる分野の違い
債務と負債の意味について紹介してきましたが、似たような意味なので違いがよく分からないかと思います。ここでは債務と負債が使われる分野について紹介していきます。
債務は、法律用語として使われるのに対して、負債は会計用語として使われているんです。場合によっては同じものを指すこともあります。
ただ、法律で定められていない(債務ではない)けれども、会計上は返済しなければいけないお金(負債)として扱われるものもあるので、混同しないように注意してください。
債務ではない負債の代表的なものが、引当金です。引当金とは、将来に高い確率で支出するものや予想される損失への備えのために計上するお金のこと。
債務と負債の違い②言葉の意味の違い
債務は「誰かに対してなにかをしなければならない義務」なのに対して、負債は、「支払わなければならないお金」のことを指します。
債務は物の受け渡しや行為をする義務を負うことであって、お金自体を指すわけではありません。また、負債は返済しなければいけないお金のことなので、お金以外の物や行為の義務を負うというニュアンスはありません。
しかし、債務整理における債務は「お金を支払う義務」のことを言うので、負債と同じ意味になります。記事の後半で、債務整理について紹介していきます。
債務や負債と一緒に知っておきたい債権とは
債務整理の話題に入る前に、もう一つ知っておかなければいけない言葉があります。債務と対になる言葉として「債権」という言葉があり、債務整理では多用されるのでここで覚えておきましょう。
債権とは「債務を負っている人(債務者)に債務を実行するように主張できる権利」のことです。債務を負っている人を債務者、債権を持っている人を債権者と呼びます。
債権者は債務者に義務を果たすように主張できる権利を持っているので、債務者よりも法律上の立場が強いのが特徴です。
債務整理とは
債務整理とは、抱えきれなくなってしまった債務(負債)を減らす手続きのことです。債務整理には、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4種類があります。
方法が違うだけでなく、それぞれ使える状況や使った後にどうなるのかが変わってきます。
債務を減らす代わりにブラックリスト入りしたり、自宅を失うケースもあるので、デメリットも考慮したうえで方法を選びましょう。債務整理の種類については後ほど詳しく解説しています。
債務整理でいう債務は負債の意味もありますが、借金という意味もあります。次章で債務・負債・借金の関係について紹介していきます。
債務と負債と借金の関係
ここでは債務・負債・借金の違いについて紹介していきます。債務整理における債務とは、「返済しなければいけないお金」のことで、状況によって負債と借金のどちらかを指します。
- 負債…企業が抱えている返済しなければいけないお金
- 借金…個人が抱えている返済しなければいけないお金
債務を抱えているのが企業なのか個人なのかによって、負債なのか借金なのかが決まるので、覚えておきましょう。
負債を減らす債務整理には4つの種類がある
前述したように債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つの種類があります。ここではそれぞれの方法や、デメリットについて書いていきます。
任意整理
任意整理は、弁護士や司法書士に依頼する方法です。依頼された弁護士などが債権者に債務を減らすように直接交渉してくれます。裁判所を通さないので、法律上の制限がありません。
ただ、任意整理をするとブラックリストに登録されます。負債や借金を完済してから、5年間はブラックリストに掲載されることになるので、クレジットでの支払いやローンを組むことができなくなります。
特定調停
特定調停は、簡易裁判所に申し立てをする方法です。調停委員が立ち会うなかで、債務を減らしてもらうよう債権者と話し合います。債務者自身が交渉する必要がありますが、弁護士費用がかからないのが特徴です。
ただし、特定調停は強制力がないので、裁判所に申し立てをしても債権者が応じてくれない場合があります。
個人再生
個人再生は、弁護士に依頼したうえで家庭裁判所に申し立てを行うことで、債務を最大で10分の1にすることができる方法です。強制力が強く、個人再生をした時点で返済の督促が届かなくなるのが特徴です。
ただし、個人再生をすると5~10年ブラックリストに載るので、ローンを組むことができなくなります。
自己破産
自己破産は、弁護士に依頼したうえで家庭裁判所に申し立てを行い、債務を全額免除してもらう方法です。ただし、5~7年ブラックリストに載りますし、自宅や車などを手放す必要があります。
悩んでいるなら弁護士事務所に相談しよう
借金や負債で悩んでいるのなら、まずは弁護士事務所や司法書士事務所に相談に行きましょう。無料相談も開催されていますし、話をするだけでも不安は和らぎますよ。
債務整理は状況に応じて細かい規定があるので、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのが一番確実です。
専門家はこれまでもたくさんのケースを経験してきているので、あなたに合った最適の方法を提案してくれます。
自分一人で債務整理をなんとかしようとするのはとても大変なので、専門家に相談してスムーズに解決してもらいましょう。
まとめ
債務と負債の意味の違いや、債務整理について紹介してきました。似たような言葉ですが、基本的には違うものを指す言葉なので、混同しないように気を付けましょう。
債務整理では債務と負債という言葉が良く出てくるので、意味をしっかり把握していないとトラブルに発展することもあります。
ぜひこの記事を参考にして、債務と負債の違いを正しく理解し、トラブルを未然に防いてくださいね。