【法律初心者必見】改正民法の債務不履行に関する法律を解説

2020年4月1日に施行される改正民法。その中には、債務不履行に関する民法も含まれています。けれど、法律ってなんだか難しい・・・と敬遠しがちですよね。

債務不履行の問題は、お金の貸し借りなどの債務者・債権者の関係になった時点で誰にでも起こり得る問題です。法律を知らないから債務不履行になっても関係ない、という訳にはいきません。

なので、この記事では債務者・債権者の立場の人で債務不履行に関する法律を知らない、という人のために改正民法の債務不履行に関する法律をわかりやすく解説しています。

債務不履行の3つの種類や民法に記されている言葉の解説もしているので、債務不履行について理解を深めたい人やは参考にしてみて下さい。

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2198225?title=%E6%B0%91%E6%B3%95

民法に記されている帰責事由とは?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1709664?title=%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E3%82%92%E8%83%8C%E8%B2%A0%E3%81%86

民法には「責めに帰すべき事由」という言葉が出てきます。この記事でも出てくる言葉なので、始めに覚えておきたい言葉として「責めに帰すべき事由」について解説していきましょう。

「責めに帰すべき事由」とは、責任を負うべき理由や落ち度、過失のことをいいます。「帰責事由」ともいいます。

例えば、Aさんが借りたものを返しに行く途中に、借りたものを誤って落として壊してしまった場合、Aさんの不注意となるのでAさんに過失がある、帰責事由があるということです。

Aさんが借りたものを返しに行く途中で借りたものを窃盗されてしまった場合、Aさんには過失はないので、帰責事由はないということです。

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民法における3種類の債務不履行【履行遅滞】

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1845402?title=%E6%99%82%E3%81%AF%E9%87%91%E3%81%AA%E3%82%8A

履行可能なのに、債務者の責めに帰すべき事由により債務が履行されないことを履行遅滞といいます。例えば、銀行から借りた借金を契約上の返済期日までに返さなかった場合は履行遅滞となります。

では、銀行からの借金の様に契約上で返済期日が決まっていれば、返済期日を過ぎた時点で履行遅滞となりますが、口約束で借りた借金の様に契約もなければ返済期間に決まりがない場合はどうなるのでしょう?

期間の定めのない債務の場合は、債権者から履行の請求を受けた時から履行遅滞となります。つまり、口約束で借りた借金の場合は、貸した側が「返してくれ!」と借金の返済を請求してきた時点で履行遅滞となります。

民法における3種類の債務不履行【履行不能】

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1528733?title=%E5%AE%B6%E3%82%92%E5%A3%B2%E3%82%8B

契約時に履行可能であった債務の履行が、債務者の責めに帰すべき事由によって履行できなくなったことを履行不能といいます。

例えば、住宅の売買契約を結んだとしましょう。住宅を売った人(債務者)は、住宅を買った人(債権者)に対して定められた期間までに売買契約を結んだ住宅を引き渡さなければなりません。

ですが、引き渡すはずの住宅が、債務者の不注意により火事をおこして全焼してしまい、定められた期間までに住宅を引き渡すことができなくなった場合は履行不能となります。

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民法における3種類の債務不履行【不完全履行】

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/660455?title=%E9%87%91%E9%8A%AD%E3%81%AE%E5%8F%96%E5%BC%95%EF%BC%88%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E6%89%8B%EF%BC%89

債務者が債権者に対して、債務の本来の目的に従わない債務の履行のことを不完全履行といいます。

例えば、Aさんは今日中に100万円をBさんに返済する、という債務があったとしましょう。しかし、Aさんは今日一日で80万円しかBさんに返済することができませんでした。

80万円の返済は債務の履行をしたことになりますが、本来の債務の履行は「今日中に100万円の返済」です。債務の履行はしたけど、本来の債務の履行ではない不完全な債務の履行だったので不完全履行となります。

民法では債務不履行をすると債権者は何ができる?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1023840?title=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%AB%98%E7%AD%89%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%802

前の項目では、民法における3種類の債務不履行について解説しましたが、ここでは債務不履行をした場合、民法では債権者が債務者に対して何ができるのかを紹介します。

一つは、債権者は債務者に対して損害賠償請求を行うことができます。もう一つは、債権者は債務者に対して契約の解除ができるというものです。

どちらも債務者にとっては不利な内容ですが、債務とは法律上で認められた「約束を果たす義務」です。約束を破ってしまったのですから、それ相応の罰則があっても仕方のない事ですね。

ここまでが、債務不履行についての解説になります。次の項目からは、2020年4月1日に施行される債務不履行に関する改正民法の改正前と改正後の違いについて解説していきます。

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現行の民法415条(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

引用:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#BI

現行の条文では、履行不能の場合のみ損害賠償を認めるには債務者の落ち度を考慮して履行遅滞・不完全履行の場合は債務者の落ち度は考慮しませんよという解釈がされてきました。

このまでのまとめ

現行の条文では、損害賠償を認めるためにどのような条件が必要なのか?

  • 履行不能の場合・・・債務者の落ち度を考慮します
  • 履行遅滞・不完全履行の場合・・・債務者の落ち度は考慮しません

しかし、実際の裁判の判決では履行遅滞・不完全履行であっても「損害賠償を認めるためには債務者の落ち度を考慮しましたよ」という内容になっています。

現行の条文では、条文の解釈と裁判の判決では食い違いがでてしまう、つまり、人によって解釈の仕方が変わってしまうほどわかりにくい条文だということです。

そういった意見があったため、改正民法ではわかりやすさを重視した条文に変わりました。次の項目では、改正した条文について解説していきます。

民法改正ではわかりやすさを重視

第四百十五条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

引用:http://www.moj.go.jp/content/001242222.pdf

改正された条文では、履行遅滞・不完全履行・履行不能のすべてで、損害賠償を認めるには債務者の落ち度を考慮しますよということが明記されました。

「ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」という一文のところですね。

同時に、この一文には「違法な契約や取引は、債務者の落ち度として認めませんよ」ということも明記しています。

改正された条文では、条文の解釈と裁判の判決での食い違いがおこらないよう、どのような場合に債務者の落ち度を考慮すべきかを明記する改善がされたわけです。

現行の民法541条・543条(債務不履行による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる

第五百四十三条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#BI

現行の条文では、543条に履行不能による契約の解除を認める場合には、債務者の落ち度を考慮しますよということが記されています。

一方、541条には履行遅滞・不完全履行による契約の解除を認めるには債務者の落ち度は考慮しませんよということが記されています。

このまでのまとめ

現行の条文では、契約の解除を認めるためにどのような条件が必要なのか?

  • 履行不能の場合・・・債務者の落ち度を考慮します
  • 履行遅滞・不完全履行の場合・・・債務者の落ち度は考慮しません

債務者の落ち度の考慮という点で、前の項目で解説した現行の415条と一緒ですね。つまり、現行の条文では損害賠償と契約の解除は一緒の基準で判断しているということになります。

2020年4月1日から施行される改正民法では、543条が削除されます。なぜ削除されることになったのか、次の項目で解説します。

民法改正では民法543条の削除

415条の場合は「損害賠償」という問題に対しての規定であり、541条・543条は「契約の解除」という問題に対しての規定になります。

契約の解除の目的は、「契約からの解放と原状回復」です。契約からの解放に債務者の落ち度は必要な要件ではないと判断され、543条は削除される流れとなりました。

現行では、損害賠償と契約の解除を一緒の基準で判断していたのに対し、改正民法では損害賠償と契約の解除をそれぞれ別の基準で判断することに考えを改めたのです。

ここまでのまとめ

改正民法で、契約の解除に関する民法はどのように変わったのか?

  • 現行の民法・・・損害倍書と契約の解除は一緒の基準で判断
  • 改正民法・・・損害賠償と契約の解除はそれぞれ別の問題として判断

今までは、契約の解除に関する裁判では債務者の落ち度が裁判の判断材料の一つとされてきましたが、民法の改正により裁判の判断材料が変わるわけなので、裁判における影響はあるでしょう。

まとめ

2020年4月1日から施行される改正民法。債務不履行に関する民法も改正される条文があります。

債務不履行には「履行遅滞・履行不能・不完全履行」の3つの種類があり、損害賠償と契約の解除に関する民法が改正されました。

改正後の415条では条文の解釈がわかりやすくなり、改正後の541条・543条では543条が削除といった流れですね。

法令が変われば裁判における判断材料も変わってきます。法令を正しく理解して債務問題である債務不履行に向き合っていきたいものですね。