あなたは「破産」という言葉を知っていますか?恐らく多くの人が知っているでしょう。
破産を行うと借金を返済する必要がなくなりますが、実は破産を認められないケースが存在するのです。この記事では、以下について説明していきます。
- 破産が認められないとはどういうことか
- 破産が認められない場合
破産を行うことを考えている方、破産についいて詳しく知りたい方はぜひこの記事を読んでみてください。
破産できず債務が免責されない場合がある
破産手続きを行っても必ずしも債務が免責される(借金の支払い義務がなくなる)わけではありません。債務の免責を受けるには、裁判所から免責の許可を得る必要があります。
破産は債権者の同意なしに債務をなくす手続きであり、非常に強力です。そのため、借金をつくった理由などによっては免責を認めるべきではないと考えられています。
どのような場合に借金の免責を認めないのかは破産法で規定されています。
裁判所の統計調査によると免責不許可(破産が認められない)となる割合はおよそ2%ほどです。
破産できず債務が免責されない場合
どういった時に破産ができないのかは破産法252条第一項に記載されていますので、一緒に見ていきましょう。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。出典:破産法 第252条 第1項
これを読んだだけでは理解することはできないと思うので、それぞれ説明していきます。
財産隠しを行うと破産ができず債務が免責されない
破産を行うには、裁判所が定める一定以上の財産は売却し、代金を債権者の配当にまわす必要があります。
しかし、まれに破産を行う際に財産を手元に残しておきたいと考え、財産を隠してしまう人がいます。
例を挙げると、預貯金を親族の口座に移したり、車を隠し持っていたりすることです。
このような財産隠しは免責不許可事由に当たる行為となるため、免責が認められず破産することができなくなります。
一部の債権者のみに返済すると破産ができず債務が免責されない
破産をする際には一部の債権者にのみ債務の支払いを行うことも禁止されています。
車を残すために自動車ローンのみの支払いを行うことや、保証人に迷惑をかけないために保証人がついている債務のみ支払おうとすることは許されていません。
一部の債権者にだけ債務を支払うことは、他の債権者に対して不公平になってしまうので認められていないのです。このような行為を行うと破産が認められなくなってしまいます。
借金の原因が浪費・賭博だと破産ができず債務が免責されない
浪費やギャンブルが借金の原因である場合は免責が認められません。
支払いができないことが分かっていながら、高額な買い物をするなどの行為や、借金の返済をせずにパチンコや競馬にお金をつぎ込むような行為を行ったなどの場合です。
浪費やギャンブルのためにした借金が免責されたら、債権者が納得できるはずがありませんからね。
後先考えずに、浪費やギャンブルにお金を費やすのはやめておきましょう。
破産すると分かりつつの借金は破産できず債務が免責されない
破産をして免責が認められると、債務の支払い義務がなくなります。どれだけ借金をしていたとしても一切の支払いを免除されるということです。
まれに、その仕組みを利用して破産直前に借金をしようと考える人がいます。そのようなことをされたら債権者が破産することに納得できるはずがありません。
もちろん、そのような行為が許されるはずはなく免責不許可となります。破産を行うつもりで借入を行うのは絶対にやめましょう。
裁判所の調査の拒否や嘘をつくと債務が免責されない
破産の手続きの中で、裁判所に行きいくつかの質問に答える審尋(しんじん)があります。審尋では10分~15分ほどで以下のような質問を受けます。
- 支払い不可能に陥った理由や状況
- 債権者数
- 借金の総額
この審尋を拒否したり、嘘の申告を行ってしまうと不誠実な対応を取られたと判断され、破産を認められなくなってしまいます。
破産を行うのであれば審尋を拒否したり、嘘の申告をするのは絶対にやめましょう。
破産を行ってから7年以内の破産はできない
破産を行うことができるのは1度きりではなく、何度も行うことができます。破産を行うにあたり回数制限は特に設けられていません。
しかし、短期間に何度も破産を繰り返すことは、債権者からすれば迷惑な行為でしかありません。
そのため、1度破産を行うと7年以内に破産を行うことができないと規定されています。
また、前回と同じような理由で破産を行った場合は、前回の反省を活かせていないと判断され認められない可能性が高くなります。
免責不許可事由に該当しても裁量免責で破産が可能になる
今まで説明した免責不許可事由に当てはまっていても、裁量免責によって破産が認められるケースがあります。裁量免責については破産法252条第2項に記されています。
前項の規定にかかわらず,同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。
出典:破産法 第252条 第2項
つまり、免責不許可事由に該当する行為を行ったとしても、裁判所が認めれば自己破産が可能になるということです。
免責不許可事由となっても破産管財人の指導のもとで反省文を書いたり、数か月間、節約をしながら家計簿をつけたりすることで、裁量免責を貰えることがあります。
そのため、免責不許可事由となってしまっても、裁判所が特別に破産を許可することは意外にも多くあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最後にこれまでの内容をまとめておさらいしましょう。
- 破産法で規定された免責不許可事由に該当すると破産が認められない
- 免責不許可事由に該当しても裁量免責により破産を認められることがある
また、破産法で規定されている免責不許可事由に該当する行為は以下の通りです。
- 財産隠しを行うと破産が認められない
- 一部の債権者にのみ返済を行うと破産が認められない
- 借金の原因が浪費・賭博だと破産を認められない
- 裁判所の調査を拒否したり、虚偽の申告を行うと破産が認められなくなる
- 破産をおこなってから7年以内の破産は認められない
破産を行おうと思っている方は、認められない可能性があることに不安に感じているかもしれませんが、大抵の場合は破産することを認めてもらえます。
借金の理由が自分勝手なものであったり、破産をするにあたって不誠実な対応を取らなければ破産は認められるので安心してください。