「根保証」はよく見る言葉ですが、実は読み方が分からない…という人もいるのではないでしょうか?「根保証」は「ねほしょう」と読み、普通の保証よりも大きな責任が課せられる保証です。
そのため、安易な気持ちで契約すると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。トラブルに巻き込まれないようにするためにも、読み方だけではなく根保証の内容もしっかりと理解しておきましょう。
この記事では、根保証について連帯保証など関連用語との違いなどを分かりやすく解説していくので、参考にしてみてくださいね。
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読み方と併せて確認しよう!根保証の意味は?
根保証とは、保証する相手(債務者)が行う一定の取引において、現在から未来までに生じるすべての債務(借金)に責任を持つことです。
普通の保証であれば、債務者がしたひとつの借金に対して責任を取れば済みますが、根保証の場合は債務者が一度借金を返済して新たに借金をした場合、新たな借金の責任も取らなければいけません。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、後ほど具体例を交えながら分かりやすく解説していくので安心してください。
ここでは「根保証は責任がとても重たいんだ」ということだけ理解していただければ大丈夫です。
「保証」「連帯保証」「根保証」の読み方と関係
ここでは、「保証」「連帯保証」「根保証」の関係について解説していきます。それぞれ、「ほしょう」「れんたいほしょう」「ねほしょう」と読み、これら3つは、上記の図のような関係になっています。
根保証には、「保証の根保証」と「連帯保証の根保証」があるのです。これは後ほど解説するので、今の時点では「根保証は保証と連帯保証のどっちにも付けられるオプションみたいなもの」と思っていればOKです。
ちなみに、「保証」「連帯保証」「根保証」の関係を理解するポイントは2つあります。
- 「まず債務者に払ってもらって」と債権者に主張できるかどうか
- 保証する範囲に未来も含まれるのかどうか
これだけ見ても何のことか分からないかと思いますが、読み進めていくときにポイントを押さえていたほうが理解しやすいので、意識のすみにでも置いておいてください。
この先の説明をより分かりやすくするために、次章でひとつの具体例を挙げます。その具体例を使って「保証」と「連帯保証」の違いや「根保証」について解説していきますね。
覚えることが多くて大変ですが、順を追って少しずつ理解していきましょう。
根保証を具体例を交えて解説
ここからは、具体例を交えながら根保証について解説していきます。以下にひとつ具体例を挙げます。
あなたはAさんに「Bさんからお金を借りるから保証人になってくれ」と頼まれました。
契約では500万円まで保証の義務があるとされていますが、あなたは500万円なんて払うことができません。
当然Aさんの申し出を断ろうとしますが、Aさんは「100万円までしか借りないから大丈夫。お願い!」と言いました。
「100万円までなら最悪何とか払えるか…」と思ったあなたはAさんの保証人になることにしました。
次章以降はこの具体例を使いながら解説していくので、頭に入れておいてくださいね。Aさん、Bさん、あなたの立場を整理しておくと下のようになります。
- Aさん…債務者
- Bさん…債権者
- あなた…保証人
立場を理解しておくと話がより分かるので、今一度、頭の中を整理しておきましょう。次章では、「保証」と「連帯保証」の違いを解説していきます。
読み方と併せて「保証」「連帯保証」の違いも確認!
ここでは、「保証(ほしょう)」と「連帯保証(れんたいほしょう)」の違いを説明していきます。
前章の具体例を使いながら解説するので、思い出しながら読んでみてください。
保証とは
保証は、ひとつの取引に対して保証する(借金を返済する)責任を持つものです。債務者(借金をした人)が支払えない場合のみ、代わりに借金をした額を支払います。
債権者(お金を貸している人)から「返済してくれ」と言われても、「債務者に払ってもらってからにしてくれ」と主張することができます。
先ほどの例で言うとあなたがBさんに「お金を払ってくれ」と言われても、「まずはAさんに払ってもらってからにして」と言えるのです。
Aさんに不動産などの資産がある場合は、売却して借金を返済し、それでも残ってしまった金額を保証することになります。
連帯保証
連帯保証の場合は、債権者に「返済してくれ」と言われたら、すぐに対応しなくてはいけません。
もし仮に、債務者が不動産などの資産を持っていたとしても、債権者に返済しろと言われたら連帯保証人は払わなければいけないのです。
債務者が財産を持っていようがいまいが、返済しなかった場合、連帯保証人が借金を肩代わりすることになります。
「連帯保証は保証よりも条件が厳しく責任が重たい」という認識を持っておきましょう。
- 保証…債務者が払えない分を払えばよい
- 連帯保証…債務者が資産を持っていても、払わなかった場合は肩代わりする必要がある
次章では、「保証と根保証の違い」と「保証の根保証」について解説していきます。
保証の根保証とは?
まずは、「保証」と「根保証」の違いを紹介していきます。それぞれの用語の意味を確認していきましょう。ポイントになるのは、「保証する範囲」です。
「保証」と「根保証」の違い
保証は前章で紹介した内容に加えて、保証する範囲はひとつの債務だけです。具体例で言えば、Aさんが借りる100万円に関してだけ責任を負います。
それに対して、根保証の保証する範囲は未来に生じる債務も含むので、Aさんがした借金の全てにおいて責任を負わなくてはいけません。
つまり、Aさんが「やっぱり100万円では足りなかった」と言って、新たに100万円を借金した場合は、根保証人であるあなたは200万円の債務を支払う責任を負わなくてはいけなくなるのです。
その後にまたAさんが新たに借金をした場合も同様で、あなたが保証する責任をとらなくてはいけません。
- 保証…ひとつの債務だけでよい
- 根保証…未来に生じる債務も保証しなくてはいけない
保証の根保証
保証の根保証とは、債権者に「先に債務者から払ってもらって」と主張することができ、かつ、未来に生じる債務も保証の範囲とすることです。
具体例で言うと、あなたはBさんに対して「Aさんから先に払ってもらって」と主張することができますが、Aさんが新たに借金をした場合はその保証も責任を負わなければいけない、ということです。
「単なる保証よりも、保証する範囲が増える」と覚えておけば大丈夫です。
次章では、「連帯保証と根保証の違い」と「連帯保証の根保証」について解説していきます。原理は今紹介した「保証の根保証」と同じなので、ささっと覚えてしまいましょう。
連帯保証の根保証とは?
まずは、「連帯保証と根保証の違い」について解説していきます。
連帯保証と根保証の違い
連帯保証は、債権者に「債務者から先に払ってもらって」と主張することができません。ただ、保証する範囲は未来を含まないので、ひとつの債務を保証するだけで済みます。
根保証は先ほども紹介したように、未来に生じる債務についても保証する責任を持たなくてはいけません。
- 連帯保証…ひとつの債務だけでよい
- 根保証…未来に生じる債務も保証しなくてはいけない
連帯保証の根保証
連帯保証の根保証とは、債権者に対して「債務者から先に払ってもらって」と主張することができず、かつ、未来に生じる債務についても保証する責任を負わなくてはいけない、ということです。
具体例で言えば、あなたはBさんに対して「Aさんから先に払ってもらって」ということができないので、たとえAさんに資産があっても、支払いに応じない時はあなたが肩代わりする必要があります。
また、Aさんが「100万円だけじゃ足りない」と言って新たに100万円の借金をした場合は、あなたは200万円の保証をする必要があるのです。また、その後さらにAさんが借金した場合も同様です。
ここまで、「保証」「連帯保証」「根保証」の違いについて紹介してきましたが、根保証はさらに「包括根保証」と「限定根保証」の2つに分かれます。次章で詳しく解説していきます。
根保証は2種類ある!それぞれの読み方と意味を紹介!
ここでは、根保証の2種類について紹介していきます。根保証は、「金額や期間の限度を定めるかどうか」によって「包括根保証」と「限定根保証」の2つに分かれます。
包括根保証
「包括根保証」とは、「ほうかつねほしょう」と読み、保証する金額や期間の限度を定めない根保証のことです。
具体例で言えば、「500万円まで」と書いてあった制限がなくなるということです。あなたが包括根保証でAさんの保証人になった場合、Aさんがした借金の全てにおいて保証する責任を負うことになります。
金額や期間の限度がないので、いくら借金が高額になっても、いくら時間が経ってからAさんが借金をしたとしても、あなたが保証する責任を負わなければいけないのです。
ただ、実際は法律によって個人が包括根保証を請け負うことは禁止されています。包括根保証を使うことができるのは、法人などの団体である時だけです。
限定根保証
限定根保証は、「げんていねほしょう」と読み、保証する金額や期間を限定する根保証のことです。具体例に書いた「500万円まで」というのも限定根保証となります。
また、金額に加えて期間も制限をかけます。個人が保証人になる場合は、最大で5年までと法律(民法)で定められているんですよ。
包括根保証と限定根保証の解説をしました。個人が保証人になるときは、「包括根保証はできない」「最大で5年まで」と法律で定められていることも分かりましたね。
このほかにも、個人が多額の債務を負わないように法律で定められていることがいくつかあります。次章で詳しく解説していきますね。
個人が根保証人になるときは法律で保護される
前章でも少し触れましたが、個人が根保証人になるときは、莫大すぎる債務を抱え込まないように法律が保護してくれます。
個人が根保証人になるときの条件として、法律で定められていることは全部で3つあります。ひとつひとつ見ていきましょう。
限定根保証だけ
前章でも取り上げたように、個人が根保証人になるときは、限定根保証であることが条件となっています。包括根保証は、期間や金額に制限がないため、債務が膨れ上がってしまう可能性があります。
個人では大きな債務を抱え込むことはできないので、個人が根保証人になるときは限定根保証だけと定められているんです。
期間に関しては、個人が根保証人になるときは保証期間が最大で5年までと決められています。具体例で言えば、5年が経過してからAさんが借金をても、あなたにはその借金を保証する必要はないということです。
金額は契約を結ぶ時に定めることになります。保証人が負う債務の限度額を「極度額(きょくどがく)」と呼ぶので覚えておきましょう。
書面での通知
限定根保証では極度額や保証の期間が定められますが、これらは全て書面で通知しなければ、契約は無効になります。つまり、口約束での契約はできないということです。
具体例で言えば、あなたがAさんに「根保証人になるよ」と言ったとしても、書面を作らない限りあなたに保証する義務はないのです。
契約書に極度額がない場合は契約が無効となりますが、期間の定めがない場合は3年とされています。
特別理由による保証の終了
保証契約期間中に特別な出来事(元本確定事由)が起きたときは、保証人はそれ以降の保証義務は負わなくてよいという決まりがあります。元本確定事由とされるのは以下の3つです。
- 債務者か保証人のどちらかが裁判所から取り立てを受けたとき
- 債務者か保証人のどちらかが破産手続きをしたとき
- 債務者か保証人のどちらかが死亡したとき
具体例で言えば、Aさんかあなたが裁判所から取り立てを受けたり、破産手続きをしたり、死亡したりした場合は、あなたは保証義務を負わなくてよいということです。
読み方だけでなく根保証のリスクも知っておこう
ここまで、根保証について関連用語との違いや法律で決められていることについて解説してきました。根保証は責任が重く、多額の債務を背負うリスクがありましたね。
そうならないために法律でも個人を守る決め事がありますが、法律がすべて守ってくれるわけではありません。特に大きなリスクなのは、「債務者の借入額が分からない」ことです。
具体例で言えば、Aさんが実際にいくら借金をしているのかは、Aさんが話さない限り保証人であるあなたに情報が入ってきません。
「極度額は500万だけど100万円までしか借りない」とAさんが言っていても、契約上は500万円までできるし、あなたに伝える必要もないので、秘密裏に500万円借金していたなんてことも起きるのです。
「友人だから」と容易に保証人にならないほうが良い
ここまで述べてきた通り、根保証は責任が重いため、引き受けないほうが良いです。古い付き合いの友人から頼まれると断りにくいですが、人生が破綻してしまうかもしれないので、きっぱりと断りましょう。
もし、どうしても引き受けるのであれば、自分が抱えきれる程度の金額と期間を書面で提示して契約しましょう。
「契約上は○○までだけど、□□しか借りないから」という口約束は、実際の契約として効力がないので、絶対に書面を交わすようにしてください。
最後に自分の身を守れるのは、あなた自身だけです。世知辛いと感じるかもしれませんが、契約は「信用や感情」ではなく、「法と書面」で行うようにしましょう。
根保証の読み方 まとめ
根保証について、それぞれの関連用語の読み方と関係性、根保証のリスクについて紹介してきました。
根保証のリスクはとても大きいので、読み方だけでなくしっかりと意味を理解しておかないと、多額の借金を抱えてしまう可能性もあります。
実際に「友人の頼みだから」と保証人になって、破産してしまった人もたくさんいるのです。あなたはそうならないように、きっぱりと断るか、自分が背負いきれる範囲を書面で契約するようにしてください。