この記事では、保証人と連帯保証人の違いを分かりやすく解説していきます。
お金を借りる時や、部屋を借りる時などに求められる事の多い保証人。名前の通り、契約者に何かあった時に保証するって事はなんとなくイメージ出来ますが、具体的には一体何をするのでしょうか?
この記事を読んでいただければ、保証人と連帯保証人の違いはもちろん、もしこれらになって欲しいと頼まれた時の判断基準も手に入れる事が出来るでしょう。
(トップ画像出典:https://www.pakutaso.com/20170424109post-11189.html)
保証人と連帯保証人に違いはあるのか?
先ず結論から言いますと、保証人と連帯保証人には大きな違いがあります。
借金をした本人の事を「主債務者」と言いますが、この主債務者を保証するという点では保証人も連帯保証人も同じです。
ですが保証人と連帯保証人では保証する範囲、つまり金額が全然違いますし、貸金業者が督促に来るタイミングなどにも大きな違いがあるのです。
それでは次項より保証人と連帯保証人の具体的な違いについて説明していきます。
保証人と連帯保証人の違い①「催告の抗弁権」
催告の抗弁権とは、貸金業者が保証人に対して請求してきた時に「先に主債務者(借金をした本人)に請求して下さい」と主張できる権利の事を言います。
しかし、連帯保証人にはこの催告の抗弁権がありません。つまり貸金業者が主債務者に請求せずにいきなり連帯保証人に請求してきたとしても、請求されれば直ちに支払わなければなりません。
この催告の抗弁権がないというのは本当に恐ろしい事で、貸金業者は連帯保証人に対して好きなタイミングで連絡を取り請求する事が出来るのです。
保証人と連帯保証人の違い②「検索の抗弁権」
検索の抗弁権とは、主債務者に返済原資があるにも関わらず貸金業者が保証人に対して請求してきた場合に「主債務者(借金をした本人)に返済能力があるのだから、あちらに請求して下さい」と主張できる権利です。
それでも主債務者が返済を拒むような時は「だったら主債務者の財産を差し押さえて下さい」と、これくらいの事まで主張できます。
しかし連帯保証人にはこの検索の抗弁権もありません。つまり主債務者に充分な資産があるにも関わらず貸金業者が連帯保証人に請求してきたとしても、請求されれば直ちに支払わなければなりません。
この検索の抗弁権がないというのは、催告の抗弁権を持たない事と同様に貸金業者に好きなタイミングで連絡を取り請求する権利を与えるという事なのです。
保証人と連帯保証人の違い③「分別の利益」
分別の利益とは、実際に主債務者(借金をした本人)に代わって保証人が返済の義務を負った場合でも、保証人が複数いれば、その人数で按分した金額を負担する事です。
例えば3,000万円の借金に対して保証人が3人いた場合。一人の保証人が返済しなければならない金額は1,000万円になります。1,000万円を支払えば残りの2,000万円を気にする必要はありません。
しかし連帯保証人にはこの分別の利益も、やはりありません。つまり連帯保証人が複数いたとしても、連帯保証人それぞれが全額の返済義務を負うのです。
もちろん本来の金額を超えて支払う義務はありませんが、保証人と違い一人一人の支払い割合が決まっていませんので、連帯保証人全員が責任を持って全額の返済を自分達で割合を決めて行わなければなりません。
保証人と連帯保証人の違いで大事な事
保証人と連帯保証人は全く違うものです。連帯保証人はお金を借りた本人(主債務者)ではありませんが、借りた本人とかなり立場の近い扱いを受けますし、保証人とは保障の範囲も督促のタイミングも全く違います。
その為、貸金業者から求められるのは大抵が保証人ではなく連帯保証人です。貸金業者としては、後々の督促が大幅に楽になるからです。つまり連帯保証人になるという事は、保証人に比べて大幅に責任が重いのです。
連帯保証人になる人とならない人の違い
ここまでの説明で、保証人に比べて連帯保証人になるという事が相当リスクのある事だと確認出来たかと思います。
おそらく、この事実を知った上でそれでも安易に連帯保証人になろうという人はほとんどいないと思います。それでも連帯保証人になり、その後支払い義務が生じたものの返済できなくて問題を抱える人が後を絶ちません。
なぜでしょう?それは人が理屈だけでは行動しないからだと思います。どんなに説得力のある情報を得ても、そこに感情という要素が加わらないと人は行動を決定出来ません。
おそらく借金をする人が連帯保証人をお願いする相手というのは、相当に関係性の強い相手じゃないでしょうか?お金の話ですから、大して親しくもない相手にこういった話は中々出来ないと思います。
という事は、頼まれた人の立場とすると縁の薄い相手ではなくとても親しい相手からの頼み事になります。その人の性格や信条、関係性にもよりますが、中には無下に断りにくいという人もいるのだろうと思うのです。
つまり、連帯保証人になるという事が自分で借金をする事に等しく、しかも連帯保証人への督促は貸金業者の一存でいつでも行われるという事を知っていても、主債務者との人間関係から生まれる感情で左右されるのです。
主債務者が債務整理をした時、連帯保証人は?
お金の問題は人間関係をいとも簡単に破壊します。主債務者の返済に問題が生じ、債務整理をする場合も注意が必要です。連帯保証人になる側の立場としては、主債務者が債務整理をする可能性も考えておきましょう。
どういう事かと言うと、主債務者が債務整理をした場合、貸金業者は間違いなく連帯保証人に一括請求をしてくるのです。
それは債務整理の影響範囲が申し立てを行った本人だけに限られるからで、返済を受けられるが金利は付いてない任意整理に応じるより、金利も含めて請求できる連帯保証人から返済を受けた方が得だからです。
自己破産も借金がゼロになるのは主債務者だけです。ですので貸金業者はこの場合も連帯保証人に一括返済の請求をしてきます。
主債務者としては、このように債務整理をするような場合は連帯保証人に相談するべきでしょう。ですが嬉しくない話ですから現実的には中々難しい事もあると思います。
ですが、そういう苦しい時こそ何を優先するべきなのか、しっかりと考えて踏ん張る時なのではないでしょうか。
連帯保証人の解除
さて、ここまで連帯保証人になる事がどれだけ責任の重い話なのかを説明してきました。そんな厳しい事だらけの連帯保証人ですが、次に示すようなケースでは解除出来る事もあります。
- 印鑑を勝手に押されたり、代筆で名前を書かれた
- 騙された
- 契約内容を勘違いしていた
- 詐欺にあった
- 脅迫にあった
- 未成年の契約だった
- 親が勝手に未成年を連帯保証人にしていた
以上のような場合は解除できる可能性がありますが、もし1円でも返済をしてしまった場合はその可能性はゼロになります。返済によって契約を認めた事になるからです。
返済に困ったら
契約の解除を狙うにしても、解除出来なくて貸金業者からの請求に困っている場合も弁護士に相談するのが一番です。
責任感の強い人ほど一人で悩む傾向があり、家族にも相談できずに保険金目当てで自殺を考えたり、犯罪に手を染める人だって居ます。
筆者も過去、借金の返済に困ってよからぬ事を考えた事がありました。ですが、そこを乗り越えた今つくづく思う事があります。それは、お金はとても大切ですが、人生を終わらすほど大したものではないという事です。
あなたがもし、連帯保証人になっていたり、または他のお金の問題を抱えていたとしても、深刻にならずに真剣に取り組めば未来は開けます。
まとめ
保証人と連帯保証人では、責任の重さが全然違います。連帯保証人の方が遥かに責任は重く、その重さはほぼ主債務者(借金をした本人)と同等と言っていいほどです。
ですので世間で言われる「保証人になっても連帯保証人には絶対になるな」という通説は実際その通りだと思います。
ですがもし連帯保証人を頼まれた場合、相手によっては断りにくい事もあるでしょう。そのような時は「こっちに請求が来たらどうしよう?」ではなく「こっちに請求が必ず来る」と覚悟を決めてなりましょう。
ですがそんな覚悟も無く既に連帯保証人になっていて、しかも返済に困っているとしたら。その時は一人で抱え込まず弁護士に相談しましょう。深刻にはならず、でも真剣に事にあたれば必ず解決します。