インターネット上で取引が可能なネット証券ですが、「もしも万が一のことがあったら相続はどうなるのか?」と気になりませんか?
最近では、60〜70代の高齢者のインターネット証券の口座保有者も増加傾向です。
どんな手続きになるのか事前に知っておけば、慌てずに相続の手続きを進めることができます。本記事では、インターネット証券の相続の仕組みと、手続きの流れを解説していきます。
この記事を読めば、インターネット証券の相続の方法がわかるので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
ネット証券の現状
日本証券業協会の「インターネット取引に関する調査結果について」によると、2021年3月現時点で88社が取り扱っています。
そして、インターネット取引の口座数は3,640万口座となり、前回調査時の 3,347万口座から、293万口座(8.8%)増加しています。
インターネット口座数を年代別に見てみると、40歳代が795万口座(21.9%)と最も多く、次いで50歳代の732万口座(20.2%)でした。
インターネット内できるという手軽さからか、ここ数年で取扱い口座数が上がってきています。
年代別の有残高口座数は、50歳代が 446万口座(20.6%)と最も多く所有していました。
また、有残高口座数の60才代及び70才代、80才以上の口座数は全体の37.1%を占めていて、インターネット取引が60才以上の層にも普及していることがわかります。
そうなると、これから先インターネット証券での相続の問題も他人事ではない事態になってくるでしょう。
親がどこのネット証券を所有しているか調べる方法
もしも、親に万が一の事があった場合、資産を相続する手続きを行わなければなりません。
一般的な相続財産は、預貯金、現金、不動産、証券、車、貴金属などがあります。この中で預貯金、不動産、証券、車などは相続手続きが必要になります。
そのため、インターネット証券も相続の対象です。どこのインターネット証券を保有していたかわからない場合、調べるにはどうしたらいいのでしょうか?
どこの証券会社を保有しているかわからないなら、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」で確認することができます。窓口では受付けておらず、必要書類を送れば調べてくれます。
ネット証券の株や投資信託を相続の6つの仕組みを知っておこう
ここからは、ネット証券の相続の仕組みで注意すべき点を6つ紹介していきます。6つの仕組みは以下の通りです。
- 始めに相続手続きをする必要がある
- 移管のみの対応
- 外国株式の相続にも外国口座が必要
- 現金での相続はできない
- 他のネット証券への移管はできない
- 複数人での相続に必要な書類について
ネット証券では、店舗を持った証券会社の相続方法とほとんど同じ流れで行われます。ただ、店舗のようにすぐに手続きはできません。
相続の書類や、その他の手続きに必要な書類をネット証券と郵送でやり取りすることになります。そのため、店舗を持った証券会社での相続の手続きよりも時間がかかってしまうのです。
次の章からは、ネット証券での相続の注意すべき仕組みを詳しく解説していきます。
ネット証券の相続の仕組み①始めに相続手続きをする必要がある
ネット証券の相続で注意すべき仕組みは、まず相続手続きをする必要があるということです。相続手続きをしないと、口座確認や商品の移管、売却などを行うことができません。
また、株式の信用取引や商品の先物取引で、売買約定をしたまま未決済のものがあったとしても、強制決済となることがあります。
ネット証券の相続がある場合には、まずネット証券へ連絡を入れて相続の手続きを進めましょう。
ネット証券の相続の仕組み②移管のみの対応
続いてネット証券の相続で注意すべき仕組みは、相続する人が「同じネット証券の口座を持っている」必要があるということです。
ネット証券の相続では、株や投資信託を親の証券口座から相続する人の口座へ「移管」という方法で移動させて相続の手続きをします。
そのため、相続する人は同じネット証券の口座を持っていないと移管手続きをすることができず、相続することができません。
相続人が同じネット証券の口座を持っていない場合、新たに開設する必要があります。
ネット証券の相続の仕組み③外国株式の相続にも外国口座が必要
3つ目のネット証券の相続で注意すべき仕組みは、外国株式(米国ETF含む)を相続する場合、相続人は外国株式の口座開設が必要な点です。
親が外国株式や米国ETFを保有していたら、相続人は同じネット証券の外国株式口座を取得する必要があります。
株や投資信託の「移管」と同様に、外国株式も「移管」の手続きで相続するので相続人も同じネット証券の外国株式口座が必要になります。
ネット証券の相続の仕組み④現金での相続はできない
4つ目のネット証券の相続で注意すべき仕組みは、現金での相続はできないということです。原則、親の口座から相続人の口座へ移管して相続することになるので、現金での相続はできません。
相続手続きを行い相続人の口座へ移管手続きが終了すれば、相続人口座において売却(換金)することができます。
数人でネット証券の株や投資信託を相続する場合、代表相続人の口座に移管手続きをした後に、代表相続人が売却・換金して他の相続人へ分配することになります。
ネット証券の相続の仕組み⑤他のネット証券への移管はできない
5つ目のネット証券の相続で注意すべき仕組みは、他のネット証券へ直接移管手続きはできないということです。
あくまで、移管手続きは親が所有するネット証券と同じ証券会社の口座にしか、移管することができません。
他のネット証券へ移管するには、一旦同じネット証券の口座へ移管手続きします。相続を完了した後に、他証券会社へ移管する手続きを行ないます。
他の証券会社に預け替える「株式移管」は、移管元(相続したネット証券)の証券会社で所定の書類に必要事項を記入して提出すれば、数週間から1カ月程度で手続きは完了しです。
ネット証券の相続の仕組み⑥複数人での相続には必要な書類がある
最後のネット証券の相続で注意すべき仕組みは、複数人で相続する場合には必要な書類を提出しなければならないという点です。
複数人で相続する場合に必要になる書類は、遺言書もしくは遺産分割協議書です。相続手続きをする際には、全相続人で遺産分割協議書を作成します。
その後、証券会社に提出すれば、遺産分割協議書の内容に基づいてそれぞれの相続人の(同じネット証券)口座に移管されることになります。
ネット証券の相続の流れ
ここまで、ネット証券での相続の注意点を解説してきました。この章では、ネット証券の相続の流れを説明していきます。
- 被相続人の所有していたネット証券を確認する
- ネット証券に死亡したことを連絡する
- 郵送で相続手続きの書類を送ってもらう
- 残高証明書の申請・取得を行う
- 遺産分割協議をする
- 相続人が証券口座を開設
- 株式の移管手続き
親がネット証券を所有している事がわかっていても、どこの証券会社かわからないなら「証券保管振替機構(通称:ほふり)」で調べてみましょう。
どこの証券会社なのかがわかったら、ネット証券に親が死亡したことを連絡して、その後、相続手続きをするために必要な書類を送ってもらいます。
親のネット証券の残高証明書の申請、取得を行い残高を調べます。もしも、相続する人が複数人なら、遺産分割協議書を作成しネット証券へ提出しましょう。
相続に必要な書類が揃ったら、相続の手続きに進めていきます。相続人が同じ証券会社の口座を持っていない場合は新しく口座を開設します。その後、相続人の口座へ「移管」手続きをすることで相続は完了です。
ネット証券の相続で必要な書類
ネット証券の相続で必要な書類を事前に知っておけば、手続きがスムーズに進めることができます。
次から相続で必要な書類を以下の4つのケースごとに紹介していきます。当てはまるケースを選んで書類を揃えましょう。
- 遺言書・遺産分割協議書がない時
- 遺言書がある場合
- 遺産分割協議書がある場合
- 代理人が手続きを行なう場合
ネット証券の相続で必要な書類①遺言書・遺産分割協議書がない時
遺言書・遺産分割協議書がない場合の相続で、必要な書類は以下の通りです。
- ネット証券所定の相続手続き書類
- 被相続人の出生~死亡までの戸籍
- 相続人全員が確認できる戸籍書類
- 相続人全員の印鑑証明書
手続きに必要な書類は、発行後6ヶ月以内の原本のものを用意しましょう。
ネット証券の相続で必要な書類②遺言書がある場合
続いて、遺言書がある場合の相続で必要な書類は以下の通りです。
- ネット証券所定の相続手続き書類
- 被相続人戸籍(除籍)謄本
- 相続人の印鑑証明書
- 遺言執行者の印鑑証明書
- 遺言書の写し
- 検認書類の写し
遺言書がある場合の書類も、発行後6ヶ月以内の原本のものを用意しましょう。
遺言書の写しは、自筆証書遺言書原本 または 公正証書遺言書謄本のものを指します。また、遺言書の写しが公正証書遺言書謄本でない場合は、検認書類の写しが必要になります。
ネット証券の相続で必要な書類③遺産分割協議書がある場合
3つ目の相続遺産分割協議書がある場合の相続で必要な書類は以下の通りです。
- ネット証券所定の相続手続き書類
- 被相続人の出生~死亡までの戸籍
- 相続人全員が確認できる戸籍書類
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
遺産分割協議書がある場合の書類も、発行後6ヶ月以内の原本のものを用意しましょう。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類のことを言います。遺産分割協議には相続人全員の参加が必要です。
相続人全員の話し合いによって、遺産分割の方法と相続の割合を決めていきます。 遺産分割協議によって相続人全員の合意が得られたら、その内容をまとめたものが遺産分割協議書です。
ネット証券の相続で必要な書類④代理人が手続きを行なう場合
最後に代理人が手続きを行う場合に必要な書類は以下の通りです。
- 相続人からの委任状
- 代理人の印鑑証明書
- 相続人代表者の印鑑証明書
相続人に手続きを依頼する場合、今までに紹介した「遺言書・遺産分割協議書がない場合」「遺言書がある場合」「遺産分割協議書がある場合」で必要な書類に加えて上記の3つが必要となります。
こちらで追加で必要な書類も、発行後6ヶ月以内の原本のものを用意しましょう。
【まとめ】これで安心!ネット証券の株式や投資信託の相続の仕方
ネット証券の株式や投資信託を相続する方法は要約すると、以下の3つの手順で進めていきます。
- ネット証券へ連絡
- 相続人該当の証券口座を持っていない場合、口座の開設
- 親のネット証券の口座から相続人の口座へ移管
書類をいくつか揃えるのは面倒かもしれませんが、この記事を読んで理解しておけば相続の時も慌てることはないでしょう。
もしも、親がどのインターネット証券の口座を持っているかわかない場合は、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」で調べてみましょう。
親がネット証券の口座を保有しているのを知らずに相続の手続きをしてしまうと、ネット証券での株式や投資信託の相続漏れになってしまう恐れがあります。
ネット証券で、株式や投資信託を保有しているなら、家族間でそのことを話しておくか、エンディングノートに記しておくのも良いでしょう。