あなたは証券会社で相続の手続きをした経験がありますか?「投資もあまり経験がないのに、相続なんてわからない」という人も多いでしょう。
相続は手間がかかりますし、大切な人を失った悲しみの中でやらなければいけないので大変ですよね。
この記事では、証券会社で株式を相続する流れについて説明しています。この記事を読めば、相続の「わからない」という不安をやわらげることができるでしょう。
相続は状況によってとても複雑になる場合があります。この記事ではわかりやすさを重視して一般的な流れを説明しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
(アイキャッチ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/23664124)
証券会社の相続の流れをつかもう
はじめに、株式を相続する大まかな流れをつかみましょう。相続手続きの流れは、以下のようになります。
- 保有株式や遺言書を確認する
- 取引店に連絡する
- 遺産分割の協議をする
- 必要な書類を集める
- 代表相続人の口座に株式を移管する
- 代表相続人が株式を売却して現金化する
- 相続税を納付する
株式をそのまま分割して相続することも可能ですが、分割の仕方や銘柄などで問題が生じる可能性があるのでおすすめしません。
今回は一番簡単だと思われる「株式を相続人の口座に移管し、現金化する」という方法を説明します。
次の章から1つずつ詳しく説明していきますので、具体的にイメージしながら読み進めてください。
証券会社の相続の流れ① 保有株式や遺言書を確認する
株式を相続する場合、まずおさえたいのは以下の2点になります。
- どこにどのくらい株式を持っているか
- 誰が相続するか
どこにどのくらい株式を持っているか
証券会社の「取引残高報告書」など、取引店がわかる書面やメールがないか確認してみてください。
証券会社がわからない場合は、証券保管振替機構(通称:ほふり)に相談しましょう。有料ですが、口座が開設されている証券会社等の開示請求をすることができます。
誰が相続するか
相続人は遺言書があるかどうかで変わってきます。まずは遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書がなければ、民法で定められた「法定相続人」で遺産分割をすることになります。法定相続人の遺産分割については、後に説明します。
証券会社の相続の流れ② 取引店に連絡する
保有株式や遺言書について把握できたら、証券会社の取引店に連絡しましょう。
証券会社は相続に関する資料を用意しているので、その資料にしたがって進めることになります。やり取りの方法は証券会社によりますが、郵送か窓口での対応になるでしょう。
相続に関する資料とあわせて、最新の「残高証明書」や過去2年程度の「取引履歴」も取得するのがおすすめです。
「残高証明書」は現状の金額を正確に把握できますし、「取引履歴」は保有株式に見落としがないかなどを確認することができます。
証券会社の相続の流れ③ 遺産分割の協議をする
次に、相続人を確定させて「遺産分割協議書」を作成しましょう。民法で定められている法定相続人は以下になります。
- 常に法定相続人になる人
- 配偶者
- 順位のある法定相続人
- 第1位 子ども
- 第2位 親
- 第3位 兄弟
順位のある相続人は、上の順位の相続人がいれば下の順位の人は相続人にはなれません。つまり、被相続人に子どもがいれば、親や兄弟には相続権がないことになります。
配偶者と順位のある相続人がいる場合、相続する割合は下表のようになります。順位のある相続人が複数名いる場合は、割合分をまた均等に分けることになるでしょう。
配偶者の 割合 |
順位のある法定 相続人の割合 |
|
配偶者と子ども | 1/2 | 1/2 |
配偶者と親 | 2/3 | 1/3 |
配偶者と兄弟 | 3/4 | 1/4 |
証券会社の相続の流れ④ 必要な書類を集める
証券会社からの相続に関する資料にしたがって、必要書類を集めましょう。相続に必要な主な書類は以下になります。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まですべて)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 口座開設者死亡届出書
- 相続上場株式等移管依頼書
- 相続依頼書
- 相続人代表者委任状
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
必要書類でもっとも手間がかかると思われるのは、「被相続人の戸籍謄本」です。
なぜなら、被相続人の戸籍謄本は本籍地の役所で取得するものだからです。「いま住んでいる場所」が「本籍地」とは限らないでしょう。
転籍などしている場合は、以前の本籍地の役所にも戸籍謄本を請求する必要があります。役所が遠い場合は、郵送も可能かどうか問い合わせをしてみましょう。
証券会社の相続の流れ⑤ 代表相続人の口座に株式を移管する
株式を現金化するためには、被相続人の口座にある株式を代表相続人の口座に移管しなければいけません。
そのために、代表相続人の証券口座がなければ作成する必要があります。多くの証券会社では、同じ証券会社に口座を作成する必要があるようです。
注意点としては、代表相続人の証券口座は『特定口座、源泉徴収あり』にしてください。そうしておかないと、売却で利益が出た場合に確定申告が必要になってしまいます。
証券会社の相続の流れ⑥ 代表相続人が株式を売却して現金化する
代表相続人の証券口座に移管できたら、次は株式を売却し現金化しましょう。
注意点としては、あたりまえですが株価は常に動いています。株式を現金化するときは、「売却時の株価で損をする可能性もある」と頭に入れておきましょう。
また、株式の売却時には20.315%の税金がかかります。税金の内訳は以下のようになっており、「復興特別所得税」は東日本大震災からの復興のために課せられている税金になります。
- 所得税 15%
- 復興特別所得税 0.315%
- 地方税 5%
証券会社の相続の流れ⑦ 相続税を納付する
相続税は「相続開始を知った日」から10ヶ月以内に申告する必要があります。「相続開始を知った日」は、被相続人が亡くなった日と考えて大丈夫です。
相続税は「被相続人が住んでいた地域を管轄する税務署」に申告して納付します。相続人全員分を、まとめて申告するのが一般的です。
今回は株式についての説明ですが、実際には家や土地など他の遺産も相続税の対象となります。よほど単純な相続でないかぎり、税理士に相談するのが良いでしょう。
申告期限を過ぎてしまうと「加算税」や「延滞税」をとられる可能性もありますので、早めに相談するようにしてください。
相続税はどのくらいかかる?
相続税はいったいどのくらいかかるのか、その計算を簡単にしてみましょう。まず、相続税がかかる課税対象額は以下のようになります。
- 相続税の課税対象額 = 遺産総額 – 基礎控除額
- 基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の人数)
例:2億円を配偶者と子ども2人が相続する場合
- 基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
- 課税対象額:2億円 – 4,800万円 = 1億5,200万円
相続税は課税対象額を法定相続人で分割したものに対して、以下の表から算出した金額の合計になります。
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円以上 | 55% | 7,200万円 |
例:課税対象額1億5,200万円を配偶者と子ども2人が相続する場合
- 配偶者 :7,600万円 × 30% – 700万円 = 1,580万円
- 子ども1:3,800万円 × 20% – 200万円 = 560万円
- 子ども2:3,800万円 × 20% – 200万円 = 560万円
相続税:1,580万円 + 560万円 + 560万円 = 2,700万円
最後に遺産の取得割合に応じて、相続税の負担金額を算出します。配偶者には相続税が課税されない「配偶者控除」があるので、この負担金額の計算で控除額がわかるでしょう。
- 相続税の負担金額 = 相続税 × 遺産の取得割合
例:相続税2,700万円を配偶者と子ども2人で負担する場合
- 配偶者:2,700万円 × 1億円/2億円 = 1,350万円
(配偶者控除により課税されない) - 子ども1:2,700万円 × 5,000万円/2億円 = 675万円
- 子ども2:2,700万円 × 5,000万円/2億円 = 675万円
よって、2人の子どもが675万円ずつ相続税を払うことになる。
まとめ:思いを引き継いで、きちんと相続しよう
今回は証券会社で株式を相続する流れについて説明しました。証券会社の手続き自体は、書類等の不備がなければ3週間程度で終えることができます。
しかし、書類をそろえるのに苦労することもありますし、上で説明しているように相続税の納付などもあります。できることから早めに行動していくよう心がけましょう。
「思った以上に大変だし、そこまで時間がとれない」という人もいるかもしれません。その場合は相続手続きの一括代行サービスもありますので、検討してみてください。
相続手続きは大変なことが多いですが、遺産には被相続人の思いが込められています。なるべくきちんと相続して、思いを引き継げるようにしたいですね。