「個人再生では住宅ローン特則があるって聞いたけど、どんな内容なの?住宅に関係あるの?」
個人再生は債務整理の1つで、借金を大幅に減額でき、財産を残せる手続きです。特に住宅を残せるのでメリットを感じる人が多いでしょう。
しかし、住宅を残す申請である「住宅ローン特則」を使うためには、条件があります。
この記事では、住宅ローン特則が適用される条件を5つ解説するので、個人再生を申請をする予定で、住宅を残すための条件を知りたい人は、参考に読んでみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/340235?title=%E4%BD%8F%E3%81%BE%E3%81%84%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%94%BB)
個人再生の申請ができる条件は?
債務整理の1つである個人再生は、裁判所に「借金の返済が難しいので、減額をお願いします」と申請する手続きになります。個人再生を申請するためには、最低限の条件が2つあります。
1つ目は「借金の総額が5,000万円以下」です。消費者金融からクレジットカードのキャッシングまですべての借金が個人再生の対象となります。
2つ目は「安定した収入があること」です。個人再生は、借金を大幅に減額できますが、借金の残りを3年間で返済しなければいけません。収入が不安定または無職の場合は、毎月安定して返済ができないと見なされます。
他にも細かい条件はありますが、まずは上記の2つの条件をクリアしないと申請ができないので、申請条件に該当するか確認しましょう。
個人再生では住宅を残せるが条件がある
個人再生では、住宅などの財産を残して、借金を大幅に減額できることがメリットとしてあげられます。メリットは大きいですが、その分住宅を残すための条件は厳しくなります。
個人再生で住宅を残すための手続きは「住宅ローン特則」と呼ばれています。住宅ローン特則の条件にあてはまらない場合は、住宅を残すことができません。
住宅ローン特則を使うための条件を5つ紹介しますので、自分が住んでいる住宅が条件に該当するか確認してみましょう。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件①債務者が住んでいること
個人再生で住宅ローン特則を使う条件の1つ目は「債務者が住んでいること」です。
住宅ローンを組んでいる人と家に住んでいる人が違う場合は、住宅ローン特則を使うことができません。債務者が日常生活を送るために住んでいることが条件となります。
例えば、普段使わない別荘や賃貸用で所有している不動産は、債務者が住んでいないため、住宅ローン特則は使えません。
また、現在住んでいる家が、住宅と事務所や店舗を兼ねている場合があるでしょう。その場合は、建物の床面積の半分以上が居住用であれば問題ありません。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件②住宅の所有者が債務者
個人再生で住宅ローン特則を使う条件の2つ目は「住宅の所有者が債務者」です。
債務者が住宅ローンを組んでいて、さらに所有者であることが条件になります。債務者を含めた複数人で住宅を所有している場合でも有効です。
例えば、夫婦で1つの住宅に対し、住宅ローンをそれぞれ組んでいる場合があるでしょう。この場合は、原則夫婦で個人再生を申請する必要がありますが、債務者の分だけ住宅ローン特則が認められることがあります。
また、住宅を親などから相続した場合でも、債務者が住宅を所有していると見なされるので、特則を使えます。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件➂ローンの目的が購入か改良
個人再生で住宅ローン特則を使う条件の3つ目は「ローンの目的が購入か改良」です。
住宅ローンや自動車ローンなどローンを組むときは、何かを購入することが目的で組む人が多いでしょう。住宅ローンを組んだ目的が、住宅を購入するための代金であることが条件となります。
また、ローンの目的が自宅のリフォームであれば、住宅を改良するためにお金を借りたと見なされるので、特約を使うことができます。
実際は、住宅ローンの費用の内訳を見て判断されるため、事業用の資金でローンを組んだりした場合は、特約が適用されない可能性が高いので注意しましょう。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件④抵当権が設定されている
個人再生で住宅ローン特則を使う条件の4つ目は「抵当権が設定されている」です。
抵当権とは、住宅ローンを組むときに金融機関が建物と土地に設定する権利です。住宅ローンの支払を滞納された場合、金融機関が住宅を売却する等の権利を優先的に持っているという意味になります。
個人再生では、借金は基本的に減額されるのに対し、住宅ローンは借りた金額をそのまま返済するため、金融機関が抵当権を実行することはありません。
特則を使うためには、建物と土地に、住宅ローン以外の抵当権が設定がされていないことも条件になります。例えば、カードローンの抵当権に建物と土地が設定されている場合は、特則は使えません。
土地と建物に住宅ローン以外の抵当権が設定されていると、別の債権者が返済が止まっていることを理由に抵当権を実行する可能性があります。この場合、債務者は住居を失い、住む場所が無くなってしまいます。
そのために、建物と土地が住宅ローン以外で抵当権が設定されていると、住宅ローン特則が使えないのです。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件⑤住宅ローンの滞納がない
個人再生で住宅ローン特則を使う条件の5つ目は「住宅ローンの滞納がない」です。
住宅ローンの返済を滞納すると、保証会社は住宅ローンの残りの金額を債務者の代わりに金融機関へ支払います。これを代位弁済と言います。代位弁済から6カ月経過すると特則は使えません。
代位弁済が行われると、保証会社は債務者に、自分が金融機関へ払ったお金を返済してくださいと請求をします。本来金融機関に払うお金の支払先が保証会社に移るのです。
住宅ローンは分割返済で組まれますが、支払先が保証会社に移ると一括返済を求められます。通常一括返済は不可能のため、抵当権が実行されて家を売却されてしまうのです。
住宅ローンの保証会社は、金融機関(主に銀行)のグループ会社がなることが多いです。代位弁済が行われても、支払先は銀行のグループ会社になるので、銀行全体では損をしないようになっています。
住宅ローンは個人再生で減額できる?
個人再生では、住宅ローンは他の借金と同じように減額はできません。住宅ローンは借金なのになぜ減らせないの、と思うでしょう。
別の章で説明したとおり、住宅ローンを滞納したら、金融機関はあなたの住宅を売却する権利である抵当権を実行することができます。住宅を売却されたら住む場所が無くなってしまいますよね。
個人再生を住宅ローン特則を利用して申請すると、金融機関は「住宅を勝手に売却しないので代わりに、ローンは減額せずに返済してください」となるのです。
家を残して、さらにローンも減らしてくださいとお願いするのは、金融機関に抵当権は実行できないし、返済するお金が減ってしまって損になる話ですよね。このために、個人再生では住宅ローンを減額できないのです。
個人再生ができない場合はどうなるの?
ここまで、個人再生を申請する条件と住宅ローン特則を使う条件を解説しました。借金を抱えているけど、個人再生の申請条件に該当しないため、申請ができない人もいるでしょう。
個人再生ができない場合は、他の債務整理の手続きをとります。借金の金額が大きく、安定した収入が無い場合は、自己破産の手続きとなるでしょう。
自己破産では、生活に必要な財産以外は原則すべて没収されるので、住宅も手放すことになります。住宅を失いたくない場合は、まずは安定した収入源を作ることが重要になります。
個人再生で住宅ローン特則を使う条件5つ まとめ
今回は、個人再生で住宅ローン特則が適用される条件を主に解説しました。個人再生は、借金を大幅に減額できて、住宅を残せる申請ですが、解説したとおり申請条件が厳しいです。
住宅ローン特則が適用できず、借金の金額が大きい場合は、他の債務整理である任意整理も特別調整も難しく、自己破産になる可能性があります。
借金の返済が厳しいけど、住宅を残したい場合は、まずは毎月のローンの返済を滞納しないようにすることと、ローンがどのような条件で組まれているか確認することをおすすめします。