「債務の定義か。債務って借金とかでよく聞くっていう程度のイメージしかないから、よく分からないな…。」
債務の定義と聞かれても、定義について答えられる人は少ないですが、生活のなかで関わりのあるものなので知っておきたいところです。
この記事では、債務の定義について徹底解説していきます。紹介する内容は以下の通りです。
- 債務と債権の定義
- 「片務契約」と呼ばれるものについて
- 連帯保証人の債務の定義
- 4つの具体例から見る債務の定義
この記事を読んで、債務の定義を理解して日常生活でのトラブルを防いでいきましょう。
債務の定義
まずは、債務の定義について説明していきます。債務とは、ブリタニカ国際大百科事典によると以下のように定義されています。
ある者 (債務者) が相手方 (債権者) に対して一定の行為 (給付 ) をすることを内容とする義務をいう。権利である債権に対応する義務。
出典:https://kotobank.jp/word/債務-68252
例を挙げて説明すると、ある日、Aさん(債権者)がBさん(債務者)に本を貸したとしましょう。
この時に、BさんはAさんに本を返すという債務を負うことになり、一方でAさんには債権が発生し、Bさんに本を返すように請求する権利を主張できます。
このように、Bさん(債務者)がAさん(債権者)に対して一定の行為(本を返す)をすることで、債務が成り立っているのです。
なお、債務者が債務不履行となった場合、債権者から損害賠償請求や契約解除といった請求がされてしまうのです。
債務と関わりのある、債権の定義
次に、債務と切っても切れない関係にある、債権の定義について説明していきます。債権とは、ブリタニカ国際大百科事典によると以下のように定義されています。
ある者 (債権者) が他の者 (債務者) に対して一定の行為 (給付 ) を請求しうることを内容とする権利をいう。
出典:https://kotobank.jp/word/債権-67830
上記のAさん(債権者)とBさん(債務者)の具体例を踏まえて説明すると、Aさん(債権者)がBさん(債務者)に対して一定の行為(本を返すように)を請求できる権利と定義されます。
なお、AさんがBさんに対して本を返してと請求しても、Bさんが本を返さなかった場合、債務の履行を怠ったことになるのです。Bさんが債務の履行を怠った場合は、AさんはBさんを訴えることができます。
債権者は、債務者に対して法的に訴えることができるため、立場的に強いです。
片務契約における債務の定義
通常、私たちが日常生活でやり取りをするのは、二者間の契約に基づいて行われる「双務契約」です。ですが、例外として「片務契約」と呼ばれる契約方法も存在します。
「片務契約」とは、当事者の一方だけが相手に対して債務を負っているのです。「片務契約」は「双務契約」と比較すると、債務の定義が異なってきます。具体例を踏まえて解説すると、以下の状況となります。
ある日、AさんがBさんに無料でパソコンをあげる契約をしました。
契約と同時に、AさんはBさんに無料でパソコンをあげる債務を負うことになり、Bさんは何の債務も負うことなく無償でパソコンを手に入れました。
「片務契約」は上記のように、AさんだけがBさんにパソコンをあげるという債務が発生し、Bさんには債務が発生しません。当事者の一方だけが債務を負っている状態になるのです。
連帯保証人の場合の債務の定義
債務には、連帯保証人といった複数人の債務者が関わる場合もあります。この場合、債務の定義がどう変わっていくのか気になるところです。
連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合、代わりに返済する義務を負うことになります。
債権者から見ると、連帯保証人は債務者の従属的な立場となっているのです。そのため、債務者が債務を履行できなくなった場合、連帯保証人は債務者から先に請求してとは言えなくなります。
なぜ、連帯保証人が債務者から先に請求するようにと言えなくなるのは、連帯保証人には以下の2つの権利がないからです。
- 【催告の抗弁権】― 債権者AからCにいきなり請求がきたとしても、債務者Bから先に請求してくださいと言える権利
- 【検索の抗弁権】― 債権者AがCの財産を差し押さえた時に、債務者Bには財産があるからBから差し押さえてくださいと言える権利
連帯保証人には上記2つの権利がないため、通常の債務者よりも弱い立場となってしまうのです。。
債務はお金の貸し借りだけではない
債務と聞くと、借金のことをイメージしがちですが、借金だけではなく私たちの生活になくてはならない仕事や買い物についても債務は関わりがあります。
例えば、スーパーでアルバイトをする場合、スーパーはアルバイトに対して労働を求める債権があり、労働の対価に見合った給料をアルバイトに払う債務を負っています。
買い物をする場合でも、コンビニで弁当を買う人は、コンビニに対して弁当を引き渡すように請求する債権があり、弁当のお金を支払う債務も生じることになるのです。
このように、私たちは日常生活の中において債務を負っているのです。
具体例から見る債務の定義①契約によるもの
ここからは、どのような場合に、債務の内容が具体的に定義されるのかについて、3つの例を挙げて紹介します。最初に紹介する具体例は、契約によって当事者間が合意した場合です。
例を挙げると、Aさんが家電量販店で携帯電話を買うとします。携帯電話を買う時に、Aさんと家電量販店の間に売買契約を結び、合意します。
売買契約を結んだときに、Aさんは家電量販店にお金を支払う債務が発生し、Aさんは家電量販店に対して携帯電話を引き渡すよう請求できる債権が発生するのです。
売買契約によって、携帯電話を買うAさんと家電量販店との間にそれぞれ債務が発生しているのがお分かりでしょうか。
具体例から見る債務の定義②事務管理によるもの
次に紹介する具体例は、「事務管理」によるものです。「事務管理」は民法によると、法律上の義務のない人が、相手のためにその事務を処理してあげることだと定義されています。
例を挙げると、Bさんが仕事で出張するために、家をしばらく空けなくてはならなくなりました。それを知っている近所のAさんは、心遣いでBさんの庭の掃除をしてあげました。
Aさんが親切でやったことですが、民法によると、事務管理を行うなら最後まで放り出さずにやるようにと定義されています。なので、AさんはBさんの庭を最後までやらなくてはいけない義務を負うことになります。
このように、たとえ善意であっても一度事務管理を行うと、様々な債務が発生するのです。
また、Bさんは不在時にAさんが庭の掃除をしてくれていることを知っている場合を除いて、AさんはBさんに対して、庭の掃除をしている旨をすぐに通知しないといけない義務が発生します。
具体例から見る債務の定義③不法行為によるもの
次に紹介する具体例は、「不法行為」によるものです。「不法行為」は民法によると、相手に対して損害を与える行為だと定義されています。
例を挙げると、ある日Aさんが車で通勤中に、道路から飛び出してきたBさんをはねてしまいました。
この場合、Aさんは故意または過失によって事故(=不当行為)を引き起こしてしまったので、Bさんに対して損害賠償をしなくてはいけないという義務を負うことになります。
一方で、BさんはAさんに対して損害賠償請求の債権を主張できるのです。
具体例から見る債務の定義④不当利得によるもの
最後に紹介する具体例は、「不当利得」によるものです。「不当利得」は民法によると、正当な理由なく他人の財産や労務によって利得を受けることで、他人に損失を与えることだと定義されています。
例を挙げると、消費者金融の「過払い金」が当てはまります。以前、消費者金融では「グレーゾーン金利」という約30%の違法金利を定めている業者がありました。
後に、金利の上限が15~20%に定められました。この場合、消費者金融に借金をした人は、違法金利の利息分を支払う債務は発生せず、相手に支払った「過払い金」を返還するように請求できるのです。
仮に消費者金融と契約していたとしても、不当利得にあたる場合にはその債務が発生しません。なので、必ずしも利息分を含めた全てを返済しなくてはいけないことにはならないのです。
まとめ
ここまで、債務の定義について解説していきました。内容を振り返ると以下の通りです。
- 債務とは、ある人が相手に対して一定の行動をしなければならない義務を負っている状態
- 通常、債務は二者間の契約に基づく「双務契約」で発生。例外的に「片務契約」と呼ばれるものもある
- 連帯保証人になると、債務者が債務を履行できない場合、優先的に債務を請求される
- 債務は借金といったお金の貸し借りではなく、買い物など日常生活の中でも関わりがある
債務は、私たちの日常のなかで関わりのあることです。債務の定義が曖昧なままだと、トラブルに発展する可能性もあります。
債務の定義はややこしくなりがちですが、この記事で紹介した具体例を参考にしながら、1歩ずつ定義を理解してみてはいかでしょうか。
債務の定義を理解して、借金や日常生活を送る上でのトラブルを未然に防いでいきましょう。