「税金を支払わないとどうなるの?」誰もが1度は考えたことがあるのではないでしょうか。
この記事では、税金を支払わないとどうなるのか。税金を支払うことができないときはどうすればよいのか。などについて書いていきます。
税金を滞納している方、税金を支払わないとどうなるのか知りたい方はぜひこの記事を読んでください。
税金を確定申告により納税しなくてはいけない人
確定申告を行い納税を行わなくてはいけないのは、以下に該当する方です。
- 自営業やフリーランス
- 一定額の公的年金を受け取っている人
- 株取引などで一定の利益を得た人
- 不動産の譲渡を受けた、不動産所得のある人
- 給与所得が2000万円を超えた人
- 20万円以上の副収入がある人
自営業者やフリーランス
自営業者やフリーランスは確定申告が必要となります。ただし、事業所得から控除額を引いた金額がマイナスになっている場合は、確定申告は不要です。
控除とは、所得から引くことにできる金額のことです。
控除には、「基礎控除」「医療控除」など全部で14種類あります。
一定額の公的年金を受け取っている人
受け取っている公的年金から所得控除を差し引いても金額がプラスの場合は、確定申告が必要となります。
株取引などで一定の利益を得た人
株取引やFXなどで38万円以上の利益を得た場合は、確定申告が必要となります。
不動産の譲渡を受けた、不動産所得がある人
土地や家など不動産の譲渡があった場合、不動産を貸し付けて収入を得ている場合も確定申告が必要です。
給与所得が2000万円を超える人
年間の給与が2000万円を超えると年末調整(給与所得者の所得税を毎月の給与や賞与から天引き)の対象者となりません。別途確定申告で所得の申告をする必要があります。
20万円以上の副収入がある人
年末調整を行っている会社以外で、20万円以上の副収入を得ている方は確定申告を行う必要があります。
確定申告をしなくてもいい人
確定申告をする必要がある人がいる一方、源泉徴収などによって税金はあらかじめ給料から差し引かれるなどの理由で確定申告をしなくてもいい人もいます。
源泉徴収とは、年間の所得にかかる税金(所得税)を事業者が給与からあらかじめ差し引くことです。
確定申告を行う必要がないのは、以下に該当する方です。しっかりと確認しておきましょう。
- 収入から控除を引いた額がマイナスだった人
- 会社から年末調整(源泉徴収)を受けてる人
- 副収入が20万円未満の人
この記事は確定申告をする人の内容が前提となっていますが、源泉徴収などによってあらかじめ給料から税金が差し引かれている人も、税金を滞納するとどうなってしまうのか、必ず確認しましょう。
収入から控除を引いた額がマイナスだった人
源泉徴収がない自営業やフリーランスは基本的に確定申告が必要となります。
しかし、収入から控除を引いた額がマイナスになる場合は、所得がないとみなされるので、確定申告が不要となります。
会社から年末調整(源泉徴収)を受けてる人
会社員は基本的に会社から年末調整をされています。年末調整をされることにより、自動的に給料から税金が引かれるので確定申告は必要ありません。
副収入が20万円未満の人
本業以外で副収入を得ていても、年間で20万円未満であれば確定申告は不要です。
税金の滞納から差し押さえまでの流れ
税金を滞納してから差し押さえにあうまでの流れは以下の通りです。
- 滞納
- 督促
- 催告
- 最終催告
- 財産調査
- 差し押さえ
①滞納
税金にはそれぞれ納付期限があります。(所得税や住民税、事業税など)
納税が納付期限から1日でも遅れれば滞納となりますので注意してください。
②督促
納付期限までに納税を行わないと、各役所から督促状が発送されます。
国税は滞納から50日以内、地方税は滞納から20日以内に督促状を発送します。
③催告
国税・地方税ともに督促状を発送してから10日が過ぎても税金が納付されなかった場合、差し押さえを行うことが可能となります。
実際は、このタイミングで差し押さえが行われることはほとんどなく、電話や訪問による催告が行われることが多いです。
差し押さえが可能となるのは、督促状が「届いてから」10日ではなく督促状を「発送してから」10日です。
④最終催告
③までで税金が納付されなければ、最終催告書や差し押さえ通知書を送ることによる、最終催告が行われます。
この段階まで納税を行わないと、いつ差し押さえが行われてもおかしくありません。
⑤財産調査
差し押さえを行う前に、差し押さえをするための財政調査が行われます。財政調査は、具体的には以下の調査となります。
- 住民票の取得
- 勤務先や取引先の調査
- 所得の調査
- 戸籍の調査
- 家族構成
- 給料の調査
- 自動車所有の有無
- 銀行口座の調査
- 生命保険加入の有無
- 不動産の有無
- 債権・債務の調査
このような調査を行うことは個人情報保護法違反するのではないかと疑問を抱く方もいるでしょう。
しかし、財政調査は国税徴収法第141条により定められた権限なので、個人情報保護法には抵触しません。
第百四十一条 徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。第百四十六条の二及び第百八十八条第二号において同じ。)を検査することができる。一 滞納者二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者三 滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者四 滞納者が株主又は出資者である法人(捜索の権限及び方法)出典:国税徴収法第百四十一条
⑥差し押さえ
財政調査が行われると、いよいよ差し押さえの実行となります。差し押さえにあうと財産を失ってしまうので、その前に納税や交渉を行うようにしましょう。
税金の滞納で差し押さえの対象となるもの
上記の①から⑥の手順で差し押さえが行われますが、実はすべての財産が差し押さえになるわけではありません。
差し押さえをしてはいけない財産については、国税徴収法第75条により定められており、生活や営業に欠くことができない財産は差し押えることができないとされています。
具体的には、衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具、生活に必要な3ヶ月間の食料及び燃料、収入を得るために必要な道具、商品を除く業務に欠くことができない器具、実印などが差し押さえ不可となっています。
税金の滞納による差し押さえが解除される場合
税金の滞納をしてしまっても、一定の条件を満たせば差し押さえにあわなかったり、差し押さえが解除されたりします。
地方税法第15条の7第1項第2号によると「滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。」は滞納処分の執行を停止することができると定められています。
また、地方税法第15条の7第3項によると、「滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。」にもかかわらず、差し押さえを行った場合は、差し押さえを解除しなくてはなりません。
第十五条の七
地方団体の長は、第一項第二号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その停止に係る地方団体の徴収金について差し押さえた財産があるときは、その差押えを解除しなければならない。
出典:地方税法第十五条の七第三項
税金を払えず滞納しそうなら延納を利用する
税金を払わなくてはいけないのは分かっているものの、お金がなくて税金を払うことができない場合もありますよね。
そんなときは、「延納」を利用することで、税金を分割して払うことが可能となります。
確定申告による納期限は3月15日です。その日までに、納税しなくてはいけない金額の半分を払ってから延納の届け出を出せば、残りの額を分割して支払うことができます。
延納期間中は年7.3%または特例基準割合のいずれか低い方の利子税がかかります。
特例基準割合とは、国税での延滞税、利子税や地方税等での延滞金、還付加算金の算定等に使用される数値のことです。
税金を払えず滞納しそうなら猶予制度を利用する
納税分の半分も用意できず、延納が利用できない場合は、猶予制度を利用することをおすすめします。
猶予が認められると、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除されます。さらに、財産の差し押さえや等価(売却)が猶予されます。
猶予を認めてもらうには「換価の猶予」か「納税の猶予」のどちらかを満たさなくてはいけません。
- 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
- 納税について誠実な意思を有すると認められること
- 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
- 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
- 原則として、担保の提供があること
- 次のaからfのいずれかに該当する事実があること
a 納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難に遭ったこ
b納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
c納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと
d納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと
e納税者に上記AからDに類する事実があったこと
f本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと
- 猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること
- 申請書が提出されていること
- 原則として、担保の提供があること
税金を払えなくて滞納しても誠意を見せる
たとえ税金を納めることができなくても、税金を納める意思を見せることが大切です。
税務署や自治体も差し押さえを行いたいのではありません。税金を払ってもらえないがために、仕方なく強行手段に出るのです。
税金が払えないとしても、分割などで何とか払おうとする意思を見せれば、差し押さえにあうことはまずないでしょう。
それどころか、どのように税金を払っていけばよいかなどの相談に乗ってくれる場合もあります。
生活保護受給者は税金の納税義務がない
納税は国民の義務ですが、実は納税が免除されることもあるのです。そのうちの1つが、生活保護を受けている場合です。
生活保護の支給を受けている間は、生活費や住宅費相当額を受給できるだけでなく、住民税、国民年金保険料、国民健康保険料等は免除されます。
また、所得税については年度末の確定申告を行うことで勤務先から源泉税として控除されていた分が全額還付されます。
税金を支払うだけの収入がないという方は、市町村に生活保護の申請を行ってみてはいかがでしょうか。
破産しても税金は免責されない
「税金を払えずに滞納してしまったら、自己破産すれば納税から免れるのではないか?」と考える人もいるでしょう。
ですが、破産法253条1項1号によると、「租税等の請求権」について免責許可の決定が確定したときでも責任を免れないことを明記しています。
つまり、自己破産をしたとしても納税が免除されることはないのです。
自己破産をして税金から逃れようと考えても、それは不可能なので意味のない行為となってしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最後に全体をまとめておさらいしましょう。
- 税金を滞納し続けると、最終的には差し押さえにあう
- 生活や営業に欠かすことができないものは、差し押さえにあわない
- 「滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」は差し押さえにあわない
- 延納を利用することで、税金を分割で支払うことができる
- 猶予制度を利用することで、一定期間税金の支払いが免除される
- 税金を払えなくて滞納しても誠意を見せる
- 生活保護受給者は納税義務がない
- 破産しても税金は免除されない
税金を支払わないと、差し押さえにあってしまい自分の財産を失ってしまいます。
払わなくても平気だろうとは考えずに、しっかり納税の義務を果たしましょう。