- 「企業に勤めているが、どんな種類の年金があるのを知りたい」
- 「年金について、わかりやすく説明してほしい」
- 「公的年金と私的年金の違いが知りたい」
年金には、たくさんの種類がありますね。将来に備え、どんな種類の年金があるのかを把握しておくのは、大事なことです。
しかし、年金といっても、公的年金や私的年金などいろいろあって、混乱してしまうのではないでしょうか?
この記事を読めば、どんな年金の種類があるのか、どの年金があなたに必要なのかがよくわかりますよ。ぜひ最後まで読んでくださいね。
公的年金の支払い額と受取額は、年度ごとに変わります。ここで記載した金額は2021年度の金額です。また、年金は税務上の取り扱いが税制改正などで変更となることがありますので、ご注意ください。
年金は「公的年金」と「私的年金」がある
この記事では年金の種類についてお伝えしていますが、年金には、大きく分けて2つの種類があります。一つは加入義務のある公的年金。一つは任意で加入できる私的年金です。
公的年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入が義務付けられています。
私的年金は、老後必要となるお金を公的年金にプラスして準備することができます。
公的年金と私的年金、いずれも種類がたくさんあるので、これから詳しくみていきましょう。
公的年金には「国民年金」と「厚生年金」がある
最初に公的年金の種類について見ていきましょう。公的年金は国民年金と厚生年金があります。
国民年金(基礎年金)
国民年金は、先述したように、日本に住む人を対象に加入が義務付けられている年金です。
厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金です。厚生年金加入は国民年金に加入していることが条件です。支払いも受取も国民年金に上乗せされます。
種類 | 内容 | |
2階 | 厚生年金 | 会社員、公務員が加入 |
1階 | 国民年金(基礎年金) | 日本に住む人は加入が義務 |
構造はビルのように、階層になっていると考えるとわかりやすいです。1階が国民年金で、2階は厚生年金です。
公的年金は、職業によって加入する年金が変わり、第1号、第2号、第3号と分類されます。
第1号 | 第2号 | 第3号 | |
職業 | 自営業・学生・無職など | 会社員・公務員など | 専業主婦など |
加入する年金 | 国民年金のみ | 国民年金と厚生年金 | 国民年金のみ |
一般的な会社員は、国民年金と厚生年金に加入の第2号被保険者となります。
共済年金については、2015年に厚生年金と一緒になりましたので、この記事では省略しました。
公的年金の受取には6つの種類がある
年金は、受取時は老齢、障害、遺族年金として受け取ります。図のように受取時の年金の種類は6つになります。受取時にあなたの状態に合った年金が支払われます。
例えば老齢になって受け取る場合、国民年金だけに加入していれば、老齢基礎年金を受け取り、厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金+老齢厚生年金を受け取ります。
支払時 | 受取時 |
|||
老齢 | 障害 | 遺族 | ||
2階 |
厚生年金
|
老齢厚生年金 | 障害厚生年金 | 遺族厚生年金 |
1階 | 国民年金(基礎年金) | 老齢基礎年金 | 障害基礎年金 | 遺族基礎年金 |
【公的年金1】老後の備えになる「老齢年金」の種類
それでは、将来あなたが受け取ることができる年金の種類について見ていきましょう。まずは老齢年金からです。老齢年金は老後生活のための年金です。
老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに65歳から受給することができます。
老齢基礎年金
老齢基礎年金は、国民年金加入者が対象の年金です。老後の生活を最低限保証するための年金です。
受給には10年以上の国民年金の支払いが必要です。受給額は支払い期間によって変わります。
老齢厚生年金
老齢厚生年金は、厚生年金加入者が対象の年金です。老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せされる年金です。受け取る年金額は、老齢基礎年金+老齢厚生年金になります。
老齢厚生年金受給には、1ヶ月以上の厚生年金の支払いが必要です。受給額は支払い期間、支払額によって変わります。
種類 | 対象 | |
2階 | 老齢厚生年金 | 厚生年金加入者 |
1階 | 老齢基礎年金 | 国民年金加入者 |
【公的年金2】もしもの時の保険になる「障害年金」の種類
障害年金は、身体、知的、精神に障害がある方が受給できる年金です。まず、障害年金の種類、次に受給額、最後にどのような状態が障害年金の受給対象になるのかをお伝えします。
障害年金の種類
これから、障害年金の種類についてお伝えします。種類は、障害基礎年金と障害厚生年金です。
障害基礎年金
障害基礎年金は、国民年金(基礎年金)加入者が対象の年金です。障害基礎年金の受給額は障害の等級ごとの定額制となります。1級が年間976,125円で、2級が年間780,900円支給されます。
子がいる人は、毎年定額で支払われる年金にプラスして、子どもを養うためのお金も「子の加算」として支払われます。1人目、2人目が年間224,700円加給され、3人目以降は年間74,900円加給されます。
等級 | 金額(年間) | 子の加算(年間) |
1級 | 976,125円 | 1人目・2人目各224,700円
3人目以降各74,900円 |
2級 | 780,900円 | 1人目・2人目各224,700円
3人目以降各74,900円 |
障害厚生年金
障害厚生年金は、厚生年金加入者が対象の年金です。障害厚生年金の受給額は、障害が認定されるまでに厚生年金に加入していた期間と、標準報酬額(あなたの標準的な月収や報酬のこと)によって決まります。
受取額は、障害基礎年金+障害厚生年金になります。1級、2級認定者のうち、配偶者がいる人には、「配偶者加給」として年間224,700円のお金が支払われます。
障害等級 | 金額(年間) | 子の加算(年間) | 配偶者加給(年間) |
1級 | 障害基礎年金(976,125円)
+ 障害厚生年金(報酬比例部分の年金額×1.25) |
1人目2人目…224,700円 3人目以降…各74,900円
|
224,700円 |
2級 | 障害基礎年金(780,900円)
+ 障害厚生年金(報酬比例部分の年金額) |
1人目2人目…224,700円 3人目以降…各74,900円
|
224,700円 |
3級 |
障害厚生年金(報酬比例部分の年金額)最低保証585,700 円 |
|
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種類 | 対象 | |
2階 | 障害厚生年金 | 厚生年金加入者 |
1階 | 障害基礎年金 | 国民年金加入者 |
障害年金については、加入者が万が一、仕事ができなくなった場合には、65歳未満でも受給できます。
報酬比例部分の年金とは、基礎年金に上乗せされる厚生年金部分のことです。受取額は年金加入者(被保険者)の報酬や厚生年金に加入していた期間によって変わります。
例えば、Aさんの厚生年金部分の受取金額が120万円/年の場合、Aさんが1級の認定を受けたならば、Aさんの障害厚生年金部分は、120万円/年の1.25倍の150万円/年になります。
どのような状態が障害年金の対象になるのか?
次に、知的、身体、精神の障害に関して、どのような状態が年金受給の対象になるのかを見てみましょう。
ざっくりとした説明ですが、1級は本人だけでは日常生活が成り立たない、常に援助が必要な状態。
2級は援助があれば、ある程度日常生活はできる状態。3級は就労が困難な状態で、日常生活はできるが、援助が必要な状態をいいます。
障害の等級は障害の程度によってかわります。詳しく障害の程度と、等級を知りたい方は、「厚生労働省・障害の等級」リンクボタンをクリックしてください。詳しく説明しています。
【公的年金3】被保険者の遺族に支払われる「遺族年金」の種類
次に遺族年金についてご案内します。遺族年金とは、年金加入者(被保険者)が亡くなったとき、年金加入者によって養われていた、遺族の生活を保証するための年金です。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金(基礎年金)加入者が対象の年金です。
遺族基礎年金の受給者は、国民保険の加入者(被保険者)の子供と、子供のいる配偶者です。子供のいない配偶者や、被保険者の父母、祖父母は受給できません。
遺族基礎年金の受給額は、年間780,900円+子の加算です。子の加算は第1子、2子が各224,700円。第3子以降が各74,900円です。
金額(年間) | 子の加算(年間) |
780,900円 | 1人目・2人目各224,700円
3人目以降各74,900円 |
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金加入者が対象の年金です。加入者の受取額は、遺族基礎年金+遺族厚生年金となります。
受取額は、被保険者の厚生年金の加入期間や報酬によって異なります。遺族基礎年金+遺族厚生年金を受け取ることができるのは、子供と子供のいる妻です。
子の無い妻、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母は、遺族厚生年金だけを受け取ることができます。
金額(年間) | 子の加算(年間) |
遺族基礎年金(780,900円)
+ 遺族厚生年金(報酬比例部分の年金額×3/4) |
1人目2人目…224,700円 3人目以降…各74,900円
|
報酬比例部分の年金とは、基礎年金に上乗せされる厚生年金部分のことです。遺族の受取額は年金加入者(被保険者)の報酬や厚生年金に加入していた期間によって変わります。
例えば、厚生年金として基礎年金に上乗せされる金額が、120万円/年だとすると、遺族厚生年金の額は、その3/4の90万円/年になります。
種類 | 対象 | |
2階 | 遺族厚生年金 | 厚生年金加入者 |
1階 | 遺族基礎年金 | 国民年金加入者 |
「私的年金」は公的年金の上乗せ給付をする制度
公的年金の他に私的年金があります。私的年金は、公的年金に上乗せの給付を保証する制度です。
公的年金だけでは不足する。ゆとりのある老後を送りたい。そんなニーズに答えるのが私的年金です。
種類は大きく分けて3種類です。企業が掛け金を支払い、自分に合った型を選択する確定給付企業年金と企業型確定拠出型。
個人が掛金を支払い、個人が運用する個人型確定拠出年金があります。
種類 | 掛金支払 | 内容 |
確定給付企業年金 | 企業 | 加入した期間などに基づき、給付額が定められている |
企業型確定拠出年金 | 企業 | 支払った掛金額とその運用収益との合計額をもとに給付額を決定する |
個人型確定拠出年金 | 個人 | 個人が運用し、運用成績によって給付額が決まる。 |
【私的年金1】給付額が決まっている「DB」確定給付企業年金
DB(Defined Benefit Plan)=確定給付企業年金。DBとは、確定給付=退職後にもらえる年金支給額が、あらかじめ決まっているという年金です。会社と従業員の合意で制度が作られます。
企業が契約している金融機関(生命保険会社、信託会社、投資顧問会社など)が、資産運用します。DBを導入している会社の従業員が加入できます。受給は60歳から可能です。
掛金は原則企業負担で、将来受け取る年金額があらかじめ決まっている、税が軽減される、などのメリットがあります。
一方デメリットとして、勤め先が倒産した場合は、受け取りが困難になる可能性があります。
- 受け取るお金があらかじめ決まっている
- 資産運用する金融機関と契約するのは企業
- 原則企業が掛金を払う
- DBを導入している企業の従業員が加入できる
- 受給は60歳から
【私的年金2】掛け金が決まっている「DC」企業型確定拠出年金
DC(Defined Contribution Plan)=企業型確定拠出年金。DCとは、確定拠出=払う掛金があらかじめ決まっている、という年金です。
企業の従業員が自ら運用し、運用益次第で給付額が決定されます。企業が選択した運用商品(保険・定期積立金・投信)を、加入者が選びます。
DCを導入している企業の従業員が加入し、60歳から受給できます。掛金は原則企業負担です。
会社が掛金を払う、税が軽減されるなどのメリットがありますが、選択した金融商品の運用成績が悪いと、受給額が少なくなります。
- 支払う掛金が決まっている
- 資産運用する金融機関と契約するのは個人
- 原則企業が掛金を払う
- DCを導入している企業の従業員が加入できる
- 受給は60歳から
【私的年金3】個人が積立てる「iDeCo」個人型確定拠出年金
iDeCo(individual-type Defined Contribution pension Plan(イデコ)=個人型確定拠出年金。
iDeCoとは、加入者個人が掛け金を支払い、運用し、給付額が決定される年金制度です。あなたがiDeCo対象の金融商品の中から、自分で商品を選びます。
基本的に20歳以上60歳未満の国民年金加入者が加入できます。(2022年5月以降は、65歳未満)受給は60歳からで、掛金は原則加入者負担となります。
税金が軽減されますが、運用に失敗すると資産が減ります。また、投資できる商品が決まっているので、あなたが欲しい金融商品がない場合もあります。
- 支払う掛金が決まっている
- 資産運用する金融機関と契約するのは個人
- 加入者個人が掛金を支払う
- 20歳以上60歳未満の国民年金加入者が加入できる(2022年5月以降は、65歳未満)
- 受給は60歳から
年金の種類を表で確認
ここまで、公的、私的、年金の種類についてご説明してきました。改めて、年金の種類をまとめて確認してみましょう。
表を見ると、年金はどんな種類があるのか、構造の中でそれぞれの年金がどの位置にくるのかなど、年金の全体像がわかります。
表をご覧のように、私的年金は3階にあたります。年金は1階2階3階と順に積み上げていくものです。
(ただし、iDeCoに関しては、国民年金を払っていれば、厚生年金未加入でもiDeCoに年金を積み上げていくことができます。)
私的年金 | 3階 | iDeCo(個人型確定拠出年金) | ||
DB(確定給付企業年金) |
DC(企業型確定拠出年金)
|
|||
公的年金 | 2階 | 厚生年金 | ||
1階 | 国民年金 |
年金の種類まとめ
ここまで、年金の種類についてお伝えしてきました。公的年金は2種類あり、国民年金と厚生年金です。国民年金と厚生年金は老後の備えだけではなく、万が一の時の保険の役割も担っています。
私的年金は大きく分けて3種類あり、DB(確定給付企業年金)と、DC(企業型確定拠出年金)、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。
必要に応じて、税制優遇のある私的年金等も活用しながら、早いうちから将来への準備をしておくのも大事ですね。この記事を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。