引越しの際には今まで住んでいた家を引き払うための退去費用が必要となります。新しい家の契約に気を取られてしまいがちですが、退去費用について知っておかないとトラブルになってしまうことも。
そこで、この記事では、退去費用について紹介していきます。退去費用を安く抑える方法や、退去費用をめぐってトラブルになった場合の対処法も紹介します。この記事を参考にして、円滑に引越しをしてくださいね。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/492732?title=マイホーム&searchId=140223561)
退去費用とは
退去費用は、今まで住んでいた家を引き払うときに必要になるお金です。次の入居者に部屋を貸す前に、部屋をきれいにするために使われます。そのため、修繕費や原状回復費用と呼ばれることもあります。
退去費用のトラブルに多いのが、入居時にはすでにあった傷や汚れを理由に費用を請求されたり、あまりに高額な請求をされたりすることです。
こういったトラブルを避けるためにも、負担する義務のある退去費用はどんなものがあるのか、法律に規定はあるかなどを知っておくことが重要です。
大家負担と入居者負担がある
前章で、退去費用は部屋の修繕に使われると紹介しました。部屋を綺麗に使っていても汚れは出るので、退去費用の支払いは必要です。部屋を借りる入居者には、借りた状態で返す義務(原状回復義務)があるからです。
ただ、部屋は大家の持ち物なので、大家も部屋の修繕費用を負担します。とは言え、大家が負担するのか入居者が負担するのかでトラブルになることもあります。
次章以降で、どういった基準で分けられているのか、それぞれの負担になるものを紹介するので、参考にしてください。
退去費用の中で大家負担になるもの
退去費用の中で大家の負担になるものは以下の通りです。基本的に、経年劣化や通常の範囲内と認められるものは大家の負担になります。賃貸契約書にも同様の記載があることが多いです。
- 床や壁紙の日焼け
- 画鋲の穴があいた壁紙
- 電化製品を置いたことによる壁の黒ずみ
- 家具を置いたことによる床の凹みの修繕費 など
上記で取り上げたものはあくまで一例です。この他にも大家負担になるものもありますし、逆に汚れや傷がひどい場合には入居者の負担になる場合もあるので注意してください。
退去費用の中で入居者負担になるもの
退去費用の中で入居者の負担になるものは以下の通りです。入居者の過失によるものについては、入居者が修繕費を負担する必要があります。
- 結露によってカビてしまった壁紙
- タバコやペットの匂いがついた壁紙
- 引越しなどの家具の移動で傷ついた床や壁紙 など
取り上げたものはあくまで一例です。この他にも入居者の負担になるものもあります。また、悪気はなくても、住んでいる中で大きな汚れや傷ができてしまった場合には、費用を負担しなければいけません。
大家の負担になるのか、入居者の負担になるのかでトラブルになる場合もあります。トラブルを防ぐ方法やトラブルになってしまった場合の対処法については、記事の後半で紹介します。
敷金は戻ってくる?
前章までで、退去費用を誰が負担するのかを紹介しました。入居者の負担になるかどうかは経年劣化や通常の範囲内と認められるかどうかで決まります。入居者の過失と認められた場合には、退去費用の支払いが必要です。
ただ、退去費用は基本的に入居時に支払った敷金から支払われます。敷金から退去費用を支払って余る場合には、払い戻されますし、足りない場合は追加で請求を受ける形になります。
敷金を支払ったのにもかかわらず、敷金の話が一向に出てこないようであれば、大家に掛け合いましょう。
入居時に敷金を支払っていない場合は、退去費用を全額負担する必要があります。
退去費用の特約に注意しよう
ここまで、退去費用の基本的な内容を紹介しました。ただ、賃貸契約書に「特約」として特別に記載がある場合には、過失がなくても退去費用として請求される場合があります。
特約に多いのは、ハウスクリーニング代や壁紙・畳の張り替え費用です。特に敷金が無料である場合に記載があることが多く、過失のあるなしにかかわらず、支払いが義務付けられています。
今一度、賃貸契約書を読み直して、特約がないか確認してください。
どれくらいが妥当?退去費用の相場
退去費用について見てきましたが、「一体どれくらいかかるものなんだ?」と疑問に思う人もいるでしょう。実際、いくらくらいかかるのか相場を知っておかないと、高額請求されても気づかない可能性があります。
ただ、退去費用は部屋の広さや使用状況でかなり幅があります。以下の相場は、部屋の広さごとのハウスクリーニング代です。
間取りタイプ ハウスクリーニング費用 ワンルーム、1K 15,000~30,000円 1DK、1LDK 20,000~40,000円 2DK、2LDK 30,000~50,000円 3DK、3LDK 50,000~80,000円 4DK、4LDK 70,000円~ 引用元:https://www.athome.co.jp/contents/manual/solution/restoration/howmuch/#box02
あくまで一例ですが、部屋が広くなればなるほど料金が高くなる傾向があります。
退去費用を安く抑える方法
前章では、退去費用の相場を紹介しました。退去費用は部屋の使用状況によって大幅に変動するため、過ごし方によっては退去費用を安く抑えることも可能です。
この章では退去費用を安く抑える方法を紹介します。入居時、入居中、退去時の3つの場面に分けて紹介します。
入居時
入居する前には、部屋に不備がないかどうか確認しておきましょう。もともとある汚れや傷でも、不動産会社や大家に知らせなかった場合、退去時に修繕費を請求される可能性があります。
不動産会社や大家に知らせるようにしてください。また、傷や汚れの写真を撮っておくと証拠が残るため、さらに安心です。
スムーズに退去できるように、傷や汚れがあった場合には速やかに不動産会社や大家に連絡しましょう。
また、不動産会社の担当が入居時とは変わってしまう可能性もあります。写真を撮ったり、書面を交わしたりなど、証拠が残るようにすると良いですよ。
入居中
入居したら、部屋を汚さないように気をつけましょう。タバコを吸う場合やペットを飼っている場合は、臭いや傷がつきやすいので特に注意が必要です。壁や床を保護したり、換気をしたりなどの対策をしましょう。
また、DIYで部屋を加工した場合にも、修繕費を請求される場合があります。とはいえ、全く部屋に手を加えてはいけないわけではありません。
例えば、元々ついていた棚を外したとしても、退去時に自分で元に戻すのであれば問題ありません。
退去時
退去時に部屋をよく確認し、傷や汚れがあった場合には、できる範囲で修繕をしましょう。自分で修繕する方が費用が安く済む可能性が高いからです。
市販品の補修キットを利用して、少しでも綺麗な状態にしてみましょう。しかし、うまく修繕しないと、余計に傷や汚れが目立ってしまう可能性もあります。
自分で修繕するのが良いのか、そのまま退去して修繕費を支払う方が良いのか、部屋の状態をよく見て判断してください。
退去費用のトラブルを防ぐ方法と起きてしまったときの対処法
ここまで、退去費用で負担すべきものや相場などについて紹介しました。ただ、敷金を返金してくれなかったり、高額請求されたり、通常の範囲内の解釈をめぐってトラブルになることもあります。
この章では、トラブルを防ぐ方法とトラブルが起きてしまったときの対処法を紹介します。
退去費用のトラブルを防ぐ方法
退去費用のトラブルを防ぐためには、賃貸契約書をよく確認することが重要です。
賃貸契約書で高額請求される危険のある特約や取り決めがないか確認しましょう。また、契約時に退去費用について確認として質問してみるのも有効です。
質問したときに言葉を濁された場合は、契約の文言を大家側の都合が良いように解釈して費用を請求される可能性があります。
退去費用のトラブルへの対処法
退去費用で高額請求されたり、敷金を返金してくれなかったりする場合には、大家に抗議する必要があります。ただ、なんの根拠もなく「高すぎる」「おかしい」などと言っても動いてくれないかもしれません。
退去費用に関しては、国土交通省がガイドラインを示していますし、2020年4月に民法でも同様の内容が盛り込まれました。民法は法的効力があるので、抗議する際の強い味方になるでしょう。
改正前の民法では「経年劣化・通常の範囲内」に何が含まれるのかの規定がありませんでした。改正後は記事前半で紹介したような内容が明記されています。
また、敷金についても返金をする時期などが明確化されました。トラブルになった際は、民法を根拠に抗議してみてください。
まとめ 退去費用への理解を深めてトラブルを避けよう
退去費用について紹介しました。退去費用は賃貸契約や部屋の状態によって、大きく変動します。しかし、中には不当な請求をしてくる大家や不動産会社もあります。
どこまでが入居者の負担になるのかを知っておかないと、不当な請求にも気づけません。記事では入居者の負担となるものと大家の負担となるものを紹介したので、参考にしてください。
また、2020年に改正された民法に退去費用について規定があります。民法の規定を参照して、不当な請求かどうか判断してみてください。
不当な請求であると抗議する際の根拠としても使えますので、ぜひ、チェックしておいてくださいね。