この記事には、自己破産になったときに加入した生命保険をどうしたらいいのか、自己破産後、自分のため、家族のための生命保険に再び加入できるのか?などの不安を解消できる方法が書かれています。
日本人の約90%が生命保険に加入しています。あなたも病気をしたときのため、万一死亡したときに家族に残すため、資産形成のためなどの様々な理由で生命保険に加入しているでしょう。
自己破産になった場合でも大切な生命保険を残す方法や、今加入している生命保険で借金返済を少なくできる方法も一緒に解説していきますので、最後まで読んでみて下さい。
自己破産した場合でも国から取り上げられない財産とは?
自己破産すると全ての財産は取り上げられてしまうんでしょうか?答えは「NO」です。
実は自己破産をしても取り上げられる財産、取り上げられない財産の基準が決められています。ここでは、取り上げられない財産の基準を紹介します。
財産名 | 内容 |
新得財産 | 破産手続き開始後に破産者が新たに取得した財産。 |
差押禁止財産 | 強制執行の1つである差し押さえをすることができない財産。生活必需品など、民事執行法に規定されている「差押禁止動産」や「差押禁止債権」のこと。 |
99万円以下の現金 | 銀行等の「預金」や「貯金」は含まれない。99万円以下の現金のみを指す。 |
自由財産が拡張された財産 | 裁判所の決定により取り上げられないと認められた財産。破産者の最低限度の生活を維持できない場合に適用されることが多い。 |
破産財団から放棄された財産 | 破産財団から放棄された財産は、取り上げなくてもよい財産としても扱われなくなり、処分しなくてもよくなる。 |
自己破産は借金の金額が多すぎて、返済するのが困難な状況で、財産を処分して借金に充てても、それでも返済しきれない場合、借金を事実上ゼロにするという国がつくった制度です。
財産を取り上げて、日々の生活ができなくなってしまうと大変です。自己破産した人でも生活を続けていかなくてはなりません。だから、最低限の生活ができるよう国は取り上げられない財産の基準を設定しています。
自己破産した場合の生命保険は取り上げられるのか!?
ここまで、自己破産したときに取り上げられない基準について説明してきました。ここからは、自己破産する前に加入していた生命保険が自己破産した場合にどう扱われるかについて説明します。
今まで一生懸命保険料を払ってきた生命保険は財産になるもの、財産にならないものの2つに分けることができます。つまり、財産にならない生命保険は国から取り上げられまません。
生命保険には解約したときに払った保険料の一部が戻ってくる解約返戻金があります。解約返戻金を請求する権利はその保険の契約者が持っています。基本的に解約返戻金請求権も破産手続上,資産として扱われます。
破産者が自ら保険を解約して解約返戻金を取り上げていいのかの調査をする破産管財人に渡すか、破産管財人が保険を解約して解約返戻金を直接回収するかの、どちらかを決めるのが原則です。
生命保険の解約返戻金が取り上げられる基準
上記では、生命保険では解約返戻金次第では自己破産のときに資産として取り上げられると説明してきました。ここではその基準について説明します。
取り上げられる基準は解約返戻金が20万円以上であるかどうかです。つまり、20万以下の解約返戻金は資産とならず国から取り上げられません。
しかし、20万円以上解約返戻金がある場合は、その生命保険は資産とみなされ国から取り上げられます。
- 解約返戻金が20万以上→生命保険を解約しなければならない
- 解約返戻金が20万未満→生命保険を解約しなくてもよい
自己破産後、再び生命保険には加入できるの?
結論、生命保険には加入できます。なぜなら、自己破産をしたとしても生命保険契約することができなくなる規定はどこにも無いからです。
〈自己破産した場合のデメリット〉就けなくなる職業、行動制限について
- 裁判所が残っている債務の支払いをしなくてもよいと決定するまでは公務員の委員長や委員、士業など一部の職業に就けなくなります。
- 個人信用情報に事故情報が登録されるため、今後約5年~10年の間で借金をできなります。
つまり、生命保険についての行動制限は設けられていないため、生命保険には加入できます。
知っておくべき生命保険の3つの種類について
ここまでで、今加入している生命保険に解約返戻金の有無で資産になるかどうか決まると説明してきました。ここでは、基本的な生命保険の種類について説明してきいます。
生命保険の種類は、200〜300種類ぐらいあると思っている方が多いです。しかし、実際は基本となる種類は3種類だけです。
生命保険の種類 | 内容 |
定期保険 | 5年〜10年間など保障期間が定まった保険です。一般的に保険料は安く、保障の金額は大きいです。解約返戻金はほとんどないか、あってもごくわずかです。一般的に「掛け捨て保険」と言われる保険です。 |
養老保険 | 定期保険と同様に5年〜10年間など保障期間が定まった保険です。養老保険の特徴は、満期を迎えたときに保障金額が全て満期保険金として返ってきます。養老保険の解約返戻金は支払った保険料が解約返戻金となります。(注意:全額保険料が解約返戻金になるわけではありません。契約からの期間によっても異なります。) |
終身保険 | 保障期間が契約から一生涯続く保険です。終身保険の解約返戻金は養老保険よりも多くはないですが、定期保険より多いのがほとんどです。 |
複雑そうに見える生命保険も実は3種類だけなのです。どの保険会社もこの3種類を組み合わせて保険商品を作っています。
生命保険の「貸付」ができるか確認しましょう
自己破産申請をする前には、お金の心配がどの不安よりも大きくなっています。生命保険に「貸付制度」があることをご存知でしょうか?
生命保険契約は解約返戻金の範囲内でお金を貸付することができます。
コールセンターへ電話だけ、ホームページでの依頼するだけなど現在では貸付を受ける手続きが簡略化されています。もちろんお金を借りるので返済には利子がついてくることには注意しましょう。
ただし、保険金額を受け取るときに減額する、もしくは保険契約を解約するなど今加入している保険契約を小さくするか無くしたりすれば借りたお金を返さずに済む方法もあります。
自己破産に備える生命保険ってあるの?
自己破産を前提に日々の生活を送っている人はいないと思います。しかし、今は軌道に乗っている事業でも世の中の変化で傾くときがくるかもしれません。
そのときに、万が一死亡したとき、老後の資金を少しでも増やすことができ、さらに自己破産にも備えることができる保険があります。
「養老保険」と「終身保険」です。この二つの保険には「解約返戻金」がある場合が多いです。解約返戻金は「貯金」です。養老保険と終身保険はこの解約返戻金が多く溜まりやすいです。
なので、今生命保険に加入することを検討している方は、ぜひ保険料は少し高くなりますが、養老保険か終身保険で探してみることがおすすめです。
「掛け捨てタイプ」だったら自己破産の時に解約しなくてもいい?
ここまで読んでくださった人はもうお分かりだと思います。結論、「掛け捨てタイプ」だったら自己破産の時に解約しなくてもよいです。なぜなら、掛け捨てタイプの保険には解約返戻金がないからです。
掛け捨て保険の特徴:小さい掛け金で大きな保障が持てます。例えば、月額1,500円の掛け金で1,000万円の保障など
もちろん、保険会社によっては定期保険の中にも解約返戻金がある商品もあります。しかし、自己破産時にその解約返戻金が20万円を超えていない場合には資産と見なされず解約を迫られることもありません。
自己破産のとき保険料支払いを親がしている場合どうなる?
子供のときにからずっと親が自分に保険を掛けてくれている人がいます。そのときに自分が大人になり万が一自己破産するとなったときに今の保険はどうなるかを説明していきます。
まず、その保険の契約者が誰なのか?保険料の支払いが誰なのか?を確認します。保険契約の所有権は基本的に契約者です。大抵の場合は、保険料を支払っている人が契約者です。
契約者が自己破産した場合で、解約返戻金が20万円を超えていたら資産とみなされ国から取り上げられます。
つまり、保険料を支払っていない子供が自己破産した場合には、保険契約自体は残ります。
自己破産したときの生命保険の取り扱いについてのまとめ
ここまで読んでくださりありがとうございます。最後にもう一度、自己破産した時の生命保険の取り扱いについて説明します。
自己破産をしたとしても生命保険契約することができなくなる規定はどこにも無いので自己破産した後でも生命保険には加入できます。
生命保険には解約返戻金があります。解約返戻金が20万円を超えている場合には資産としてみなされるので解約返戻金が20万円以上ある生命保険は国から取り上げられます。
一度手元に保険証券があればほとんどの場合は年齢ごとに解約返戻金の額が示されていますので確認してみてください。手元に保険証券がなければ、保険会社に問い合わせたらすぐに再発行できます。