「これから個人再生で債務整理をする予定なんだけど、どうやら自分の情報が官報に公告されるらしい。官報に公告されたらどんな影響があるんだろう。」
このような不安を持っているあなたのために、今回は個人再生による官報公告について詳しく解説していきます。
この記事を読めば、どのタイミングで官報に掲載されるのか、誰が見るのかなど、あなたが気になっている点がきっと明らかになるでしょう。ぜひ最後までお読みくださいね。
(アイキャッチ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2326437?title=%E6%B1%BA%E7%AE%97%E5%85%AC%E5%91%8A%EF%BC%88%E6%B1%BA%E7%AE%97%E6%9B%B8%E3%81%A8%E5%AE%98%E5%A0%B1%EF%BC%89)
個人再生のデメリットの1つ、官報公告とは一体何なのか
個人再生を行うデメリットの1つに「官報に公告されること」があります。「官報」とは国が発行する機関誌で、現在は独立行政法人国立印刷局が編集と発行を行っています。
官報では、国に関する様々な事柄が告示されますが、その中には裁判所からの公告事項も含まれています。
もちろん個人再生に関する事項も裁判所の公告事項の中に入るので、あなたが個人再生をすると、あなたの情報が官報によって公告されます。
公告とは、ある事柄を一般向けに知らせることをいいます。
個人再生をすると官報にどんな情報が掲載されるのか
官報にあなたの情報が掲載されるとわかったら、その内容が気になりますし、どこまでの情報が掲載されるのか不安ですよね?
でも実際に官報に掲載される情報は政令や各省庁、企業に関するものが大半なので、個人再生を行う債権者1人1人の情報はごく限られていますし、そんな大々的に載るわけではありません。
官報に掲載されるあなたの情報は主に以下の5つです。借金の理由や金額などの詳細が掲載されるわけではなく、掲載される個人情報は住所と名前のみです。
- あなたの住所
- あなたの氏名
- 決定年月日時
- 主文(あなたの再生計画が認可されたなどの決定事項の内容)
- 債権者の意見聴取などの届け出期間
ちなみに官報への掲載を拒否することはできません。どうしても住所や名前を掲載されたくない人は別の債務整理の方法を選択する必要があります。その方法に関しては後から説明します。
個人再生で官報に公告されるタイミングは3回
内容がわかるとなると、自分の情報がどのタイミングで官報に載るんだろうと考えることでしょう。結論から言いますと、個人再生によって官報に公告される回数は3回です。
1回目は裁判所によって再生手続き開始の決定が下されたときです。再生手続き開始が決定されると、そのことが官報に公告されます。
2回目は、小規模個人再生であれば裁判所によって再生債権者の書面決議に関する決定がなされたとき、給与所得者再生であれば裁判所によって債権者の意見聴取を行うことが決定されたときです。
3回目は裁判所によって、再生計画認可決定が下されたときです。1回目~3回目のいずれも、債務者であるあなたの氏名や住所が官報に掲載されることになります。
なぜ個人再生をすると官報に公告されるのか
ではなぜ個人再生をすると官報公告されてしまうのでしょう。個人再生に関する事項を官報公告する理由は、債権者や利害関係人に対して、手続きへ参加する機会を確保するためです。
個人再生の申し立ての際に提出される、債権者一覧表に記載されている債権者に対しては、裁判所から再生手続き開始決定書などが送達されますので、それによって手続き参加の機会が与えられます。
しかし債権者一覧表から漏れてしまった債権者には直接連絡がされません。そのような債権者に対しても、個人再生手続きが行われていることを知らせるには、そのことを広く周知できる方法をとることが必要なのです。
それが官報公告というわけです。申し立て人や裁判所が認知しきれなかった債権者に対しても官報公告を行うことで、手続き参加の機会を与えることができます。
官報に公告されると周りにバレる?
官報公告の内容とタイミングはいいとして、公告されることによる影響が気になりますよね。官報は国の機関誌ですから基本的には誰でも閲覧することが可能です。
最近ではインターネット上でも閲覧することができますので、そういった意味では個人再生していることを他人に知られてしまうおそれが、以前よりも増しているといえるでしょう。
とはいえ、官報は毎日発行されており、常に新しい情報が掲載され続けています。しかも情報量はかなり膨大です。しかも誰でも見ることができるといっても、どこにでも売っているものでもありません。
そうなると、官報をかなり頻繁に、かつ念入りにチェックしている人でなければ、ある特定の誰かの個人再生の記載など発見することは非常に困難です。
個人再生で官報に公告される2つのデメリット
官報公告されても実際に周りへの影響はほとんどありませんが、官報公告に関するデメリットもきちんとあることを覚えておいてくださいね。官報公告によるデメリットは主に2つです。
- クレジットカードやローン審査に影響する可能性があること
- 悪質な貸金業者からの勧誘が来る可能性があること
金融業者の中には官報を信用調査として利用しているところが存在し、一部のクレジットカード会社では過去の債務整理者を官報を元にデータ化しています。
よってクレジットカードやローン審査に不利になる可能性があるのです。しかし100%審査に通らないというわけではありません。そこはそのクレジット会社や金融業者によって変わってくるでしょう。
また、官報に掲載された情報から、融資やローンを勧誘してくる、いわゆる闇金業者がいます。ここで闇金業者から借り入れをすると、個人再生のためにしてきた努力が水の泡です。
どんなにうまい話でも、絶対に連絡をとってはいけません。悪質な勧誘は全部シャットアウトしてしまいましょう。
官報の閲覧方法について
前述したとおり、一般人が官報を見る機会はほとんどありませんが、実際に官報を閲覧する方法にはどんなものがあるのかを紹介しておきましょう。
- 官報販売所で購入して閲覧する
- 図書館で閲覧する
- インターネット版の官報を閲覧する
- 官報情報検索サービスを利用して閲覧する
官報販売所で購入して閲覧する
官報は全国各地にある官報販売所で購入することができます。官報を販売している場所は「全国官報販売協同組合」の公式サイトで確認してください。
「全国官報販売協同組合」の公式サイトでは、定期購読も可能です。1ヵ月3,841円(本体 1,520円+消費税121円+送料2,200円)となっています。
図書館で閲覧する
図書館にも官報が置いてることがありますので、そこに行けば官報を閲覧することができます。ただし、過去のバックナンバーを全て保管しているわけではないことを覚えておきましょう。
また、国立国会図書館の「国立国会図書館デジタルコレクション」で、過去のデジタル版の官報がアーカイブされていることもあるため、このようなサービスを使ってみるのも1つの手でしょう。
インターネット版官報で閲覧する
官報は民間が運営する「インターネット版官報」でも無料閲覧することができます。
現在(2020年5月)では直近30日分の官報情報が無料で閲覧できるほか、平成15年7月15日以降の法律・政令や、平成28年4月1日以降の政府調達のPDFデーターが公開されています。
官報情報検索サービスを利用して閲覧する
国立印刷局が運営している有料サイト「官報情報検索サービス」でも、昭和22年5月3日(日本国憲法施行日)以降すべての官報情報が検索できます。
日付と記事による2つの方法で検索ができますが、それぞれ料金が異なりますので注意してください。
- 日付検索
①紙面版の官報を定期行動している場合…無料
②新規申し込みの場合…1,672円(月額・税込) - 日付検索+記事検索
①紙面版の官報を定期購読している場合…528円(月額・税込)
②新規申し込みの場合…2,200円(月額・税込)
個人再生によって官報公告された情報は消すことができるのか
官報に載ってしまった事実を消す方法は実際にあるのでしょうか?しかし前章でも触れたとおり、官報というのは、国立国会図書館にて永久保存されます。
加えて、一度紙面に出されてしまった情報は消すことができないため、官報に載った事実そのものを消す方法はありません。とはいえ個人再生による個人信用情報機関への登録は、いずれ抹消されます。
一般的に個人再生の後、完済から5年程度で個人信用情報機関への登録は抹消され、新たに借り入れができるようになります。
自由な借り入れができるようになるには、いくつかあるうちのすべての個人信用情報機関から情報が抹消されるという条件があるので、注意が必要です。
自分の情報がどのようになっているのか気になる方は、数千円の手数料がかかりますが各個人情報信用機関に情報照会してみましょう。
このように官報に掲載された事実は消すことは不可能ですが、個人再生したことの影響がずっと続いてしまうわけではないため、心配しすぎる必要はないでしょう。
個人再生以外で借金問題を解決する方法
それでもどうしても官報に載りたくない!という方もいると思います。そういった場合は個人再生以外の方法で借金問題を解決する方法を考えましょう。
いわゆる債務整理には4つの種類があります。この中で個人再生と自己破産は官報に公告されてしまいますが、任意整理と特定調停であれば官報に掲載される心配はありません。
任意整理とは
任意整理とは、債権者との任意の交渉によって、毎月の弁済額や完済までの期間を調整する方法です。
この交渉では借金の減額に制限がないため、交渉次第では借金が個人再生より軽くなる可能性はありますが、債権者側にもこれ以上譲歩できないといったラインがあるので、そのぎりぎりを見極める必要があります。
あなたの交渉と債権者次第で、大きく結果が変わってくるので、ある意味個人再生より難しい方法といえるかもしれません。
特定調停とは
特定調停とは、任意整理を裁判所の調停手続きを利用しながら行うという方法です。
通常任意整理は、弁護士などの専門家が介入して、債権者との交渉を行いますが、特定調停では調停委員という人が間に入って、債権者との話し合いを仲介してくれます。
ただし調停委員はあくまで中立な立場なので、必ずしもあなたにとって有利になるとは限りません。しかし弁護士に依頼することなく、自分自身でできる手続きなので、費用をかけたくない方には向いているでしょう。
しかし平日の昼間に裁判所まで行かなくてはいけませんし、自分の交渉がうまくいかなければ任意整理ほどの借金の減額は見込めません。そのような理由から、個人再生や任意整理よりもリスクのある方法といえます。
おわりに
今回は個人再生をすると避けることのできない、「官報公告」について解説しました。個人再生で官報公告されてしまうと、氏名と住所が確実に掲載されてしまいます。
しかし官報は誰でも読めるものの、一般人には馴染みのないものなので、誰かにバレてしまうのではないかと過度に心配をする必要はありません。
とはいえ、どうしても官報に公告されるのが嫌な場合は、任意整理や特定調停といった他の債務整理の方法を検討してみてくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。