2016年の電力自由化に伴い、私たち消費者は自由に電力会社を選べるようになりました。契約先の1つとして「地域新電力」がありますが、どのような事業者なのか知らない方も多いでしょう。
そこで今回は、地域新電力の概要や目的を解説し、気になるメリット・デメリットについても紹介します。本記事を読んでもらえれば、地域新電力の特徴をしっかり把握できるので、ぜひ参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/513dBrMJ_5w)
そもそも新電力って何?
地域新電力への理解を深めるために、まずは新電力がどういうものなのか確認していきましょう。
新電力とは、2016年より本格的にスタートした「電力自由化(電力の小売自由化)」に伴い、新たに参入した小売電気事業者のことです。
従来、電気の供給は大手電力会社が行っていましたが、電力自由化によって様々な企業が電気を小売りできるようになりました。
電力自由化には「電気料金を最大限抑制する」という目的があり、自身のライフスタイルに合う電力会社を選ぶことで電気代の節約が期待できます。
地域新電力は「地域密着型」の新電力のこと
地域新電力とは、地域内で発電した電気をその地域の公共施設や民間企業、家庭に供給する小売電気事業者のことです。
簡単に言えば「地域密着型の新電力」で、その中でも自治体が出資しているものを「自治体新電力」と言います。
地域新電力の主な目的は「地域経済の活性化」です。具体的には、特定のエリアで電気を発電・供給し、事業利益をそのエリアの課題解決や産業活性化に役立てることを目的としています。
つまり、地域内でお金が循環する仕組みを構築することで、地域経済の活性化が期待できるという訳です。後ほど新電力の特徴について解説しますので、詳しくはそちらをご覧ください。
地域新電力と呼ばれる主な電力小売事業者を紹介
全国には数多くの地域新電力が存在します。主な地域新電力は以下の通りです。
- やまがた新電力(山形県)
- 東京エコサービス(東京都)
- 湘南電力(神奈川県)
- 浜松新電力(静岡県)
- 泉佐野電力(大阪府)
- はりま電力(兵庫県)
- みやまスマートエネルギー(福岡県)
上記の地域新電力はごく一部であり、他にも様々なエリアで地域新電力が設立されています。
なお、各エリアの地域新電力については、ネット検索で「地域名(例:東京) 地域新電力」と入力すれば確認可能です。
気になる地域新電力の経営状況について
近年、電力の市場価格が高騰していることから、地域新電力の経営状況について気になっている方も多いでしょう。
パワーシフト・キャンペーン運営委員会と朝日新聞社が行った調査によると、アンケートに回答した地域新電力72社のうち、9割近くが「経営に影響がある」と回答しています。(参考:https://power-shift.org/wp-電力位のcontent/uploads/2022/12/PR_jichitaichiiki_report2022.pdf)
また、今後の経営面の対策として、多くの地域新電力が新規受付や営業停止を検討している状況です。安心してサービスを利用するためには、事前に経営状況をよく確認しておく必要があるでしょう。
採算が悪化しているのは大手電力会社も同じで、2022年度上半期(4〜9月期)決算では東京電力をはじめとする9社が最終赤字を計上しています。
電力の市場価格が高騰している今、どの電力会社を選ぶにしても経営状況の確認は必須と言えます。
地域新電力にはどんなメリットがある?
ここからは、地域新電力のメリットを紹介していきます。主なメリットは以下の3つです。
- 地域経済の活性化に繋がる
- 雇用創出に繋がる
- 環境負荷が減る
地域新電力は「電気の地産地消」を目標とする事業者であるため、地域経済の活性化や雇用の創出に繋がるというメリットがあります。
また、環境負荷が少ない発電方法を採用していることから、環境問題への対策にも繋がると言われています。
以下では、3つのメリットについて詳しく解説していますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
地域新電力のメリット①地域経済の活性化に繋がる
前述したように、地域新電力は「電気の地産地消による地域経済の活性化」を目標とする事業者です。
従来の大手電力会社は大都市に本社を構えており、私たちが支払う電気代はその会社の売上となります。つまり、地方から大都市にお金が流れてしまうということです。
その点、地域新電力は地方に本社があり、消費者が支払ったお金は地元に再投資・還元されます。地域内でお金が循環するため、地域経済の活性化に繋がるという訳です。
地域新電力のメリット②雇用創出に繋がる
地域新電力として安定的に電気を供給するには、発電所のメンテナンスを行う人をはじめ、それなりの人員が必要になります。
新たな事業開発によって雇用を創出できるのも地域新電力のメリットと言えるでしょう。
地方に雇用が生まれて働く人が増えれば、地域内の消費も増えます。その結果、多くのお金が循環し、地域経済の活性化が期待できるのです。
また、雇用が増えることで人口減少への対策に繋がるのもメリットとして挙げられます。
地域新電力のメリット③環境負荷が減る
地域新電力は、各地域の強みを活かした方法で発電を行っており、そのほとんどが環境負荷が少ないものとなっています。
例えば、日当たりが良いエリアであれば太陽光発電、風がよく吹く場所であれば風力発電というように、再生可能エネルギーを利用しているケースが多いです。
上記の点から、地域新電力を利用することで環境問題への対策に繋がると言われています。地域経済の活性化に加えて、持続可能な社会づくりに貢献できるのも大きなメリットです。
知っておくべき地域新電力のデメリット
地域新電力の最大のデメリットと言えるのが、電気代が高くなりやすいという点です。
大手電力会社や一般的な小売電気事業者は、多くの契約を結ぶために電気料金を安くするといった戦略を立てています。
しかし、地域新電力は特定の地域に絞って電力供給を行うため、ライバルが少なく価格競争が発生しにくいです。
さらに限られた地域と電源で利益を出す必要があることから、地域新電力の電気料金は比較的高くなっています。そのため、価格面でデメリットを感じてしまう方も多いでしょう。
まとめ:地域新電力は魅力が多いが欠点もある
今回は、地域新電力について解説しました。改めて地域新電力のポイントを簡単にまとめてみます。
- 地域新電力は「地域活性化」を目標とする小売電気事業者のこと
- 事業利益は地域に再投資・還元される
- 地方の雇用増加が期待できる
- 環境負荷を減らせる
- 電気料金が高い傾向にある
地域新電力は、地域経済の活性化や雇用の創出、環境負荷の軽減など様々なメリットがあります。
消費者にとって電気代が高くなりやすいというデメリットがありますが、自分が住んでいる地域や自然環境のことを考えると、利用するメリットは大きいと言えるでしょう。
なお、多くの新電力が市場価格高騰のあおりを受けていますので、経営状況をよく確認して契約先を選ぶようにしてくださいね。