法テラスを利用するためには、収入要件という基準を満たす必要があります。
法テラスの利用を検討している人は、収入要件の内容について、よく分からないことが多いのではないでしょうか。初めて利用する人にとっては、なおさら分からないものです。
あらかじめ、自分が収入要件の条件を満たしているか確認することで、スムーズに利用したいところですね。
そこでこの記事では、法テラスの収入要件の内容について、9つの項目に渡って解説していきます。
この記事を参考にして、法テラスの収入要件の理解に役立ててください。
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法テラスを利用するためには、収入要件を満たす必要がある
法テラスを利用するためには、収入要件という条件を満たす必要があります。収入額が一定以下でなければ、法テラスを利用できないのです。
収入要件とは、申込者および配偶者の手取り月収額(賞与を含む)が、一定の収入以下になっているかを判断するための審査基準です。
法テラスは「民事法律扶助」と呼ばれる、収入や財産が少ない人に向けた制度として作られています。そのため、法テラスは誰でも利用できるわけではないのです。
法テラスの収入要件の具体的な基準とは
法テラスは収入要件に関して、具体的な基準を設けています。収入要件の基準に関しては、以下の表の通りです。
人数 | 手取り月収額の基準※1 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額※2 |
1人 | 18万2,000円以下 (20万200円以下) |
4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 25万1,000円以下 (27万6,100円以下) |
5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 27万2,000円以下 (29万9,200円以下) |
6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 | 29万9,000円以下 (32万8,900円以下) |
7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
- ※1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算。
- ※2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用。
- 申込者等と同居している家族の収入は、家計の貢献の範囲で申込者の収入に合算。
- 離婚事件などで配偶者が相手方のときは収入を合算しない。
- 手取り月収額は、「収入-(税金+社会保険料)」で計算
出典:https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/faq/faq_2/index.html
法テラスでは、申込者および配偶者の手取り月収額(賞与を含む)が、前述の表の基準以下であることが条件となっています。
また、マンションやアパートなどに住んでいる時に発生する家賃や、住宅ローンを支払っているときには、一定の範囲内であれば基準額に加算できます。
さらに、家族の人数や生活保護の有無によって基準額が上がるのです。収入要件は、申込者の状況に応じて、基準額が緩和されるように考慮されているのです。
法テラスの収入要件は、配偶者の収入も判断される
法テラスの収入要件は、申込者に配偶者がいる場合、配偶者の手取り月収額もあわせて判断されます。そのため、収入要件は夫の手取り月収額だけを考慮すれば良いわけではありません。
配偶者がいる場合に法テラスを利用するときには、夫の手取り金額だけでなく、妻の手取り月収額も計算してましょう。そして、夫と妻の合計手取り月収額を把握してください。
配偶者との離婚を申し込む場合などは、配偶者の手取り月収額は、申込者の手取り月収額に加算されません。
生活上やむをえない支出がある場合は、収入要件に考慮される
法テラスでは、手取り月収額だけでなく「生活上やむをえない支出」も、収入要件に考慮される場合があります。手取り月収額から支出分を控除することで、基準額を緩和することができます。
そのため、手取り月収額が基準額を上回っている場合でも、収入要件を満たすことができるのです。
ちなみに、法テラスが定めている「生活上やむをえない支出」の例を挙げると、次の通りです。
- 医療費
- 教育費
- 仕事をするうえで必要不可欠な出費
出典:https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/faq/faq_2/index.html
前述した支出以外にも、「生活上やむをえない支出」として考慮される可能性があります。そのため、やむをえない支出として考慮されるかどうか、法テラス利用時に窓口で相談してみるといいでしょう。
次の項目から法テラスの収入要件について、具体例を挙げながら説明していきます。
法テラスの収入要件の具体例①単身者
まずは、サラリーマンとして働いている20代男性の単身者を例に、法テラスの収入要件について説明していきます。例を挙げると、以下の通りです。
- 【手取り月収額】15万円
- 【年間賞与】40万円
- 【月額家賃4万円】
※月の手取り月収額は、「収入-(税金+社会保険料)」で求められます。
- 【判定される月収額】15万円 + 約33,333円(年間賞与を12ヶ月分で割った金額) = 18万3,333円
- 【手取り月収額の基準】18万2,000円(1人までの基準額) + 4万円(月額家賃分を加算) = 22万2,000円
計算の結果、判定される月収額は18万3,333円であり、手取り月収額の基準は22万2,000円であることが分かりました。
よって、20代男性の単身者は収入要件を満たすため、法テラスを利用することができます。
法テラスの収入要件の具体例②2人家族
次に、サラリーマンとして働いている20代男性と、パートとして働いている20代女性の夫婦を例に、法テラスの収入要件について説明していきます。例を挙げると、以下の通りです。
- 【男性の手取り月収額】16万円
- 【男性の年間賞与】40万円
- 【女性の手取り月収額】10万円
- 【女性の年間賞与】なし
- 【月額家賃】5万円
- 【判定される月収額】16万円 + 約33,333円(年間賞与を12ヶ月分で割った金額) + 10万円= 29万3,333円
- 【手取り月収額の基準】25万1,000円(2人までの基準額) + 5万円(月額家賃分を加算) = 30万1,000円
計算の結果、判定される月収額は29万3,333円であり、手取り月収額の基準は30万1,000円であることが分かりました。
よって、20代の夫婦は収入要件を満たすため、法テラスを利用することができます。
法テラスの収入要件の具体例③3人家族
最後に、サラリーマンとして働いている30代男性と、パートとして働いている30代女性の夫婦に、5才の子供がいる場合を例に挙げます。
こちらの3人家族を例に、法テラスの収入要件について説明すると、以下の通りです。
- 【男性の手取り月収額】23万円
- 【男性の年間賞与】50万円
- 【女性の手取り月収額】8万円
- 【女性の年間賞与】なし
- 【月額家賃】6万円
- 【判定される月収額】23万円 + 約4万1,666円(年間賞与を12ヶ月分で割った金額) + 8万円= 35万1,666円
- 【手取り月収額の基準】27万2,000円(3人までの基準額) + 6万円(月額家賃分を加算) = 33万2,000円
計算の結果、判定される月収額は35万1,666円であり、手取り月収額の基準は33万2,000円であることが分かりました。
残念ながら、30代夫婦と子供1人の3人家族は収入要件を満たせないので、法テラスを利用することができません。
ただし、月々の子供への学費や医療費といった「生活上やむを得ない支出」があるときには、支出分を手取り月収額から控除できるのです。
そのため、収入だけでなく、月々の学費や医療といった支出も把握するようにしましょう。
法テラスを利用するためには、収入要件以外にも条件がある
ここまで、法テラスの収入要件について解説していきました。法テラスを利用するためには、収入要件だけでなく資産要件も満たす必要があります。
資産要件とは、申込者および配偶者が、不動産(自宅や裁判で争っている物件は除く)、有価証券などの資産がある場合、これらの合計額が一定の基準額以下になっているかを判断するための審査基準です。
なお、法テラスが定めている資産要件の基準額は、次の表の通りです。
人数 | 資産合計額の基準※1 |
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
- ※1:将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除(無料法律相談の場合は、3ヵ月以内に出費予定があることが条件)
- 無料法律相談の場合は、申込者等の有する「現金、預貯金の合計額」のみで判断
- 離婚事件などで配偶者が相手方のときは資産を合算しない
出典:https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/faq/faq_2/index.html
法テラスを利用するときには、収入要件だけでなく資産要件も考慮して、自分が基準を満たせているのかを確認しましょう。
シミュレーションで収入要件などを満たしているか確認できる
法テラスを利用するために、自分で収入要件や資産要件を確認することは難しいかと思います。
そこで法テラスでは、「要件確認体験ページ」というシミュレーションができるサイトを公開しています。「要件確認体験ページ」では、自分が条件を満たせているかどうかを確認できるのです。
「相談内容」や「家族人数」などの6つの項目にそれぞれチェックを入れ、必要情報を入力することで、条件を満たせているかどうか判定できます。ぜひ、活用してみてだくさい。
シミュレーションの判定結果は、実際の判定結果と必ずしも一致するわけではありません。あらかじめご了承ください。
まとめ
ここまで、法テラスの収入要件に関して解説していきました。法テラスを利用するためには、収入要件と呼ばれる基準額を満たす必要があります。基準額は、法テラスに申し込む本人の家族構成によって異なります。
また、手取り月収額だけでなく、家賃や住宅ローン、「生活上やむをえない支出」を含めて、総合的に基準額が判断されます。
自分で収入要件などの全ての条件を満たせているか確認することは難しいです。そのため、「要件確認ページ」を活用して、条件を満たせているか確認してみましょう。
この記事を読んで、自分が法テラスの収入要件を満たせているか理解できたらうれしいです。