「法テラスで無料相談できるって聞いたけど、何でも相談できるの?」
法テラスは、無料で法律相談ができる国の機関です。法テラスと契約している弁護士や司法書士が相談するので、専門的な内容も質問することができます。
この記事では、法テラスの無料相談を利用するための条件や、無料相談を利用するときに準備する書類も紹介するので、法テラスの利用を考えている場合は、読んでみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2223249?title=%E6%8F%A1%E6%89%8B%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%8B%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%85%83)
法テラスってどんなところなの?
法テラスは、正式名称を「日本司法支援センター」と言い、国が運営する機関です。
法的トラブルがあったときに、どこに相談すればいいのかわからない、お金が無くて相談しづらい、などの問題を解決するために平成18年に設立されました。
法テラスでは主に次の5つの業務をしています。(法テラス公式サイトより一部抜粋)
情報提供業務 | 利用者からの問い合わせに、法律に関する情報や、相談機関(弁護士会、司法書士会など)の情報を提供する |
民事法律扶助業務 | 経済的に厳しい人がトラブルにあったときに、無料で法律相談を受けたり、弁護士等の費用の立替をする |
犯罪被害者支援業務 | 犯罪の被害にあった人や家族に必要な支援や、刑事事件の対処、損害の修復のための法制度に関する情報を提供する |
国選弁護等関連業務 | 国選弁護人との契約や、指名、裁判所への通知、報酬の支払いなどを行う |
司法過疎対策業務 | 身近に法律の専門家がいないなど、法律サービスが充実していない過疎地域に法テラスの事務所設置を行う |
(参考:https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/houterasutowa/index.html)
法テラスの無料相談で相談できることは?
法テラスでは、基本的に民事事件であれば相談ができます。刑事事件については、相談ができません。民事事件と刑事事件の違いは次のようになります。
- 民事事件:人と人、または企業と企業などの民間同士の争い
- 刑事事件:裁判所に起訴された人が犯罪を犯したか、罰を与えるかどうか確認する
民事事件であれば、離婚や著作権、損害賠償請求など様々なものにわたります。民法や商法に記載されている内容の事件であれば、民事事件になるでしょう。
各都道府県の法テラスによっては、相談内容により予約できる日が限定されています。原則は住居の最寄りの法テラスを利用しますが、職場の近くの法テラスを利用しても問題ありません。
法テラスの無料相談を利用する前にすること
法テラスの無料相談を利用する流れは次のようになります。無料相談の利用には条件があるので、事前にサポートセンターに問い合わせをしましょう。無料相談ができるか確認できます。
- 法テラスサポートセンターに無料相談を受けられる条件に該当するか確認する
- 相談の日程を予約する
- 法テラスで相談する(1回につき30分まで、1つの問題は3回まで相談可能)
法テラスの相談時間は1回30分までで、1つの問題について3回まで相談することができます。また、無料相談を利用する条件は、このあと詳しく解説しますが、次の条件を満たしているか自分でも確認しましょう。
- 資産条件(収入と預貯金の金額が一定金額以下か)
- 民事法律扶助の趣旨に適していること(嫌がらせ目的など自分の感情のために相談をしていないか)
- 勝訴の見込みがあること
無料相談を受けるだけならば、①と②を満たせば問題ありません。➂は裁判をする場合の条件となります。
また、法テラスのサポートセンターは、電話とメールで受付をしています。
- 電話受付:0570-078374(”お悩み無し”のゴロになっています)平日9時~21時、土曜日9時~17時
- メール:24時間受付
サポートセンターで無料相談ができると確認が取れたら、相談日程が予約できます。事前に準備する書類もありますが、これは別の章で詳しく紹介しますね。
法テラスの無料相談の利用条件①資産条件
法テラスの無料相談を利用する条件の1つ目は、「資産条件」です。無料相談を受けるには、一定金額以下の収入や財産であることが条件になります。
収入の条件
収入条件は家族が何人いるかによって金額が変わります。金額は手取り収入で決まるので、税金や保険料は考えなくて問題ありません。同居している家族に収入がある場合は、それを加算して条件に合うか確認します。
家族の人数 | 手取り収入の基準 | 家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額 |
1人 | 18万2,000円以下 | 4万1,000円以下 |
2人 | 25万1,000円以下 | 5万3,000円以下 |
3人 | 27万2,000円以下 | 6万6,000円以下 |
4人 | 29万9,000円以下 | 7万1,000円以下 |
※住居が東京や大阪などの都市の場合は、上記の金額に加算がされます。また、家族が4人以上になる場合は、1人増えるごとに33,000円追加されます。
家賃や住宅ローンがある場合は、手取り収入に限度額まで加算した金額が収入条件となります。家族が2人の場合は、【25万1,000円+5万3,000円=28万4,000円】以下であれば、条件を満たします。
財産の条件
財産の条件では、無料相談を受ける場合は現預金のみの合計金額、裁判をする場合は現預金と不動産や株などの有価証券の時価を合計した金額が基準となります。
家族の人数 | 資産合計額の基準 |
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
※将来支払いがある医療費や教育費などの金額が判明している場合は、資産合計額から引いた金額が基準となります。
離婚を相談する場合は、配偶者の収入や資産は合計せずに、収入と財産の条件をチェックします。
法テラスの無料相談の利用条件②民事法律扶助の趣旨に適している
法テラスの無料相談を利用する条件の2つ目は、「民事法律扶助の趣旨に適している」です。民事法律扶助の趣旨に適しているとは、「自分の感情を満足させるために利用するのではない」ということです。
例えば、離婚について相談する場合、離婚の原因が浮気であれば、浮気をした方とその相手に慰謝料を請求するのは問題ありません。しかし、浮気をされた証拠が十分では無いと、裁判は起こせませんよね。
証拠が無いのに「この人は私の夫(妻)と浮気した!二度と付き合えないようにする!」という嫌がらせ目的で裁判を起こすのは、自己満足のためと認識されて、相談を断られてしまいます。
法テラスに相談するときは、自分の感情を満足させるために裁判を起こそうとしていないか、確認をしておきましょう。
法テラスの無料相談の利用条件➂勝訴の見込みがある
法テラスの無料相談を利用する条件の3つ目は、「勝訴の見込みがある」です。この3つ目は、無料相談を受けるための絶対の条件ではありません。
法テラスで相談して裁判をする場合は、弁護士等への報酬を自分で支払いしなければいけません。もし、裁判で敗訴した場合は、相手に損害賠償や慰謝料を支払い、さらに弁護士への報酬を払うことになります。
法テラスは、経済的に厳しい人が利用することが多いため、敗訴の場合は金銭の負担が重くなります。勝訴の見込みがあって、報酬を得ることができなければ、裁判はできません。
原則は、勝訴の見込みがある場合ですが、和解や調停、示談で解決できる場合でも引き受けてもらえるので、相談してからでもどうするか決められますね。
無料相談では、弁護士または司法書士を選べない
法テラスの無料相談は、弁護士や司法書士に条件を満たせば、無料で民事事件の相談ができますが、1点デメリットがあります。
担当してもらう弁護士や司法書士を相談する側が選べないことです。例えば、離婚案件に強い弁護士を希望していたけど、専門ではない分野の弁護士が担当になってしまう可能性もあります。
法テラスで相談した弁護士が合わない場合は、事前に相談したい分野に強い弁護士を探しておいて、費用の立替制度を利用する方法もあります。
裁判をする場合は、原則法テラスの無料相談を受ける必要がありますが、自分で弁護士を探している場合は、無料相談は不要となります。
無料相談で事前に準備しておく書類
無料相談の予約ができたら、当日までに書類を用意しておいた方が相談がスムーズに進みます。予約するときに、当日どのような書類が必要か確認できますので、指示されたものを持参しましょう。
弁護士費用の立替を申請する場合も必要になるので、必ず準備しておきましょう。相談内容に関係なく必要になる書類は、次の3つです。
- 資力を証明する書類
- 援助申込書・資力申告書
- 住民票
資力を証明する書類
法テラスの無料相談を受ける条件として、収入などが一定金額以下であると説明しました。それを証明する書類が必要になります。次のものをそろえておきましょう。
- 直近2ヶ月~3カ月の給与明細
- 直近1年の確定申告書(税務署の受付印が押してあるもの)
- 直近の課税証明書
- 生活保護を受けている場合は、直近の生活保護受給証明書
- 直近の年金証書(通知書)の写し ※基礎年金番号の記載がないもの
援助申込書・資力申告書
援助申込書は、無料相談する前に法テラスで記入をします。相談日当日でも記入できますが、事前に記入内容を確認して提出した方が、弁護士も正確に相談内容を確認できます。
資力申告書は、収入や財産、家族構成について申告するものです。現預金や生命保険の解約返戻金など細かく記入する必要があるので、あらかじめ確認しておきましょう。
両方とも書式は法テラスのホームページにあるので、ダウンロードして記入します。(パソコンで入力したものを提出しても問題ありません。)
住民票
住民票は申請者と住居が記載されているだけのものでは、提出できません。次の内容をすべて含んでいるものを取得しましょう。
- 発行日が相談日より3カ月以内のもの
- 申請者の氏名、住所
- 申請者の本籍地(住所とは違います)
- 筆頭者
- 申請者の世帯全員の氏名
- 続柄(親、子ども、兄弟の関係がわかるもの)
家族全員の名前が記載されているものが必要になるので、間違って申請者だけが記載されている住民票を取得しないように注意しましょう。
弁護士・司法書士費用は立替になる
法テラスでは、無料相談はできますが、弁護士または司法書士費用は無料にはなりません。ただし、条件を満たせば弁護士などに払う費用は立て替えてもらえます。
立て替えてもらえるのは、弁護士に払う着手金や実費、書類の作成費用です。依頼するときに着手金を払うのが難しいときは、助かりますね。
立替費用は、分割して毎月返済していくことになります。弁護士事務所に依頼するよりは安く済むので、収入が厳しい人にとっては、費用を抑えて解決できますね。
費用を立て替えてもらうには、先ほど説明した条件の1~3をすべて満たす必要があります。もし、無料相談を利用して勝訴の見込みが無い場合は、弁護士事務所などに依頼になるでしょう。
法テラスで無料相談するにはどうすればいい? まとめ
今回は、法テラスの無料相談をするための条件や注意点を紹介しました。法テラスを上手く利用すれば、弁護士に依頼する費用を安く抑えられるので、経済的に厳しい人にとって非常に助かる制度です。
最後に法テラスの無料相談を利用するときの条件を再度確認しましょう。
- 収入や資産が一定金額以下か
- 相談内容が法律で解決できる内容で、自己満足することが目的ではないか
- 勝訴または調停、和解などで解決できる見込みがあるか
もし、困ったことがあり弁護士に依頼したいけど、金銭面で厳しいという場合は、まずは法テラスに連絡してみてはいかがでしょうか。