「借金をしたけど返済ができない」と困っている方はいますか?実は、借金には時効があるのです。借金が時効になってしまえば借金を返済する必要はなくなります。
この記事では、借金の時効について説明していきます。借金の時効について知りたい、借金の時効を成立させたいと思っている方はぜひこの記事を読んでみてください。
(トップ画像出典:https://pixabay.com/ja/photos/%E6%9B%B8%E3%81%8D%E8%BE%BC%E3%81%BF-%E3%83%9A%E3%83%B3-%E7%94%B7-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF-1149962/)
個人の借金の時効成立とは
時効とは
民法では時効が2つあります。1つが消滅時効で、もう1つが取得時効です。借金の時効とは消滅時効のことを指します
消滅時効とは、債権者が債務者に対して請求等をせずに,法律で定められた一定期間が経過した場合に,債権者の法的な権利を消滅させる制度をいいます。
つまり、一定期間債務者が借金の返済をせず債権者も行動を起こさなかった場合、債権者の借金を返済してもらう権利がなくなるということです。
時効が成立するには
時効が成立するには、起算日から一定期間経過し、時効の援用を行う必要があります。
起算日とは時効としてカウントされ始める日のことです。起算日がいつになるかは借入の際の条件によって変わってきます。
時効の援用とは借金が時効になっていることを法的に証明し、借金を放棄すると意思表示することです。
時効成立までの期間
では、どのくらいの期間が経過すれば時効が満期になるのでしょうか。
起算日から時効が満期に達するまでの期間は権利の性質によって異なります。個人間の借金(民事債権)の場合は10年、賃貸業者からの借金(商事債権)は5年と決められています。
借入先 | 時効までの期間 |
銀行
消費者金融などの法人 |
5年 |
個人 | 10年 |
民事債権か商事債権かによって、時効成立までの期間が5年も異なるので注意してください。
時効の始まりは
では、時効が開始されるタイミング(起算日)はいつなのでしょうか。考えられるパターンは以下の3つです。
- 返済期日を定めている
- 返済期日を定めていない
- 返済期日が不明
こちらの3パターンについて、それぞれ時効が開始されるタイミング(起算日)がいつなのかを紹介していきます。
返済期日を定めている
借金返済日が決まっている債務のことを確定期限付の債務といいます。確定期限付の債務は返済期日の翌日を起算日とします。
4月1日が返済期日だとすると、翌日の4月2日が起算日となります。
返済期日を定めていない
返済期日を定めていない場合は、契約を結んだ日(借入日)の翌日が起算日となります。
4月1日に契約を結んだのであれば、翌日の4月2日が起算日となります。
返済期日が不明
返済期日はあるけれど、いつが返済期日になるのか分からない債務を不確定期限付の債務といいます。不確定期限付の債務は、期限がきた日の翌日が起算日となります。
例えば、親の遺産が手に入ったら返済すると約束していたとすると、親の遺産が手に入った日が期日です。そして、その翌日が起算日となります。
4月1日に親の遺産が手に入ったとしたら、翌日の4月2日が起算日となります。
時効が中断される条件
借金を返済しなければ、時効が成立してしまうのではお金を貸したいと思う人はいないでしょう。
そのため、債権者には債務者の時効を一時停止・中断させる手段があります。以下の5つが時効を一時停止・中断させる主な手段です。
- 訴訟の提起
- 支払督促
- 郵便による督促
- 差し押さえ
- 債務の承認
訴訟の提起
訴訟の提起とは、訴訟を起こすことです。長期間、借金の返済を怠っていると債権者が返済を求めて訴訟を起こす場合があります。
これは貸金返還請求訴訟といい、この手続きにより時効が中断します。
訴訟を起こされると、債務者のもとに訴状や答弁催告状(とうべんさいこくじょう)、口頭弁論期日呼出状が送られてきます。
また、債権者が債務者の住所を知らないとしても、公示送達という方法で裁判を起こし、時効を中断することが可能です。
支払督促
支払督促とは債権者が、契約書や債務確認書などの証拠品を持参して簡易裁判所に申し立てを行うことです。
申し立てが受理されると、裁判所が債権者の代わり債務者に返済請求を行います。これにより、債務者の時効は一時停止しますので、覚えておきましょう。
また、支払督促を行ってから、2週間以内に債務者から異議申し立てが行われなければ、債権者は30日以内に仮執行宣言の申し立てを行うことができるようになります。
債権者が仮執行宣言の申し立てを行うと、債務者の時効は中断します。債務者が異議申し立てを行うか、債権者が仮執行宣言の申し立てを行わなければ、時効は再度有効となるのです。
郵便による督促
郵送による督促は、借金の返済要請の旨が書かれた督促の書類を債務者に内容郵便で送ることです。
郵送による督促は時効を中断させることはできませんが、6か月間だけ時効を停止させることができます。時効を停止させた6か月間何もなければ、6か月後に時効が再開します。
差し押さえ
債権者が必要な手続きを行い強制執行力のある債務名義を持っている場合、差し押さえを行うことができます。債権者が債務者の給料や貯金の差し押さえを行うと時効が中断します。
債務の承認
債務の承認とは、債務者が債務の存在があることを認めたことを指します。
- 支払約束証や借用証へのサイン
- 債務の一部返済
- 期日の延期の要請
上記の3つのように、債務者が債務があることを証明するような行為を行うことが、債務の承認に当たります。
また、債務の承認は時効の満了後も有効です。時効の万期終了後に債務の承認を行うと、時効が取り消されてしまいます。
時効の援用
時効の満了後に、時効の援用を行うことで債務を放棄することができます。時効の援用は、内容証明郵便を債権者に送ることで行います。
内容証明郵便とは、どんな手紙を、いつ、誰が、誰宛てに出したのかを郵便局が証明する郵便のことです。
時効援用通知書を書く際には以下の4つを忘れずに書くようにしましょう。
- 通知書をおくった日付
- 債権の内容特定
- 時効の満了
- 時効の援用を行うこと
通知書をおくった日付
通知書を送った日付を書き忘れてしまうと、債権者に時効成立前に送られたものだと主張されてしまう恐れがあります。必ず、通知書を送った日付を記載するようにしましょう。
債権の内容特定
債権の内容特定とは「誰が・誰に・どの借金の時効を援用するか」を記すことです。以下の8つを書いてください。
- 債権者の会社名、住所・代表名
- 借入人
- 印鑑
- 借入人の住所
- 借入日
- 借入金額
- 契約番号
- 生年月日
時効の満了
時効が完了しているということを具体的な日付を用いて記載してください。
時効の援用を行うこと
「本通知書をもって時効を援用いたします」という文言を入れてください。
個人の時効を成立させ借金をなかったことにするのは困難
時効を中断すれば借金をなかったことにできますが、実際のところ時効を成立させることはかなり困難です。債権者が金融業者であれば、ほぼ確実に時効を中断させてくるでしょう。
また、債権者が友人であったとしても借金を返済してもらうために弁護士などに相談する可能性が高いです。弁護士に相談することで、時効が成立しないよう手を打つことができます。
どの場合でも、債権者は簡単には時効を成立させてはくれないでしょう。時効が成立するとしたら、借金額がかなり少ないときくらいだと思っておいたほうが良いです。
現実的に考えると、借金の時効を成立させようだなんて思わないほうが良いですね。
個人の借金の時効援用のデメリット
借金の時効を成立させるメリットとしては、借金の返済義務を放棄できるということですが、借金の時効を成立させることにはデメリットもあります。時効を成立させるデメリットは以下の2つです。
- 借金を踏み倒した機関で半永久的に借入ができなくなる
- 失敗した時に多額の利息や遅延賠償金がかかる
借金を踏み倒した機関で半永久的に借入ができなくなる
時効の援用を行うと、信用情報機関に記載されてしまいます。そのため、5年間借入やローンを組むこと、クレジットカードを作ることができません。
また、5年が経過した後も時効の援用を行った機関には永久に記録が残り続けるので、利用することはできないでしょう。
失敗した時に多額の利息や遅延賠償金がかかる
債権者によって時効が中断されるなど、時効の援用に失敗したとします。すると、それまで支払ってこなかった利息や、支払いを遅延したことに対する遅延賠償金がかかってきます。
時効を成立させることができなければ、借金がなくならないどころか大幅に増えてしまうということを、頭に入れておいてください。。
個人の借金の時効援用を狙うことについて
そもそも借金の時効を成立させようという行為自体良いものではないでしょう。
借金を踏み倒せればあなたは得をするのかもしれませんが、その代わりにあなたにお金を貸した貸金業者や友人は大きな損害を被ってしまいます。
借りたものを返すことは当たり前の行為です。自分勝手に借金を踏み倒そうなどと考えるのではなく、借金はしっかりと返済するものだと考えましょう。
借金を返済することがもったいないような気がするのは分かりますが、借金はしっかり返済することをおすすめします。
個人の借金の時効をねらうより債務整理を行う
借金がどうしても返済できないのであれば、時効を成立させるよりも良い方法があります。それは、債務整理を行うことです。
良く利用される債務整理は任意整理、個人再生、自己破産です。それぞれについて説明していきます。
任意整理
任意整理とは債権者と債務者が話し合いを行って借金を決めなおすことです。債務者の代理人として弁護士や司法書士が話し合いを行います。
任意整理を行うことで、将来発生する利息をカットできたり、返済期限を延長してもらうことができるかもしれません。
ただし、債務整理を行うと信用情報に登録されてしまい、借入やローン、クレジットカードの作成が5年間できなくなってしまいます。
個人再生
個人再生とは裁判所を通して借金を減額できる制度です。個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがあります。
小規模個人再生はサラリーマン、給与所得者等再生は事業主が行うものだと考えてもらえればよいです。
小規模個人再生を行うと最低弁済額と所有する財産の総額が多いほうを返済額とします。最低弁済額は以下の表に記します。
借金総額 | 最低弁済額 |
0円~100万円 | 全額 |
100万円~500万円 | 100万円 |
500万円~1500万円 | 借金の5分の1 |
1500万円~3000万円 | 300万円 |
3000万円~5000万円 | 借金の10分の1 |
個人再生を行うと信用情報に登録されるだけでなく、住所氏名が官報という国が発行する機関誌に掲載されてしまいます。
自己破産
自己破産を行うと、借金の支払い義務を放棄することができます。
ただし、裁判所が定める一定以上の財産はすべて没収。信用機関への登録。官報への掲載。一部の職業・資格が制限されてしまうなどのデメリットがあります。
個人からの借金の時効について まとめ
いかがでしたでしょうか。最後にこれまでの内容をまとめておさらいしましょう。
- 時効を成立させるには、起算日から一定期間経過したの、時効の援用を行う
- 時効の期間は借入先によって5年、もしくは10年となる
- 起算日は条件によって様々
- 時効を中断する手段がある
- 時効を成立させるのは困難
- 借金が返済できないのであれば債務整理を行うべき
借金にも時効は存在しますが、時効を成立させるのはほぼ無理でしょう。借金が返せないのであれば債務整理などの時効以外の方法をとることをおすすめします
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