2003年のピーク以降、自己破産の手続き申請の件数は減ってきています。ですが2020年現在でも借金で多くの人が苦しんでいるのは事実です。
今回は、多額の借金を背負い自己破産を考えている方に向けて、自己破産の手続き方法について解説をしたいと思います。
自己破産手続きは流れをしっかり理解すれば難しいものではありません。
この記事では、前半で自己破産手続きの流れについて解説し、後半部分では自己破産手続きの際に発生する疑問について解説しています。
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自己破産手続きの流れ
自己破産とは、借金によって経済的に生活が立ち行かなくなってしまった場合に、裁判所で財産を清算することを指します。
自己破産申し立てをする際には「破産手続き」と「免責手続き」、2つの手続きをしなければなりません。
破産手続きと免責手続きは全く別物ですので間違えないようにしてください。
破産手続き
破産手続きとは、破産した債務者の財産をお金に変えて、債権者(お金を貸した側)に返済をする手続きのことです。
この破産手続きは、申し立て時点での債務者(お金を借りた側)の経済状況によりさらに3つの方法に分類されます。
- 同時廃止事件
- 管財事件
- 少額管財事件
どの破産手続きが適用されるかは、債務者当人が所有している財産状況によって決まります。3つの破産手続きの違いについては次章より詳しく解説していきます。
免責手続き
免責手続きとは、裁判所に免責(債務の免除)の申し立てをすることです。この手続きが受理されると、借金の支払い義務がなくなります。
基本的に免責されるかどうかは「破産管財人」による調査と、裁判所による審尋を経て決定されます。
「破産管財人」とは、裁判所によって選任され、破産手続時の「財産の換価」や「債権者への配当」、「免責判断の調査」などを行う専門家のこと。基本的には、地域の弁護士の中から選任される。
破産手続きの種類①「同時廃止事件」
「同時廃止」とは、自己破産申し立てをする当人が高額な財産を所持していない場合、破産手続きが開始と同時に終了し、即座に免責手続きへ移行するという制度です。
上記の高額な財産とは、「33万円以上の現金」、もしくは「価値が20万円以上のもの」(住宅、自動車・バイク、現金、生命保険など)を指します。
つまり、財産をお金に変えることも債権者への配当も不可能だと裁判所が判断した場合、同時廃止が適用されます。
同時廃止が適用された場合、申し立ては以下の7つの手順で進んでいきます。
- 破産手続き開始・免責許可の申し立て
- 破産の審尋
- 破産手続き開始と同時廃止の決定
- 官報への公告
- 免責の審尋
- 再度官報への公告
- 免責決定
同時廃止が適用された場合の期間
同時廃止が適用された場合、一般的に申し立てから3〜4ヶ月程度で自己破産に関する手続きが終了します。
ただし、裁判所に申し立てする際の書類作成におよそ3ヶ月ほどかかるため、書類作成から自己破産成立まで、最低6ヶ月はかかると考えておきましょう。
同時廃止が適用された場合の費用
同時廃止が適用された場合、予納金や官報公告費を含めた裁判所への費用が1〜5万円ほどかかります。(※各裁判所によって費用は異なります)
また、加えて弁護士もしくは司法書士費用が20〜30万円ほどかかるので、同時廃止の場合自己破産認定までに最低で25万円程度かかります。
破産手続きの種類②「管財事件」
「管財事件」とは、裁判所から選ばれた「破産管財人」の監督の元、債権者に債務者の持つ財産を分配する手続きを行う破産事件のことです。
管財事件の場合、同時廃止のように破産手続きが免除にならないので、自己破産の申し立て人にも一定額の金銭的負担が発生します。
管財事件が適用されるのは、原則として債務者当人に20万円以上の資産がある場合です。
管財事件の場合、同時廃止の手続きに破産手続きが加わるので、以下のような手順となります。
- 破産手続き開始・免責許可の申し立て
- 破産の審尋
- 破産手続き開始
- 破産管財人の決定
- 予納金の納付
- 管財事務の遂行
- 債権者集会・免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可の法的確定
管財事件が適用された場合のかかる期間
管財事件が適用された場合、申し立てから自己破産手続きが終了するまで6〜9ヶ月の期間を必要とします。
さらに、同時廃止と同じく、裁判所に提出する書類の作成に約3ヶ月かかるので、書類作成から自己破産成立まで、最低9ヶ月はかかるものと考えておきましょう。
管財事件が適用された場合に必要な費用
管財事件の場合、裁判所から債務者の持つ財産の分配手続きを行う「破産管財人」が派遣されるため、納付すべき予納金が最低で50万円程かかります。
それに加え、弁護士もしくは司法書士の雇い料が20〜30万円ほどかかるので、管財事件の場合、総額で70〜80万円を個人で負担することになります。
破産手続きの種類③「少額管財事件」
少額管財とは、管財事件で行われる裁判所の手続を、破産管財人ではなく申立人の弁護士が行うことで、裁判所に納める予納金を低く抑える破産手続きのことを指します。
少額管財とは、予納金が高いことが原因となって破産手続きが使えない債務者を救済するために制定されたものです。
少額管財事件が適用された場合のかかる期間
少額管財では基本的に管財事件と同じ手順ですが、破産手続きが簡略化されるため、破産申し立てから約3〜4ヶ月程度で自己破産申請が終了します。
書類作成の部分は基本的に同時廃止・管財事件・少額管財どれも1〜2ヶ月を要すので、少額管財の場合、書類作成から自己破産成立まで約4ヶ月はかかると考えておきましょう。
少額管財事件が適用された場合に必要な費用
少額管財事件では、裁判所に納入する予納金が20万円程度にまで減額されるため、官報公告費などを含めた裁判所に払うべき費用が、22〜23万円程になります。
加えて、弁護士費用が20〜30万円ほど加算されるので、最低で40万円程度を個人で負担することになります。
自己破産手続きの費用を払えない場合は?
前章でも述べた通り、自己破産をするためには、手続き費用が最も抑えられる同時廃止事件でも25万円ほどかかることを理解して頂けたかと思います。
自己破産を考えている人は、日常生活を送るのも経済的に苦労している方が多く、25万円という費用を用意するのが経済的に不可能な場合が多いです。
では、自己破産手続きの費用を払えない場合はどうしたら良いのでしょうか。具体的には以下の4つの方法があります。
- 「法テラス」を利用する
- 弁護士費用を分割で支払う
- 司法書士に依頼する
- 自分で手続きを行う
法テラスを利用する
「法テラス」(日本司法支援センター)とは、日本各地に事務所を持つ法務省管轄の司法支援法人です。
法テラス利用の最大のメリットは、弁護士費用を一時的に立て替えてもらえることです。
もちろん、一時的な立て替えなので、支払いの義務は生じます。ですが、その他にも3回まで無料で弁護士と法律相談や、弁護士の紹介なども行ってもらえます。
自己破産手続きにかかる期間は少し伸びてしまいますが、普段弁護士と関わりが無い人でも安心して手続きを進めることができます。
弁護士費用を分割で支払う
裁判所に支払う予納金や官報公告費は分割支払いができませんが、弁護士費用は、事務所によっては分割で支払いできる場合があります。
弁護士費用の相場はおよそ20〜30万円なので、分割で支払いができれば、生活にかなり余裕が出るはずです。
無料相談を行なっている事務所も多くあるので、いくつかの事務所に問い合わせを行なって、費用見積もりの検討をしましょう。
司法書士に依頼する
司法書士は、自己破産手続きの際の文書作成業務のみ代行依頼ができると法律で定められています。
司法書士に依頼するメリットは、弁護士を雇うよりも費用が安くなる可能性があることです。ただし、文書作成業務のみの代行なので、裁判所での面接や債権者とのやりとりは全てて一人で行わなければなりません。
また管財事件の場合、弁護士しか破産管財人の代理ができないため、少額管財に持ち込むことができません。
自分で手続きを行う
自分で自己破産手続きを行う場合、弁護士費用が一切かからないため、大幅に費用を抑えられることが魅力的です。
ですが、本来は弁護士や司法書士に依頼する膨大な資料を自身で作成しないといけなかったり、法律の知識や経験が求められたりなど、個人の負担がかなり大きくなります。
自己破産後、信用情報はどの程度で回復する?
自己破産をすると「信用情報機関」に破産したという事実が「事故情報」として登録されます。俗にいう「ブラックリスト登録」のことです。
信用情報機関とは・・・消費者金融、クレジットカード会社、銀行などが業界ごとに作っているデータベースのこと。
各信用情報機関によって、信用情報の回復に必要な期間が変わってきます。
信用情報機関には全部で3種類あり、以下のように分類されます。
- 割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関(CIC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行協会
CICとJICCは免責許可確定から5年、全国銀行協会は免責許可確定から10年経つと、信用情報が回復するとされています。
ただし、これはあくまで目安の数値です。多少の前後があるため、信用情報は「自己破産成立後から7〜10年後」に回復すると考えてください。
自己破産手続きを早く終結させるには?
自己破産手続きを早く済ませるためには、申し立てに必要な書類を正確に早く集めることが最も重要になります。
必要な書類が揃わない限り、自己破産申し立てができないため自己破産手続きは進みません。
その上に、申し立て後も追加で書類の提出を求められる場合や、書類を揃えても必要な内容が未記載である為に、新しく書類を取り直しになるケースもあります。
つまり、自己破産申し立てに必要な書類を「早く・正確に」集めることが、自己破産手続きを早く終結させることにつながるわけです。
自己破産をしないほうがいいケースとは?
債務処理の中で最も強い債務免責効果を持つ「自己破産」が認められると、借金は全て帳消しになります。
多額の借金で苦しんでいる方にとって自己破産はとても有効的な手段ではありますが、債務状況によっては、自己破産をしないほうがいいケースもあります。
自己破産をしないほうがいいケースとして、以下の3つの例が挙げられます。
- 未請求の過払金がある場合
- 収入を増やす余裕がある場合
- 闇金業者から借金をしている場合
未請求の過払金がある場合
自己破産のメリットは、成立時に全ての債務が免責になることです。ただし気をつけなければならないのが、同時に未請求の過払金の請求権も失うということです。
仮に未請求の過払金があったとして、そのお金で借金完済の目処が立つ場合、自己破産をしないほうがその後の生活への影響が少なく済みます。
弁護士に債務整理手続きを依頼した場合、最初に過払金の有無についての話があるので基本的には安心して大丈夫ですが、念のため自身でも覚えておきましょう。
収入を増やす余裕がある場合
副業の開始や、アルバイトを増やすなどによって収入を得る見込みがついている場合、自己破産をせずにその収入で借金を返済したほうが良いです。
自己破産をすると、資産価値20万円以上のものや、住居などが処分対象になってしまいます。
自己破産がその後の生活に与える影響を考えると、収入増のツテがあるのであれば、働きながら借金を返済するという選択が最も合理的な選択と言えます。
闇金業者から借金をしている場合
通常のクレジット会社や消費者金融などから借金している場合、法的に自己破産が認められれば、その決定に基づいて借金が免責されます。
ですが、無許可で金銭貸付を行い高額の利息取り立てを行う闇金業者から借金をしている場合、悪質な取り立てや嫌がらせが起こる場合があります。
ですので、闇金業者から借金している場合は先に弁護士か警察に相談しましょう。うまくいけば違法な金利によって取り立てられた返済金を過払金として取り返すこともできます。
弁護士と司法書士どちらに依頼するべき?
自己破産申し立てを行う時は、弁護士と司法書士どちらに依頼するべきでしょうか。結論から言ってしまえば弁護士を利用した方が圧倒的に有利です。
弁護士は自己破産手続き関係の諸問題(過払金や債権回収など)全てに対処できる権限を持つのに対し、司法書士の場合は文書作成業務の代行しかできません。
また、弁護士のみ破産管財人の代理が認められ、少額管財事件に移行できることや、東京地方裁判所の「即日面接制度」が認められていることなどから、弁護士を利用した方が手続きがよりスムーズに進むと言えます。
即日面接制度とは・・・申立てから3日以内に、弁護士と裁判官が短時間の打ち合わせをし、管財人による調査事項を絞ることで、短期間で自己破産手続きを終結させる制度のこと。
自己破産手続きの仕方【まとめ】
この記事では自己破産手続きと、手続きの際に発生する疑問について詳しく解説しました。もしこの記事を読まれているあなたが借金で苦しまれている場合は、いますぐ弁護士事務所に相談しましょう。
「弁護士法人アディーレ法律事務所」では無料で借金返済の相談を行なっています。
自己破産手続きに関しては基本的に弁護士、もしくは破産管財人の協力のもと書類作成などを進めていけば大きな問題はありません。
ただし、自己破産は債務者自身の問題であることを忘れてはいけません。また自己破産後の生活をどう立て直していくかもしっかり考えることが大切です。