「銀行融資の返済って、一体どういうものになるんだろうか。初めてだと何も分からないから不安だ・・・。」
起業したり、法人で事業を始めたばかりだと銀行融資の返済についてはよく分からないことが多いですよね。
この記事では、銀行融資の返済について解説していきます。銀行融資の返済に不安にならずに、落ち着いて対応できるようにしていきましょう。
銀行融資の返済方法①「期限一括返済」
銀行融資の返済方法は主に、「期限一括返済」と「分割返済」という2種類の方法があります。
「期限一括返済」は、決められた返済日に元金を一括して返済する方法です。毎月の支払いが利息部分の支払いになるというメリットがあり、借りた元金部分を返済日までに利用できます。
具体例を挙げて説明すると、以下のような計算過程になりますよ。
100万円を借り入れして、返済期間が12ヶ月、年利10%とします。1ヶ月目は利息の約8300円だけを支払い、元金は100万円のままとなります。
2ヶ月目から11ヶ月目まで毎月約8300円の利息を支払うだけになるので、元金は減らずに100万円のままとなるのです。
そうして、最後の月の12ヶ月目に100万円の元金と約8300円の利息を支払い、返済が終了します。
デメリットとしては、借りた元金部分を最後の月に一括で返済しなければならないため、元金に相当する金額を用意しなければならないという点です。
主に、事業の運転資金が必要になり借入れをする時に選ぶ場合が多い返済方法です。
期限一括返済は、借入期間が1年以上の場合は選択できず、借入期間が1年未満の場合のみの選択になります。
銀行融資の返済方法②「分割返済」
次に紹介する銀行融資の返済方法は、「分割返済」と呼ばれる返済方法です。
「分割返済」とは、銀行融資の契約の時に借入金の元金と利息の返済方法、返済期間、毎月の返済日(※約定日とも言う)を決めて、毎月返済していく方法のことです。
個人の場合でも、自動車ローンや住宅ローンといった分野でよく知られている返済方法と同じなので、一番イメージが湧きやすいかと思います。
法人の場合、借入期間が1年以上のものに対して「分割返済」がよく利用されています。
銀行融資は「折り返し融資」がメインになる
銀行融資の借入れ方法は、「折り返し融資」という方法で融資を受けるのが前提となっています。「折り返し融資」とは、返済した借金の同じ金額だけまた新たに借金をするという方法です。
具体例を挙げて説明すると、以下のような計算過程になりますよ。
例えば、運転資金1000万円を、2019年9月1日に銀行Aから融資を受けたとします。その後、返済を続けていき、当初銀行Aに融資してもらった際の元金残高が、2020年1月1日には500万円になりました。
2020年1月1日のタイミングで、銀行Aからさらに1000万円の融資を受け、2019年9月1日に銀行Aから受けた融資の元金残高である500万円の返済を行う方法が、「折り返し融資」です。
結果的に、500万円の資金がプラスになっているという計算になりますね。
せっかく返した借金をまた借りるなんて、個人の視点から見るととても考えられないですよね。しかし、法人においては、銀行は法人の業績が落ちたり景気が悪くなると、途端に法人に融資をしてくれなくなります。
融資をしてくれなくなるリスクを避けるため、「折り返し融資」を受けて法人の手元資金を残すためによく活用されています。
「折り返し融資」を受けるにあたって、決算書を出したタイミングで検討することをおすすめします。
1年間を通した融資の返済状況が把握しやすいので、返済が進んだ分だけ「折り返し融資」をいくらにするかを決めやすくなります。
銀行融資の金利ってどのくらいなの?
銀行融資の金利は、だいたいどのぐらいで設定されているのか気になるところですよね。
金利は金融機関や法人の事業規模、借入れ期間、固定金利か変動金利かなどで異なりますが、おおよそ2%~3%です。なお、優良中小企業に該当すると、1.8%~2%の金利になるとされています。
また、政府機関が運営している「日本政策金融公庫」は、中小企業向け融資の基準金利を1.21%~1.51%としています。
「日本政策金融公庫」の金利は、期間・担保が必要か不要か、事業の種類などによって異なります。「日本政策金融公庫」は、低金利で無担保でも利用できるのが特徴です。
銀行融資を受けられるかは「信用格付け」によって決められる
銀行融資には「信用格付け」というものがあり、融資を受けた法人によってそれぞれ設定されていて、銀行により設定された格付けによって融資が受けられるかどうかが決まります。
「信用格付け」は、以下のような区分に設定されていることがほとんどです。
債務者区分 | 銀行格付け |
正常先 | リスクなし(上場会社のみ) |
ほとんどリスクなし(上場会社のみ) | |
リスク些少 | |
要注意先 | リスクがあるが良好的水準 |
リスクがあるが平均水準 | |
リスクやや高いが許容範囲 | |
要管理先 | リスク高く管理徹底 |
上記の区分から、融資を受けた法人が1~10までスコアリングされていて、銀行融資を受けられるかが判定されます(資金調達ノート-銀行からの融資!信用格付けって何?より)。
なお、「信用格付け」が以下のようなものに当てはまると要注意先や要管理先に該当してしまうので注意です。
- 当期利益が赤字
- 融資の返済が1ヶ月~2ヶ月遅れている
- 純資本がマイナス
- 債務超過がある
銀行融資の返済がツライ場合はすぐに相談する
銀行融資の返済が厳しい時、なかなか銀行に返済しにくいことを伝えるのは自分の事業に悪影響が出るか心配になってしまいますよね。
銀行に返済が厳しいことを相談しても、悪影響がでる心配はありません。銀行は取引先にお金を貸すことで利益を得ています。取引先が倒産してしまうと、銀行の取り分がなくなってしまいます。
銀行も、融資をした法人から確実に返済をしてもらうために、法人を応援するための知恵を出してくれるでしょう。あなたが思っているよりも、銀行は柔軟に対応してくれます。
銀行融資の返済を延滞したタイミングの相談はマズイかも
銀行融資の返済がどうしてもできず延滞をしてしまったか、銀行からの督促が来たタイミングで銀行に相談するのはマズイでしょう。
法人が銀行融資の返済を延滞してしまった場合、銀行はあなたの信用を疑うことになってしまいます。
そうなってしまうと、銀行融資の返済の交渉が厳しいものになってしまったり、法人の「信用格付け」が下がってしまうなどのデメリットが発生してしまう可能性が高いです。
銀行融資の返済がどうしても難しい場合早めに銀行に相談し、現状を伝えて一緒に今後の返済についての計画を考えていった方が良いでしょう。
銀行融資の返済がキツイ時には金利交渉をしてみる
銀行融資の返済が厳しい時、銀行と金利交渉をして金利を下げてもらうのも手段です。この項目では2種類の方法を教えますね。
借入れ金額を上げて、金利を下げる
銀行の融資金額は銀行側から見ると、100万円や1000万円、1億円の金額だろうと銀行側の事務コストはたいして差がありません。銀行側は1社あたりの融資額が大きいほど利益を得られ、得をします。
お得意先の銀行と、それ以外の他銀行も合せて融資を受けている場合、お得意様の銀行に対して、「他銀行との取引は辞めて借入れ金額を増やしたいから、金利を引き下げて。」とお願いするのです。
分かりやすくするため、具体例を踏まえて説明すると以下の様な状況になります。
- A銀行(お得意様):1000万円
- B銀行:2000万円
- C銀行:1000万円
- D銀行:1000万円
- 合計:5000万円
この場合、総額5000万円の借り入れがあり、お得意様であるA銀行からは1000万円を3%で借入れているとします。
そして、C銀行とD銀行との取引をやめて、お得意様であるA銀行からの借入金額を3000万円に増やし、金利を2.0%に引き下げてもらうことができた場合、以下の計算結果となります。
- 1000万円の金利3%の場合 ― 利息:30万円
- 3000万円の金利2%の場合 ― 利息:60万円
金利を引き下げられて、なおかつお得意様の銀行は利益も得られるという、お互いにとって得をする状況になるのです。
お得意様の銀行の融資金額が増えるので銀行は得をします。法人は、借入総額が変らないまま引き下げられた金利で安全に融資を受けられるので、お互いが得をする結果となるのです。
金利を下げられないなら、他の銀行から借りる
銀行は、取引先の法人が他銀行に行ってしまうのを恐れています。もし、法人がお得意様の銀行よりも他銀行で低金利の銀行融資を提案され借り換えてしまったら、お得意先の銀行の利益が0になるのです。
この場合、「他銀行でお得意様の銀行よりも低金利の融資が提案されました。お得意様の銀行は昔からの長い付き合いなので取引を終わらせたくありません。できれば、他銀行と同じ金利に下げられませんか。」
このようにお願いすれば、金利を引き下げてくれる可能性がありますが、お得意様の銀行の心証を悪くし、今後の融資に悪影響が出てしまう危険性があります。
法人の業績が良い場合は金利を下げてくれる場合は高いですが、業績が悪い場合は取引終了を提案されてしまう可能性もある最終手段といってもいい方法です。
銀行融資の繰り上げ返済に注意
繰り上げ返済は個人では住宅ローンなどでよく使われている方法ですが、法人の場合の繰り上げ返済は話が違ってきます。
銀行融資の繰り上げ返済をしてしまうと、銀行側が予定していた融資金額が減ってしまい、利益も減ってしまうことになってしまうため、本来得られた収益が得られなくなってしまいます。
そうなってしまうと、銀行側の心証も決していいものとは言えないでしょう。今後も、銀行と長く良い関係でお付き合いをしていきたいなら、繰り上げ返済ではなく、金利交渉を相談してみた方がいいでしょう。
まとめ
ここまで、銀行融資の返済について解説していきました。もう一度内容を振り返ってみましょう。
- 「期限一括返済」という決められた返済日に元金を一括して返済する方法がある
- 「分割返済」という借入金の元金と利息の返済方法、返済期間、毎月の返済方法を決めて返済する方法がある
- 「折り返し融資」という返済した借金と同じ金額だけ借金をする方法がある
- 銀行融資の金利は状況によって異なるが、おおよそ2%~3%
- 銀行融資は「信用格付け」を元に、銀行融資が受けられるかどうかが決められる
- 銀行融資の返済がつらい場合、すぐにでも銀行に相談した方がいい
- 銀行融資が延滞してしまったり、督促が来たタイミングで相談すると交渉が厳しくなる
- 銀行融資の返済がつらいなら、金利交渉をしてみる
- 銀行融資の繰り上げ返済は、銀行の儲けが減り、銀行との関係が悪化する可能性がある
銀行融資の返済は、返済に困ってしまうとつい焦りがちになり何をしていいのか分からなくなります。もし、銀行融資の返済がきつくなってしまったら、早めに銀行に相談することだけは覚えておきましょう。
銀行融資の返済に不安にならずに、落ち着いて返済していきましょう。