年金はいつまで払う必要があるのでしょうか?老後の資金が2,000万円必要であるというショッキングなニュースが飛び込んできて、老後の資金が足りないと不安になっている人も多いと思います。
年金をいつまで払うのか、老後はいったいいくら年金がもらえるのか年金制度を理解した上で、自身でできる対策を早めにしたほうが良いでしょう。
本記事では、年金の納付期間がいつまでなのか、また受取額がどのくらいなのか、年金の仕組みを紹介しながら年金受取額を増やす方法を解説してきます。
ぜひ、最後まで読み進めて自身の老後の資金対策の参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/22711132)
年金はいつまで払う必要がある?
年金を受け取るために、いつまで払う必要があるのか気になりますよね。支払い期間は自分の加入している年金によって異なります。
まずは、公的年金(国民年金と厚生年金)の仕組みを下の図を見て理解してみましょう。
公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類あります。国民年金は老齢基礎年金と言われ、誰でも支払い義務のある年金です。
国民年金は、この老齢基礎年金の部分だけをいいます。厚生年金は、国民年金(老齢基礎年金)の上に厚生年金(老齢厚生年金)が上乗せされる仕組みです。
年金の支払い期間は、国民年金と厚生年金とでは違ってきます。では、それぞれの支払い期間について見ていきましょう。
国民年金の場合
国民年金は、会社に勤務していない自営業者やフリーランス、学生や無職の人が加入する年金です。
現在の保険料は16,610円(令和3年度現在)で、この金額は一定の計算式に基づいて設定されるため毎年異なります。
国民年金は、満20歳から60歳までの40年間支払います。支払い期間が40年を下回ってしまったら年金は満額受け取ることができません。
国民年金の場合40年間未納時期が無い場合、月額65,141円受け取ることができます。(2020年4月時点)
厚生年金の場合
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金のことです。厚生年金の場合、就職して退職するまでは支払うことになります。
20歳前から働いている場合、厚生年金に加入することになります。最長は70歳までです。
公的年金の土台になっている国民年金(基礎年金)の支払い義務は60歳までとなっていますが、最近では定年が65歳までの企業も増えてきています。
この場合、60歳以降は厚生年金のみ支払います。60歳以降に支払った厚生年金保険料は、再計算され65歳からの受取額に上乗せされてもらえるのです。
国民年金の保険料納付期間と年金額の関係
国民年金の加入者は、保険料の未納期間がなければ保険料納付期間は、40年になります。40年の保険料納付期間の老齢基礎年金の額を「満額」といいます。
老齢年金が満額の場合、年額780,900円、月額65,075円(2021年度)を受け取ることが可能です。この金額は、あくまで40年間国民年金を支払って満額受給した場合です。
国民年金の支払い義務は40年とされていますが、受給資格期間は原則25年とされていました。しかし、2017年の8月1日以降制度の改正によって10年に短縮されました。
そのため、老齢基礎年金は保険料納付期間が10年以上あれば受け取ることができます。しかし、保険料納付期間が短くなれば比例して、受け取れる老齢年金も少なくなってしまいます。
例えば、自営業の人が10年間、国民年金を支払い後の30年間は未納だったとします。
この場合、保険料納付期間が10年ですので老齢基礎年金を受け取ることはできますが、満額の780,900円年額の4分の1に当たる年額195,225円しか受け取ることができません。
保険料納付期間が短縮されて、受け取ることができるようになりましたが、収めた金額が満額よりも少なければ受け取れる額も減ってしまうということです。
60歳以上65歳未満は、国民年金に任意加入ができる
国民年金は60歳以上は強制加入ではありません。しかし、保険料納付期間が満額の40年に満たない人は、加入手続きをすれば60歳以上でも国民年金に加入することができます。
これを、「任意加入制度」と言います。任意加入制度は、60歳以上も国民年金を支払うことで国民年金の加入期間を40年に近づけて将来受け取れる年金受給額を増やすことができる制度です。
2000年4月に保険料の納付を免除する学生納付特例制度が導入されました。年金の保険料は何十年も前の未納や猶予についてさかのぼって支払うことはできません。
学生納付付特例制度を利用した人が未納だった期間を追加で収めるのは10年以内です。納付期間が60歳までだと40年未満になってしまいます。この場合も任意加入が可能です。詳しくは以下を確認してください。
厚生年金は、原則として退職するときまでor70歳まで支払う
厚生年金に加入している会社員、公務員の人は定年退職まで保険料を支払う必要があります。
現在では、60歳や65歳の定年を迎えた後も継続雇用で働き続ける人も増えてきています。しかし、厚生年金の支払いは、最長でも70歳までです。
老齢年金を受けられる加入期間が足りず、70歳以降も会社に勤めるなら加入期間を満たすまで任意で厚生年金に加入することが可能です。
これを高齢任意加入といい、手続きを行うことで老齢年金の加入期間を満たすことができるのです。詳しくは下記から確認してみてください。
年金受給額を増やすための4つの方法
もしも、年金受給額を今よりも増やす方法があるとしたら実践してみたいですよね。
そこでこの章では、今よりも年金受給額を増やす方法と、老後の資金を確保するための私的年金ついて解説していきます。年金受給額を増やす方法は以下の4つがあげられます
- 「繰下げ受給」をして受給額を増やす
- 「標準報酬額」を高くする
- 「加入月数」を上限加入期間に近づける
- 「iDeCo」などの私的年金を活用して受給額を増やす
それぞれの方法について、詳しく解説していくのでぜひ参考にしてみてください。
「繰下げ受給」をして受給額を増やす
年金の「繰下げ受給」とは、65歳から受け取ることができる年金を受け取らず66歳以降に受取を開始することをいいます。
「繰下げ受給」のメリットは、受取を遅らせることによってもらえる年金が増えるということです。
増額の計算式は1ヶ月ごとに0.7%で、2020年度の年金制度では、5年遅らせた場合は42%の増額となります。その他、1年ごとに繰下げ受給した場合の増額率は以下の通りです。
繰下げ受給と増額率 | |
請求時の年齢 | 増額率 |
66歳0か月~66歳11か月 | 8.4%~16.1% |
67歳0か月~67歳11か月 | 16.1%~24.5% |
68歳0か月~68歳11か月 | 25.2%~32.9% |
69歳0か月~69歳11か月 | 33,6%~41.3% |
70歳0か月~ | 42.00% |
また、2020年の年金改正法が成立し、2022年4月からは75歳まで繰下げすることがが可能になりました。増額率は最大で84%の増額になります。
「標準報酬額」を高くする
標準報酬額とは、等級に分けて(厚生年金は1〜32等級)表すもので、厚生年金保険料や健康保険料の金額を算出する際に使います。
標準報酬額は、毎年見直しがされ4月5月6月の給与を合算した平均金額で決定されます。その後、あらたな標準報酬額で9月から翌年8月までの厚生年金の金額が決まるのです。
4月、5月、6月の給与が上がると9月からの厚生年金や健康保険が上がってしまう可能性があります。給与が上がっても税金などが上がって結局は手取りはあまり変わらないと思うかもしれません。
しかし、徴収される額が多くなるということは、厚生老齢年金額が上がり受取が多くなるということです。標準報酬額が高くなれば、老後の年金受取額が増えるということです。
「加入月数」を上限加入期間に近づける
年金受給額は、国民年金の支払いが40年で満額となります。そのため満額にすることが一番年金受給額を増やす方法と言えます。
60歳までに保険料納付期間が満額40年に満たない場合は、まずは満額に近づけるようにしましょう。その方法としては、先に説明した任意加入と高齢任意加入がおすすめです。
また、保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認を受けた期間がある人は、保険料の後払い(追納)を考えてみてください。
ただし、追納は保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認をされた期間から10年以内と決まっています。まだ、間に合う人は検討してみてください。
「iDeCo」などの私的年金を活用して受給額を増やす
iDeCoとは、公的年金にプラスして受け取ることができる私的年金制度の1つです。満20歳以上から65歳までの人が加入できる制度です。
掛金を自身で運用しながら積み立て60歳以降に年金、または一時金として受け取ることができます。
また、iDeCoでは、掛金の全額が控除対象となり、利息・配当・売却益などの運用益は全額非課税となります。
さらに受け取った年金は控除を設けることができるのです。節税もでき、公的年金の他に老後の準備ができる「iDeCo」は公的年金にプラスした老後の資金運用にはおすすめな制度です。
【まとめ】公的年金のしくみを理解して老後の資金準備を始めよう
公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金の支払い義務は60歳までで、厚生年金では就職してから退職するまで払い続けることになります。
公的年金の土台となる、老齢年金は40年間支払うことで満額となり年額780,900円、月額65,075円(2021年度)を受け取ることができます。
しかし、満額にならないと支払い金額に比例して、受け取れる金額も下がってしまうのです。そのため、満額にするための方法として任意加入制度を利用すれば満額に近づけることができます。
公的年金の受給額だけでは老後の資金に不安がある場合には、以下の4つの方法で老後の資金を増やしてみましょう。
- 「繰下げ受給」をして受給額を増やす
- 「標準報酬額」を高くする
- 「加入月数」を上限加入期間に近づける
- 「iDeCo」などの私的年金を活用して受給額を増やす
老後の資金作りは、遠い未来のことと楽観視せず今のままの年金保険料を払いを続けたらどのくらい受給できるのかをしっかり理解して、今からできる老後の資金作りを考えてみましょう。